第1章
第1章
彼は覚えているだろうか
私と語ったあの時を
彼は今も考えているだろうか
私が尋ねた質問を
そして・・・彼は・・・
守ってくれるのだろうか
私と交わした約束を・・・・。
少年は走っていた。
静かな森の中を、光のささないくらい闇の中を走っていた。
息をきらしながらも、とまることなく、体に負う重荷にもかまわずに。
急な坂も、細く険しい細道までもとまらずに。
徐々に体を、体力を蝕む怪我という重荷を背負いながらずっと走っている。
少しでも離れるために、少しでも生きているという実感を得るために・・・・。
だから彼は止まろうとしない。止まれないのだ。
少年に迫り来るものがある限り、少年は止まらず走り続けるだろ。
自分のために、彼は走った、走りに走った。
しかし気づいてみれば、彼の右腕は肩から赤い血を流しながら、無くなっていた。
彼の息はさらに荒くなる。
それでも走った。
徐々に失う”体”を守るために・・・。
次第に彼の腕は左手までも同じようになくなっているのだった。
腕だけではない・・・。
耳も足もなくなっている。
彼の意識だけが、体を置いて走っていく。
森の向こうへ、この場所から、早々と・・・。
そして・・・、彼の意識はなくなっているのだった・・・・。
その、彼がいた場所のそばには、赤い”丸い点”のついた大木が横たわっている。
その横に、少年のものと思われる、血のついた衣類があるだけだった・・・・。