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呪解冒険譚  作者: すめ
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p2 自由とは?

「じゃあ〜、早速!自己紹介!まずは私からね。」


そう明るい声で立ち上がると彼女は言う。手の中にあるスープの入った器を片手に、もう片手にあるスプーンを此方に向けて言った。


「私はカラン、世界一の完璧美少女エルフ!」

「”自称”…な?」


彼女の言葉に即座に彼が補足を入れる。彼の言葉に不満があるようで何やら軽い小競り合いが起きている。


カラン、桃色の綺麗な髪と銀色の瞳。綺麗な肌と長く尖った耳はエルフという種族の特徴そのもの。エルフという種族の1番分かりやすい特徴はその見目だ。人間のような身体に長く尖った三角の耳とその美貌。その上、魔力との適応率が人間より倍高く、身体能力や寿命など…多くの特徴があるのだ。


「もう…次は君だよ!イベくん!」


彼女のその言葉に仮面で素顔を隠す彼は頷くと、此方を向いて言った。


「俺は、イルベト・ディリアーノ。酒好きの旅人…」


あぁ、カランの言う…イベくんというのはやはり、渾名だったようで。私は何も気にせず、ただ言葉に聞き入っていた。


「そして、お前と同じく七大罪の呪いを患う者だ。」


その言葉に私は息を飲んだ。


イルベト・ディリアーノ、綺麗なゴールドの髪に東洋の島国特有の和装と仮面が彼の素顔を隠している。腰には同様にこの辺りでは珍しい刀を装備していて、背丈は160程度の男性にしては小柄なようだった。酒好き…と言っていたが、見た目は随分と若い。少なくとも私よりは年上に見える。そして…私と同じく七大罪の呪い持ち…


「確か…お前は怠惰(スロース)だったな?」


その言葉に私は首を縦に振る。


彼からは、初めて見た時から自分と似たような魔力の存在を僅かに感じたがそれはやはり、見間違えではなかった。彼が私と同じく、七大罪の呪いを患っているのであればそれは、納得だ。ある種の共鳴…のようなものと言えるだろう。


「…俺は強欲(グリード)だ。」


強欲(グリード)の呪い、それは通称…()()と世間一般から忌み嫌われるものだ。何故なら、呪いを患った者は例外なく、欲深く…欲しいものを必要以上に求め、奪う者。

そして、それは物だけに留まらず、人や態度、目線、声色…その全てを自分の意のままにしようと手に入れようとしたがるとされるのが理由だ。このように七大罪への世間の風当たりは良いとは言えないだろう。


強欲(グリード)……』


彼が呪いを患っている…ということを聞けば、彼が素顔を隠しているのも納得が行った。


暫く、沈黙が続くと少ししてカランが口を開いた。


「それが貴女を助けた理由に関係しているの。私達の話…聞いてくれる?」


その問いに私はただ頷くだけだった。



2人が話してくれた内容はこう言ったものだった。

彼、イルベトは呪いによって多くの物を失ったと語った。呪いの存在が憎くて、恨めしくて仕方がない。呪いがなければ、そう何度も考えたのだと語った。呪いがある限り、それは彼だけでなく私も同様に呪いに苛まれ続けることになる。それを終わらせる為に彼は旅をしているのだと言う。


「呪いが終われば、俺達は本当の自由を得られるんだ。」


そう彼は言った。彼の声色は真剣で、覚悟を決めているような芯の通った低い声だった。真剣に語る彼の姿は紛れもなく本物だった。でも、私には彼の語る()()()()()というものが分からなかった。


話がある程度終わると、彼は言った。


「呪いを終わらせるためには七大罪の呪い全てが揃う必要がある。その1人目がシーシャ…お前だ」


そして、彼は私にある提案をした。その内容は私が彼の旅に同行するというもの。それに彼は同行しても、しなくても私の生活費や衣食住全て用意するし、私が望むのであれば贅沢品や私の趣味の為の費用まで全て持つというのだ。その内容だけでも、至れり尽くせりと言った感じだった。




夜、私は何かが引っかかるような気がして、眠れずにテントの外で夜空を見上げていた。彼の誘いに乗るべきなのか…私には分からなかった。

呪いを終わらせる為に私の持つ呪いが必要だと言うことも分かる…けれど、だからと言って私にそこまで手を尽くす必要が分からない。何をどうしたら、会ったばかりの人間にそこまでの条件を出せるのか…ハッキリ言って、あの条件は異常に感じた。


