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番外編 9

船内


貨物室


「…」


「どうした?説明してくれるんじゃなかったのか?」


「…聞いたんだ」


「何を?」


「アンタが!ブラッドて言う警察と話をしてるのを!!」


「…聞かれてたのか」


「俺は知らなかった!アンタが殺すべき奴と同居してるのを!!」

「どうしてだ!?俺を憎みも!恨みもしないのか!?」


「…言葉遣いを直せ」

「素が出てる」


「もう良い!!」

「言葉遣いを直すのはアンタの店で働く条件だった!!」

「だが、もう店は辞める!アンタを苦しめたくない!!」


ガッ!!


カッパの襟首を掴むガルス


「聞いてたんだろう?」

「俺は言ったはずだ」

「「未練がましく両親の事を思ってるわけでもねぇ」と」

「俺は苦しまない」


「それでも…!!」

「アンタが傷つく姿を…!俺は見たくない…!!」


カッパの頬を涙が伝う


「俺だって気付いてた!!」

「俺が周りと違うのに!!」

「そんな俺を!匿ってくれた!食事を与えてくれた!!」

「優しく…!してくれた…!!」


「依頼で、な」


「…ッ!!」


「お前は所詮、金儲けの道具に過ぎない」

「お前を喫茶店で働かせたのも金のためだ」

「お前の面倒を見たのも依頼のためだ」

「だが、騒ぎの根源と解れば用はない」

「むしろ、邪魔だ」


「そんな…ッ!!」


「解っただろう?」

「貴様を憎みも恨みもしないが…」

「他の感情もない」

「道具に感情を持つ奴はバカだ」


「…!!」


ガタン


扉を開け貨物室に入ってくる波吉


「ガルス兄さ-ん!もうすぐ着くで-」


ドンッ!!


