番外編 14
ガサガサ
「…」
森の中を進むガルス
(この森…、生物が居ないな…)
(何故だ…?)
「気付きましたか」
「!!」
構えるガルス
「…誰だ?」
「水族の者です」
「敵ではありません」
「…名は?」
「セルトでございます」
「長が待っていらっしゃいますよ」
「…解った」
「こちらです」
ダッダッダッ
木の上を飛んでいくセルト
「中々の移動力だな」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
「…1つ聞きたい」
「どうして南から移動した?」
「…その事は長が話します」
ダァン!!
「…ここです」
「…水族の村か」
目の前には大きな湖
その湖の中には大勢の水族が居る
水族の村
滝裏の水湖
「長、ガルス殿を連れて参りました」
「ご苦労様」
「…アナタが」
「ええ、そうです」
「水族の長を務めさせていただいております」
「…色々、聞きたい事が有ります」
「…はい」
「まず、どうして移動を?」
「妙な者達によって、私達の住み処は破壊されました」
「それで…、移動を余儀なくされたのです」
「…そうでしたか」
「もう1つ、カッパの事です」
「どうして保護を?」
「…実は、今回の一件で狙われているのはリ-ラのみなのです」
「「リ-ラ」?」
「ええ、アナタが「リ-ラ」と呼んでいる人物の本名です」
「…そのリ-ラのみが狙われている、と」
「そうです」
「恐らく、彼女の戦闘力を目的としているのでしょう」
「水族の戦闘手段の末裔…、ですからね」
ため息をつくセルト
「俺達なら彼女を守れると?」
「そうです」
「アナタ達の業績は我々の耳にも届いておりますから」
「「業績」と言うより…、「悪行」ですが」
苦笑するガルス
「何でも、あの戦闘部族の鬼面族にも勝利したそうで」
「俺達が勝利したワケじゃありません」
「オキナとアオシ、そしてアメ-ルが勝利したんです」
「俺達は手伝ったに過ぎませんよ」
「そうでしたか…」
「しかし安心していただきたい」
「リ-ラを守るぐらいの実力はありますから」
「それは安心しました」
「では、私からも1つ聞かせていただきたい」
「何です?」
「リ-ラとの結婚の件ですが…」
「式場と日程は?」
万弁の笑みで質問する長
「…残念ですが、結婚する気は有りません」
「…して貰わなくてはいけませんね」
「何故ですか?」
「彼女の血を…、戦闘に長けた血を絶やすわけにはいかない」
「絶やせば…、私達は存在できなくなります」
「水族は市場でも高値、狙う者は多い」
「…そう言う事ですか」
「リ-ラの男のような言葉遣いは敵に舐められないためですね?」
「つまり…、彼女は今までに多くの水族を狙う密輸人達を撃退してきたワケだ」
「…はい」
「俺達に彼女の保護を頼んだのは…、実力を計るため」
「そうですね?」
「…そうです」
「それ相応の実力があるのなら、リ-ラを任せても良い…、と」
「どうしてですか?」
「彼女は大切な番人でしょう?」
「…ある日、彼女は密輸人を殺して言いました」
「「もう、人殺しはしたくない」と」
悲しい目をする長
「私は…、気付きました」
「何と愚かな事をしたのか、と」
「私が説明します、長」
長の前に出るセルト
「我々も、勿論、私も戦えますが戦闘のセンスはリ-ラには劣ります」
「私達では仲間まで傷付けかねませんから」
「しかし、それに対してリ-ラの戦闘は素晴らしいかった」
「敵の急所を一発で突き、即死させる」
「被害も犠牲も出さない」
「彼女は人間の急所を見抜ける才能があった」
「それで…、私達は必然的にリ-ラに頼ってしまった」
「…リ-ラは戦闘の中心になった」
「その通りです」
「彼女を筆頭に密輸人を殺していきましたが…、その筆頭であるリ-ラの気持ちを考えてなかった」
「彼女の精神状態は限界だったのです」
「…考えてみれば簡単な事でした」
「幾ら言葉遣いを強くしようと、結局はか弱な女の子です」
「人を殺し続ける日々に耐えられるはずがない」
「…そこで私達は決断しました」
「ガルス殿と結婚させ、幸せな日々を送って欲しい、と」
「…リ-ラの子を次の番人にする気ですね?」
「…はい」
「お恥ずかしい話ですが、リ-ラは私達の番人であって、精神的な主柱でもあります」
「リ-ラが居なくなれば…、とても皆は一致団結できない」
「リ-ラの代わりが…、必要なのです」
「…無責任すぎませんか?」
「リ-ラを救いたいが自分達も助かりたい」
「二兎を追う者は一兎も獲ず、です」
「…確かにそうです」
「しかし、先刻も言ったように彼女は私達の精神的な主柱です」
「居なくなれば…、水族は…」
「…そうですか」
「彼女の子が居れば、私達の心を支える柱となります」
「しかし、俺は亜種ですよ?」
「アナタが亜種であろうと…、育つまでは私が守ります」
「…何とも、言えませんね」
「どうか!お願いします!!」
「…しかし、俺は戦闘をも請け負う何でも屋です」
「彼女を今よりも危険にさらすかも知れない」
「…それでも彼女が望むなら」
「長!大変です!!」
水族の村人が走り込んでくる
「どうしたのです?」
「妙な集団が…!!」
「何ですって!?」
「密輸人か!?」
「いえ!我々を狙うわけでもなく…、リ-ラを…」
「…来ましたか」
「俺が行きましょう」
立ち上がるガルス
「大丈夫ですか?」
「心配は要りません」
「行ってきます」
水族の村
「出てきたか」
「誰だ?」
「何、単なる通りすがりだ」
「で?聞いていた戦闘に長けた水族の生き残りは?」
「お前?」
「そう見えるか?」
「違うのか…」
「そういや、女だったけ?」
「俺は男だ」
「ふぅ-ん…」
「そうだったのか…」
「お前は誰だ?」
「リ-ラを狙う組織の者か?」
「いや、確かに狙ってんだけど…」
「雇われてるだけだ」
「今なら見逃してやる」
「帰れ」
「帰るワケにもいかないよなぁ…」
「だって俺、何でも屋だし」
「お前もか」
「あれ!?同業者!?」
「奇遇だねぇ-!!」
「もう一度、言う」
「引いてくれ」
「…お前も同業者なら解るだろ?」
「何でも屋は依頼を必ず達成する」
「それが信念であって信条だ」
「…残念だな」
「雇われている人間を殺さなければならないのか」
「俺も同感だ」
「残念だよ」
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