それに本当の自由…って?その答えがいくら考えても分からない。何かに縛られないこと?自然に生きられること?好きなことが出来ること?様々な問答を頭の中で繰り返し続ける。それでも、答えに辿り着くことは出来なかった。


その日の夜空は皮肉にも、私の頭の中とは裏腹に美しく堂々と輝いていた。




翌朝

テントの中で鳥の鳴き声に起こされて、目を覚ます。立ち上がろうとするけど、この身体では身体を起こすぐらいなら出来るが…昨夜の様に彼の魔法の補助が無ければ、歩けないし、立ち上がれない。どうしたものか…そう考えていると、目の前のテントの入口の布が開かれて、陽の光が入ってくる。


「あ、おはよ〜!朝御飯、もう出来てるよ!」


そう言って、彼女が手を貸してくれた。そのお陰で、無事にテントから出て、朝食を食べようと支えながら移動する。目線の先には、彼が器にスープを注いでいた。彼は一瞬此方に目線をやると、直ぐに作業に戻った。だが、彼が目線を此方にやった一瞬で私の身体が微かにふわりと浮いたような気がする。魔力を微かに感じる。恐らく、風魔法で支えてくれたのだろう。


丸太の上に腰掛けて、欠伸をする。暫くして、彼が2つのスープが入った器を持ってきて…カランと私に1つずつ渡す。


「朝食が済んだら、出発するからな」


そう言って、テントの方へ歩いて行ってしまった。


私が封印されていた遺跡は深い森の奥底で街に行くには早くて2日は必要。更に今は、足が上手く動かなくて歩けない私が居る…その事から遅めに行くとして片道3日、つまり野営を3回行ってから街に着くだろうとの見立てで朝食を食べたら直ぐに出発するとのこと。奥の方では彼がテントやらを片付けている。その様子を遠目に見ていて、ふと気付いた。昨日もだが…彼が食事をしているのを見ていないと思った。私とカランが食べる前に既に食べたのか…まぁ、どちらでも私が気にするようなことでもないか。



数時間後、身支度をやっと終える(主にカラン)とそう言って拳を空に掲げた。


「さぁ〜て!出発進行だぁ〜!おー!」


その言葉に透かさず、言葉を返す。


「おい、まだテントをしまっていないだろ。」

「え〜、良いじゃん。そんなのどうせ、イベくんが魔道具でちゃちゃっとやっちゃうんでしょ?」


その言葉も直ぐに返されて、イルベトは溜息を着く。和装の首元に手を入れて、中から何かを引っ張り出したかと思えばそれは青緑色の宝石の着いたネックレスで服の下に隠れていたようだった。それを取り出すと、分解したテントの布やら柱の方にネックレスを向けるとそれらの地面に突然黒い円が現れると、その中から2つの手が伸びて来て、それらを掴むと中へと引き摺り込む。そして、円が段々と小さい玉になると、それはネックレスの宝石の中へと入って行った。


『それ…は……?』


目の前のその景色に首を傾げる。そのネックレスは恐らく、魔道具と呼ばれる品物…それは私が封印される前からあったのだが、当時は大きな物ばかりで更に本でしか見たことがなかった。実際にこのような小さな物は初めて見た。


目覚めた時よりも、食事を摂ったからか…喉の調子が戻ってきて最初よりも話せるようになってきた。


「あ〜、あれは収納魔道具!高貴な貴族様御用達の魔道具で有名だよ。」


その高貴な貴族様御用達の物を彼が持っていることに驚いたのは今は気にしないでおこう。


収納魔道具、魔道具という魔石を原動力とした特殊な道具で魔道具は生活系統と戦闘系統と支援系統と3つの系統に別れている。その中でも収納魔道具は生活系統に区別される魔道具だ。名前の通り、限られた量の物品を魔石の中に収納することが出来るものだ。私が知っている魔道具はどれも、1つでテント1つ分くらいの大きな物にやけに複雑な内部設計がしてあるものばかりだったが…数十年でこんなにも魔道具は進歩したのか、と驚かされる。魔道具がこれほど進化したのであれば…その他にも変わったことが多くあるかも知れないなんて、それを街に着けば多く目の当たりに出来るかもだなんて考えて少し心が踊るような気がした。




