第7話 転送先で
すみません。
なんと1ヶ月開きました。
本当に申し訳ございません。
うちの部長が働かn……いえ何でもありません。
燐音のせいですだから殴らないでやめてぇぇぇぇ(ry
「……ぅう……」
あたしが目を開けると、そこは、
「ここは……あ。まさか……」
小さな空き家だった。そして、そこには色々な物が転がっている。古びた鍵やら、磁石、青いガラスの瓶など。
そう、ここはあたしが小さい頃、魔法学校の友達と一緒に作った秘密基地だった。作ったと言っても、埃やら蜘蛛の巣やらを取ってから色んな物を運び込んだだけだけど。先生、ここの存在まで知ってたのね。
「……ぅうん…リースさん……?」
ジルも目を覚ましたらしい。ゆっくり起き上がってきょろきょろすると、
「うわあぁあぁぁぁああぁぁあああぁああ!! リースさん、僕らまさかまた捕まっちゃったの? こんなぼろくて狭いと」
「あのね、認めたくないけど先生はあたしなんかより目茶苦茶魔術上手いのよ? あたしならともかく、先生が間違えるはずなんて無いの」
「じゃあここはどこ?」
「あたしが昔友達と一緒に作った秘密基地。空き家を改造しただけだから、ぶっちゃけかなりぼろかったり」
「……まあいいや、で、アイリスさんは? っていうか、こんな所に何しに来たの?」
「…………」
そうよ、先生は? ジルは知らないはずだけど、あそこは囲まれてるとか何とかって先生は言ってたのに……。
……あ。そういえば、先生が何かくれた。あたしはポケットの中身――――茶色い包を取り出し、急いで開けてみた。がさがさする紙がもどかしい。
すると、ころん、と透明な塊があたしの手のひらに転がり落ちた。
「何これ……水晶みたいで、綺麗だけど……ジル、なんか分かる?」
「ん?」
ずいっと身を乗り出してくるジル。だが、その表情がみるみる青ざめていった。果てはがたがたと震え出し、「……まさか…いや…嘘だよ……」とか呟いている。
「ちょ……何よ、ジル。どうかしたの?」
「…リースさん。これ…妖精族の…命の欠片…ってやつだよ……」
「……命の欠片? 何よそれ」
「…命の欠片って、妖精族が命を失うときに身体から零れ落ちるって言われてる…」
「……え? ジル、今……」
「僕も実際に見たことはないし、お父さんから聞いただけだからよく分かんないけど……これは間違いないと思う。特徴も合ってるし、だから……、でも、なんでアイリスさんが……? ってちょっと…リースさんっ!?」
「……何? なんかあたし……どうかしたの?」
「リースさん…っ……」
ジルはなぜか、あたしの顔に手を伸ばしてくる。その手があたしの頬を優しく拭ったとき、あたしは初めて自分が涙を流していることに気付いた。
「……ジル。先生は、あたしたちを逃がしてくれたの。何が起こってたのかはよく分からないけど、“包囲されてるから、逃げて”って言われたのよ。これを渡されたとき、敵みたいな人はまだいなかったから、おそらく自分でこれを取り出したんじゃないかしら。でもね、早い話が先生は殺されたってことだと思う。―――ここまで言えば、分かるわよね?」
「……うん。だいたいね」
「―――許さない。絶対許してやんない。ジル、早速作戦会議……ふあぁぁ」
「……でもねリースさん。休息は大切なんだよ?」
「ふああぁ…別に眠くなんか……ふあぁぁぁ」
「……寝よっか」
「(すぴー)」
「寝るの早っ……」
「すぴー、ぐぴー、ぐごっ」
「色気の無いいびき……」
どかすかばきぃ
……あれ? この音は何なのかしら?
「…にぃ」
「なんか言った?」
「…にぃ」
「その前」
「色気の無いい」
ぽかすかぼかすかばきっ
……さっきから変な音がするわね。
「ふぇぇぇぇ……」
無言でリュートを持つ。するとジルは、猛ダッシュで小屋の隅に逃げた。逃げ足だけは早いやつ…。
「気を取り直して作戦会議するわよ」
そう言ってジルを呼ぶ。本当は先生が死んだ…。なんて、認めたくない。
でも、認めて今すべきことを考えるのが一番大切な気がする。
「アイリスさん、僕たちを守ってくれたんだよね?」
「この欠片が、本当に命の欠片なら……」
そういえば、先生これを渡すときに、何か……言ってた気がする。何だっけ?
えーと……
「アイリスさんさぁ、なんかの役に立つって言ってなかった?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
いきなりの大声に、体をびくっとさせるジル。
「吃驚させた? ごめん。」
頭の中で命の欠片の利用方法を検索する。
「ジルも、ぼーっとしてないで考えなさいよ! 命の欠片の利用方法」
「うーん……包みの中に他に何か入ってないの?」
じるる…ジルの言うとおりに包みをまた覗き込む。
「反論しないんだ。毒キノコ食べたぁ?」
またまた、リュートを手にする。
「やめて! 何でもするから殴らないでー!」
今回は、必死さに免じて許してやろう。
包みを漁ると、中からぺらっと一枚紙が出てきた。手紙かな……。
『リース君へ☆』
そんな一文から手紙は始まっていた。
『この手紙を読んでるってことは、私は死んじゃってて、命の欠片を手にしてるってことだよね☆
命の欠片は妖精族が死ぬときにできる欠片だぉ☆ 利用方法ははっきりしてないけど力は半端じゃないと思うよ☆
じるるんを庇って旅をするのは大変だろうけど……、頑張ってね☆』
って……、何の収穫も無しかよっ!
「役立つ情報は無さそうだねぇ」
「リースさん、泣かないで?」
またあたしは泣いているらしいわね。
そう言いながら、ジルもぽろぽろと涙を零した。
「先生が助けてくれた命大切にしなきゃ、ね?」
「うん……そうだね」