番外編 13
「行ってくる」
「ああ、死ぬなよ」
「俺は死なないさ」
「その程度に見えるか?」
「いや、見えないな」
苦笑する金田
「行ってこい」
「ああ」
バタン…
静かに扉が閉まる
「大丈夫かな…」
「アイツは強いさ」
「死にゃしない」
「…そうね」
バサッバサッ!!
「お、来た」
鳥が金田の頭に留まる
「何?この鳥」
「連絡手段だよ」
「「伝書鳩」って聞いた事、有るだろ?」
「足に手紙を結びつけるアレ?」
「コイツの場合は手紙じゃないが…」
「え?」
「手紙程度の単純な技術と一緒にするな」
「!?」
鳥から言葉が発せられる
「カッパは知らないから、仕方ないだろ?イトウさん」
「まぁ、良い」
「金田、例の組織だが…」
「ちょ、ちょっと待って!!」
「ん?どうした?」
「何!?この鳥!!」
「イトウさんが開発した技術でな」
「鳥に特殊な木の実を食わせることで、一時的に操れる」
「言葉は木の実の作用だな」
「便利ね…」
「その分、作るのにも苦労したらしいぞ」
「なぁ?イトウさん」
「俺の技術力を持ってすれば難しい事じゃない」
「アハハハ…」
「何じゃ?久しいのう、イトウ」
「ゼルフか」
「久しぶりだな」
「知り合い?」
「昔の酒仲間じゃ」
「もう、かれこれ60年ぐらい会ってなかったが…」
「正しくは63年だ」
「で、本題に戻るぞ」
「ああ、頼む」
「例の組織は戦闘に長けているらしい」
「戦闘部隊が多いな」
「強いのか?」
「弱いのが多いが…」
「強い奴だとメタルと同レベル…、それ以上かも知れない」
「メタルと…、か」
「強いの?メタルって」
「バカにしか見えなかったけど」
「…もしメタルが国と戦ったら、国は全戦力を迷い無く投じる」
「そんなに強いの!?」
「そうだな」
「過去の大戦を覚えているか?」
「う、うん…」
「4国が戦ったって言う…」
「「獄炎の炎鬼」、「紫雷のアオシ」、「孤高の死、ハジャ」、「砂風のラジン」、「炎の獅師、オキナ」「血染めのブラッド」、「風使いツキワ」、「霊獣のクラウン」、「死魂の蘭斬」」
「そして「魂狩のメタル」だ」
「それって…」
「戦場で名を残した奴達だよ」
「その中にメタルも居る」
「…そうなんだ」
「まぁ、単なる人殺しだけどな」
「お前も「双銃の金田」って言われてるだろ」
「…嫌いなんだよ、その呼び方」
「…で、だ」
「その「孤高の死、ハジャ」が今回の一件に関わってる可能性が有る」
「何だと!?」
「生きていたのか!!」
「誰もハジャの死体を見てない」
「それに、あのイカレ野郎が死ぬとは思えないしな」
「ハジャ…、か」
「懐かしいのう…」
「知ってるのか?ゼルフ」
「昔、奴がワシの店に来てな」
「「ある場所を教えて欲しい」と」
「…何処だ?」
「月神の封印場じゃ」
「ワシは何か有ると見て、教えなかったが…」
「…そうか」
「で?そのハジャが組織のトップなのか?」
「そうだと思うぞ」
「あの組織について調べれば、必ずハジャの影が出てくる」
「なるほど…」
「イトウさん、水族にハジャは接触してるか?」
「その記録はないが…」
「断言は出来ないな」
「むぅ…」
考え込む金田
「ねぇ、ゼルフ」
「何じゃ?」
「先刻の「ハジャ」って…、どんな人?」
「4国の何処にも属さず、戦場を血で染めた男じゃ」
「その強さは圧倒的じゃった」
「メタルより強いの?」
「当たり前じゃ」
「メタルでも手も足も出んわい」
「そんなのが…、私を狙ってるの?」
「心配しなくても、俺が守るさ」
「ガルスに任されてるからな」
「依頼で?」
「…ガルスが言ったのか?」
「…うん」
「…」
ゼルフに近寄る金田と鳥
「何て言うか…、ツンデレ?」
「いやいや、「ツンデレ」は違うじゃろ」
「ガルスも解って言ってるのか?」
「さぁ?」
「「依頼」だから、って…、離してる?」
「ワイルド系?」
「ツンデレ系?」
「「ツンデレ系」は違うだろ…」
「結婚を長に頼まれてるんだぞ?」
「結婚したくないのか?」
「そうかも知れんな」
「いや、結婚したくないとかしたいとかじゃなく…」
「それ自体、考えてないだろ」
「なぁなぁで終わらせる気か」
「カッパの気持ちも考えろよ…」
「まったくだ」
「何を話てるの?」
首をかしげるカッパ
「な、何でもないぞ!!」
「そうそう!何でもない!!」
「お前とガルスの結婚の事を話てただけだ」
「…ッ!!」
「イトウさぁあああああん!!」
「ん?何かマズかったか?」
「滅茶苦茶マズイよ!!」
「サラっと言いやがって…!!」
「私…、ガルスと…」
「それは良いがのう…」
「肝心なのは、お主の気持ちじゃぞ?カッパ」
呟くゼルフ
「ガルスを好きなのか、それとも嫌いなのか」
「好きなら好きで良いし、嫌いなら無理に結婚などしなくて良い」
「結婚は一生物じゃ」
「誰かに決められて良い物ではないぞ」
「ゼルフ…」
「お主の気持ちと心に従うのじゃ」
「自分の満足するようにすれば良い」
「結婚ぐらい、好きな相手にぐらいワガママになって良いんじゃないかのう?」
「…うん!ありがとう!!」
「珍しく、良い事を言うじゃないか、ゼルフ」
「「珍しく」は余計じゃ」
「ワシでも長いこと生きとるわい」
「…そろそろ時間切れだ」
「後は頼むぞ、金田」
「手間かけたな、イトウさん」
「何、1つ貸しだ」
「後で返せよ」
「…ああ」
「じゃぁな」
ポロッ
鳥の口から木の実が落ちる
「クエッ?」
「行け」
鳥を逃がす金田
「…後はガルスか」
「無事だと良いが…」
北の孤島
「世話になった、波吉」
「ええで!気にしなさんな」
「コレで残金チャラや」
「そう思うか?」
「やっぱりアカンか…」
「ほな、迎えは要らんのやな?」
「ああ、良い」
「お前も気をつけて帰れよ」
「解っとりまんがな」
「ほな」
ブォオオオオォォオオオ!!
帰って行く波吉と船
「…行くか」
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