番外編 3
喫茶店は、いつも通り営業中
しかし客は入ってきていない
「…暇だな」
「ああ、暇だな」
「そんなに暇なら、駅前でティッシュでも貰ってきてくれ」
「嫌だ」
そんな訳の分からない会話を繰り返すこと、1時間
カラ-ン、カラ-ン
店の入り口のベルが鳴る
「いらっしゃ-…い」
入り口には、深緑のボサボサ髪、白衣の中年男
名前はイトウ
職業は、科学者と医者
「…コ-ヒ-、1杯」
「味はブラック」
「…はい」
黙々と作業をこなすメタル、金田、ガルス
しかし、3人は恐れていた
(また、妙な実験に付き合わされるかも知れない…)と
いつもなら、イトウの目に当たった奴が、問答無用で連れて行かれる
そして、ロクでもない目に遭うのだ
しかし、反抗は出来ない
それも、昔、3人がイトウに救われた事が有るからだ
「…コ-ヒ-、ブラック」
カウンタ-にコ-ヒ-を置く金田
「他には?」
「何でも良いから、食べ物」
「…はい」
3人は思った
(妙だ)と
いつものイトウなら、このタイミングで「さて、今回の実験なんだが…」と切り出すはずである
しかし、それがない
「…イトウさん、メイスとモッチ-は?」
ガルスが、特性のサンドウィッチを作りながら聞く
「…ん、ああ」
メイスとは、元イトウさんの患者であり、今は助手である
モッチ-はペットであって、イトウさんの実験から生まれた
「居ないよ」
「引きこもってる」
「!?」
衝撃の一言
実は、メイスはイトウに惚れており、毎日アタックしている
しかし、イトウは鈍感にも気付いてない
メイスは、毎日、イトウの実験の手伝いをしているはずで、引きこもるなどあり得ない
「…「引きこもってる」って?」
「先日、メイスとケンカしてな」
「俺が研究に専念しすぎたのが、原因だろう」
「?」
「ほら、メイスが来る前は俺が1人で全部していただろう?」
「「イトウさんが、1人で研究を続けて、私はすることがない」と怒り出してな…」
「やはり、実験を手伝えないからだろうか?」
「いや、イトウさんが構ってくれないから、だと思うけど…」
「む?何か言ったか?」
「いえ、別に…」
「それで、事は相談なんだが…」
「メイスの説得を手伝ってくれないか?」
「…実験じゃないなら、別に良いですけど」
「そうか、ありがたいな」
イトウ宅前
イトウの家は、イトウの無駄な改造で城のようになっている
「…いつ見ても、凄い家ですね」
「そうか?」
「行きましょう」
ブブ-
いきなり、玄関のブザ-が鳴る
「何だ!?」
ガァン!
ガァァァァァァン!!
次々に家のシャッタ-や壁が閉まっていく
「イトウさん!何ですか!?コレ!!」
「…防犯だな」
「メイスが、俺が帰って来れないように仕掛けたんだろう」
「どんだけ、手の込んだケンカですか!?」
「とにかく!早く5階のコントロ-ルル-ムまで急ぐぞ!!」
「有毒ガスが放たれる前に!!」
「「有毒ガス」って!!」
「人体に影響はない!」
「睡眠ガスに近い物だ!!」
「たぶん!!」
「また、ロクでもない物作ったんですか!?」
「しかも、「たぶん」って!!」
全力で走り出すメタル、金田、ガルス、イトウの4人
イトウ宅2階
ガガガガガ…
銃器を備え付けたメカが4人の前に立ちはだかる
「行け!俺が抑える!!」
「ガルス!」
「任せろ!!」
ガルスにメカを任せて、上へ進むメタル達
「来い!メカ野郎!!」
「侵入者、排除」
イトウ宅3階
「侵入者、排除します」
「また、ロボか!!」
「先刻のより、なんか凄いぞ!!」
「コントロ-ルル-ムに近づくに連れ、強力なメカにしてある」
「気をつけろ」
「よっしゃ!ここは俺が行こう!!」
金田が銃を構える
「所詮はメカ!俺の2丁銃には勝てない!!」
「任せた!金田!!」
「行くぞ!イトウさん!!」
「ああ!!」
「来い!メカ!!」
「スクラップにして、売りさばいてやる!!」
「侵入者、排除します」
「覚悟をお願いします」
「お前がな!!」
イトウ宅4階
「メカは?イトウさん」
4階に上がってから、メカに合ってないメタルとイトウ
「…この部屋のメカは」
カシャン、カシャン
まさに、ロボットというようなメカが出てくる
「何だ?先刻のより、貧弱そうだな」
「メタル!伏せろ!!」
「へ?」
ガァン!!