その波吉を押しのけ出て行くカッパ


「何でんな?「密航やから貨物室に入ってくれ」って言うたのに怒っとんか?」


「…違ぇよ」


「ガルス兄さん、何か有ったんかいな?」


「少なくとも、お前が気にする事じゃない」


「…そうでっか」

「西の都、すぐに着くで?」


「ああ、解っている」

「俺じゃ、説得は難しいな…」


「あの連れの人?」


「そうだ」

「頼む、波吉」


「まぁ、解ったわいな」

「代金は高いで?」


「何の為に、お前に頼ったと思っている?」

「ツケが払われてないが?」


「…へいへい」



甲板


「…」


海を眺めるカッパ


「どうせ…、俺なんて…」


「居った!居った!!」


波平ナミヘイ…」


「違う!波吉や!!」

「間違えんといてや!!」


「ああ…、ゴメン」


「…ガルス兄さんとケンカしたんか?」


「ケンカ…、じゃねぇ」

「当たり前の事だ」


「何でんな?胸か尻を揉まれたんか?」


ドゴッ


波吉の腹に鋭い蹴り


「…すいまへん」


「そんな事しねぇよ、アイツは」


「信用してんでんなぁ」


「…ッ!!」

「信用してるワケじゃ…!!」


「ええ、ええ」

「皆まで言わんでも」


「…アンタ、ガルス達に世話になったんだろ?」


「ほら、えんらい世話になりましたわいな」

「依頼料がハンパなかったけど…」


「…やっぱり金の為なんだな」


「そら違いますわ」


「え?」


「「金、金、金」言うんは金田兄さんや」

「ガルス兄さんは金やのうて、自分の為に依頼をしとるんや」


「「自分の為」…?」


「コレはメタル兄さんに聞いたんやけど…」

「何でも「自分の無力さが許せない」言うて、戦っとるらしいで」


「ガルスが…?」


「メタル兄さんとは違う理由でんな…」

「コレはワテの予想やけど、ガルス兄さんは「守るための強さ」が欲しいんやないの?」

「時々やけど、ガルス兄さんは悲しい見える」

「無理をしとう様に見えるんや」


「…」


「その点では、アンタは良いキッカケかも知れへんで?」


「俺が?」


「色恋に興味が無い人達やからなぁ…」

「色恋を知れば、少しぐらいは変わるかも…」


「俺には…、無理だ…」

「俺はガルスが憎むべき人間だ…」

「俺は…、ガルスに憎まれるべき人間だ」


「そんな事、無いで」


「…アンタに何が解る?」


「…教えたろか」

「ワテがガルス兄さん達に依頼したのは兄弟の抹殺や」


「え…!?」


「ワテの母親を殺した兄が居てなぁ…」

「その兄を憎みながら、父親は死んでった」

「ワテは仇を取るために、兄を殺そうとしたけど…」

「無理やった」

「で、ガルス兄さん達に頼んだんや」


「…どうなった?」


「…意外な結末やった」

「兄が母親を殺したのはワテの為やった…」


「!?」


「あの母親、ワテを売って金儲けしようと企んどったんや」

「それに気付いた兄が母親を殺した」

「父親は…、何も知らずに死んでった」


海を眺める波吉


「そんな事が…?」


「ま、結局は兄を許せず殺したけどな」


「え…?」


「当たり前やろ?幾ら酷い母親でも家族は家族」

「殺す以外にも幾らでも手は有ったはずや」

「ガルス兄さん達に追い込まれた兄を、ワテがとどめを刺した」

「ワテの中にスカッとした気分とモヤモヤした気分が一気に流れ込んで来よったで?」

「あの感触は…、もう味わいとうないなぁ」


「…悲しくないのか?」


「何が?」


「兄を殺して!悲しくないのか!?」


「悲しいに決まっとるやろ?」

「「悲しい」通り越して…、虚しいわ」


「…」


ポッポ-!!


「お、目的地に着いたな」

「行こうか」


「何処に?」


「ガルス兄さんの所や」


「…行かない」


「何で?」


「言っただろ?」

「「俺はガルスが憎むべき人間だ」」

「「俺はガルスに憎まれるべき人間だ」と」


「ワテも「違う」言いましたやろ?」

「「憎む」やら「憎まれる」やらは全てを知った上で言いなはれ」


「何を「知れ」と言うんだ!?」

「ガルスの両親を俺の父が殺した!!」

「それだけだ!!」


「…そんな事が有ったんかいな」

「ワテも知らんかった」


ため息をつく波吉


「ほなけど、それは関係あらへん」


「「関係ない」!?」

「そんな事…!!」


「アンタは!アンタの両親か!?」

「違うやろ!!」

「アンタはアンタや!!」


「…ッ!!」


「…兄を殺して、ワテは後悔しとる」

「結局、ワテも兄と同じ過ちを犯したんやからな」

「ほなけど、まだアンタは過ちを犯してないやろ?」

「ワテが背負った悲しみの方が大きいかも知れん」

「ほなけど、悲しみは悲しみ」

「小さかろうと大きかろうと、アンタやガルス兄さんには背負って欲しくないんや」


「波吉…」


「…もうすぐ船が出てまう」

「見てみい」


「?」


船の出口で待っているガルス


「アンタを憎んでる男がアンタを待つか?」

「待たんやろ?」

「早う行け」

「ガルス兄さんが待っとる」


「…解った」


ガチャン


出口の扉を開けるカッパ


「…波吉!!」


「何や?」


「…ありがとう!!」


「礼には及ばんで」

「当たり前のことをしたまでや」


「…ああ!!」


バタン



船の出口


「遅いぞ」


「…ゴメン」


「着いてこい」

「目的地は近い」


「…解ったわよ」


「何だ?言葉遣い、直したのか?」


「悪い!?」

「アンタのために直したわけじゃ…」


「…次はツンデレか」

「さらに異趣味な客が集まるぞ」


「「ツンデレ」?何それ」


「…天然か」

「それも悪くない」


「?」


ダァン!ダァン!!


「…敵襲か」


「今頃!?」


「「今だからこそ」だろう」

「地上の方が戦闘が有利だと踏んだんだろうな」

「まぁ、波吉には悪い事をしたが…」


「へぇ…」


「感心してる場合じゃない」

「逃げるぞ」


「えぇ!?」


「奴達の目的は俺とお前だ」

「目的が無いなら、奴達も無駄な戦闘はしないはずだからな」


「なるほど…」


「行くぞ」


カッパの手を握り、走り出すガルス


「…どうして言葉遣いを直した?」


「店で働く条件でしょ?」


「…厄介な従業員だな」

読んでいただきありがとうございました

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