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死とは
夜の病院の屋上。
遠くで救急車の音が消える。
「死は怖いよ。」
彼はフェンスにもたれながら言った。
「どうして?」
「消えるんだよ。全部。考えてたことも、好きだった匂いも。」
彼女は少し考えた。
「でも、それは自然なことじゃない? 春が終わるみたいに。」
「春はまた来る。でも俺は来ない。」
沈黙。
街の光が瞬いている。
「自然って言うのはさ」
彼は続ける。
「受け入れろって意味?」
「違う」
彼女は首を振る。
「受け入れないと、毎日が壊れるから。」
彼は笑う。
「それ、怖いから理屈つけてるだけじゃないの。」
彼女は答えない。
風が強くなる。
「……怖いよ、私も。」
その一言で、議論は終わる。
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