メタルの背後から、槍が飛んでくる
「この階のメカは、この部屋、全てだ!!」
「あのメカは、それをコントロ-ルするチップを備えてる!!」
「って、事は、あのメカを破壊すれば良いんだな?」
「そうだ!」
「だが、部屋全体が敵だから、気をつけろ!!」
「了解!!」
「イトウさんは先に行け!!」
「ああ!任せたぞ!!」
3階へ上がっていくイトウ
イトウ宅5階
ガァァァン!!
イトウが部屋に入った瞬間、部屋の入り口の扉がロックされる
「メイス!!」
「…」
部屋の隅にうずくまるメイス
モッチ-を抱きかかえたまま、動こうとしない
「メイス!こんな事は早くやめるんだ!!」
「…バカ」
「?」
「イトウさんは、1人で全部進めて…」
「私は放ったらかし」
「イトウさんに、私は必要ないんだ…」
「キュ-…」
モッチ-が寂しそうに鳴く
「…メイス」
「…」
「良いか?メカは、人を傷つけるためにあるんじゃない」
「助けるためにあるんだ」
「そして、そのメカを作るキッカケを与えてくれたのは、お前じゃないか」
「メイス」
「…うぅ」
「俺は、昔、お前に酷いことをした」
「あれは!私が間違えて薬を飲んだだけで…!!」
「いや、俺が薬をおいたのが悪かったんだ」
「すまなかったな」
メイスに向かい、頭を下げるイトウ
「…イトウさん!!」
イトウに抱きつくメイス
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「…俺も悪かった」
「もう、こんな事をするなよ」
「はい…!はい…!!」
ピピピピ
メカから、アナウンスが流れる
「有毒ガスを噴出します」
「!!」
コントロ-ル機械に走るイトウ
「有毒ガスを止めなければ!!」
カタカタカタ!!
「…」
最後のボタンを押さないイトウ
イトウ宅4階
「メタル!!」
「金田!ガルス!!」
「無事だったか!!」
「当たり前だ!」
「メタルは!?」
「余裕だ!!」
ピ-
「有毒ガスを噴出します」
危険なアナウンスガ流れる
「やばい!!」
「イトウさん!早く、ガスを止めてくれ!!」
カメラに向かって叫ぶメタル達
ザザ-
部屋のマイクから、イトウの声が流れる
「今回の実験、頑張ってくれ」
「健闘を祈る」
ザザ-
ガチャン
切れる音声
「…あのクソジジィ--!!」
プシュ-…
数日後
イトウ宅5階
「何?コレ」
メイスがイトウの机に置かれた本を手に取る
本には、「心理学!説得編」と書かれており、「研究中」としおりが挟んである
「…」
喫茶店
「ロクナ目に合わねぇ…」
「有毒じゃなくて良かったな」
「その後の、腹痛は死ぬかと思ったがな」
大きくため息をつく3人
カラ-ン、カラ-ン
ベルが鳴る
「いらっしゃ-い」
入り口に立っていたのはイトウ
(…実験か?)
(実験なのか!?)
3人の頬を、嫌な汗が流れる
「…メイスが、俺の机にあった本を読んで」
「「アレは嘘だったんですか!?」と、怒り出してな…」
「悪いが、説得を…」
「帰れ!!」
3人が一斉に叫んだ
読んでいただきありがとうございました