漆黒の君
掲載日:2026/03/14
漆黒の君は
何色にも染まらない
血の赤も涙の青も
月光の黄色でさえも
その奥に隠して
いつも君のまま立っていた
真っ白じゃなくてよかった
少しの灰色が混ざっただけで
霞む君じゃなくてよかった
君は君のまま
君らしくいてほしいから
『君らしいってなんなの。』
君はいつしか薄くなった
漆黒なんて言えない
ずっと薄い黒になっていた
誰かの白と
君の黒が混ざりあって
色が変わっていた
「君らしいは──君らしい、だ。
君は、君らしい君を目指して生きてくれよ。」
どうしてなんだ
僕が求めていたのは
何色にも染まらない君なのに
それなのに
君は違う色になった
おかしい
この世界はおかしい
君らしい君でいてくれなきゃ
僕の理想通りでいてくれなきゃ
『私はあなたのものじゃないんだ。
あなたの望むように動く、
あなたのおもちゃじゃないんだよ。』
君は意見を持つようになった
この世界を見下したような
暗い目をしなくなった
僕に縋る駒じゃなくなった
君はたくさんの色を持ち始めた
太陽の赤も自由な青も
月光の黄色もほかにもたくさん
君は自由だった
君らしさを新たに作り出した
僕の理想の君じゃないけれど
君は前よりうんと楽しそうに
やさしく笑っていた
漆黒の君は
僕が思うよりずっと
真っ白だったみたいだ
ご覧いただきありがとうございました。
僕が思うより、君は自由だった。
誰かに届きますように。