そろそろ、街へ向かって出発しよう。その時だった。未だに足に力が入らず、歩くことが出来ない私をどう運ぶかという話だった。


「俺だと、次の野営地に着く時には魔力が切れるぞ。」

「え〜、でも…私だと魔法の発動自体が魔力量に頼ってるから。細かな調整が出来ないし…」


今までは、彼が風魔法で支えてくれていたからやっとの事で歩くことが出来た。同じようにすれば良い…だが、そうも行かない。彼は魔力量が平均的で私やカランの様に魔力量がさほど多くない。その為、長距離、長時間の使用には向いていない。であれば、種族的にも魔力量が多いエルフのカランが行えば良いのでは?という考えに至るだが…本人曰く、彼女は魔法の発動は魔力量に頼り切りなこともあって、細かな魔力操作は得意分野では無い。非常事態に咄嗟に魔法の発動を解除したり、動いたり、逃げれない私を安全な場所に移したり出来ない。それに対して、イルベトは魔力量が少ない代わりに繊細な魔力操作が得意で非常時の対応がしやすい。


私のことでこれほどまでにちゃんと話し合ってくれるのは有難いと思う気持ちと自分か足手まといになっていることに申し訳なさを感じる。


「あ〜、もう…じゃあ!こうしよう!」


痺れを切らしたカランの一言で数分間に渡る話し合いは一瞬にして幕を閉じた。



草木を時折、踏みながら街の方へ向かう足音が2つ。私は結局何処に居るのかと言うと…


「カラン、周囲の警戒は任せたからな」


彼、イルベトの背中に乗せて貰っていた。痺れを切らしたカランが出した提案は至って、単純なもので…魔法を使おうとするから魔力の問題の話になる、だったら…そもそも使わなければ良い!ということになった。


「そりゃあ、もちろーん!この完璧美s」

「それなら、良い」

「ちょっと!今、わざと被せたでしょ!?」


その案には最初、彼は長距離をそれで歩くことになるのだから…断りを入れるかと思われたが、それも容易く破られて、呆気なく了承していた。挙句、私が良いなら問題ない…と言うので私が文句を言う訳もなく、この状態に落ち着いた。


そして、今は歩き始めて数十分経っていた。私を背負う彼は疲れていないのか…と思って気にするが、当の本人は全く息切れもしていないし、それどころか汗も全くかいていないようだった。

歩いている最中、2人はまるでピクニックの道中かのように普通に会話をしていて…余裕があるようだった。


「街に着いたら〜、まずはシーシャちゃんのお洋服でしょ〜?」

「いや、先にバーゼルの方へ顔を出す。」


突然、自分の名前が会話に出て来て、少し驚くが次に彼が出した名前の方が気になった。バーゼル…?彼らの共通の知り合いなのは間違いない。


「いや、それはそうなんだけど。そうじゃなくて、一段落着いたら!の話!」

「…お前の分の金は持たないからな。」

「えー!?こんな完璧美少女なのに!?」


2人が世間話を相も変わらず、緊張感無くしていると…突然彼が歩くのを辞めた。そして、何やら立ち止まって少し顔を俯きがちにする。仮面で素顔が隠れているので何をしているのか…よく分からない。


「…4だな」

「もぉ〜!相も変わらず、エルフの探知魔法より先に察知するの辞めてくれない?」


そう言って、カランは腰元にあった短剣と杖を取り出すと構える。すると前方から、ガサガサと木の葉が揺れる音がして、4体のゴブリンが現れる。ゴブリンは私達を視界に入れるなり、直ぐに木の棍棒を持って襲いかかってくる。振り下ろされた棍棒を彼女は容易く手馴れた様子で避け、その隙を透かさずに首に一撃して切り落とす。そして、仲間が殺されて動きが遅くなった他のゴブリンの一体に一撃入れ、もう一体。そして、それと同時に片方の杖で岩属性の魔法でもう一体のゴブリンの心臓を貫いた。三体を倒し、残り一体…のはずだが、彼女の前には何処にもいない。一体何処に…そう思っていたら、彼女が振り返って言う。


「イベくん!」


そう、彼の声を呼ぶ。右側の草木からゴブリンが剣を振り翳していて、駄目だ…そう思った


「分かってる。」


その瞬間、彼のその言葉と共に彼の蹴りでゴブリンの手から剣が宙に舞って、地面に刺さる。その剣に気を取られたゴブリンに透かさず、もう一度蹴りを入れて、前方へと吹き飛ばされたゴブリンが彼女によって透かさずに一撃を入れられた。


「相変わらず、君のその地獄耳はご健在なんだね?」

「悪いな、お宅の探知魔法よりも…優れもののようだ」


その会話はまるで、散歩やピクニックの道中の出来事を振り返るようで…私だけが取り残されて、まだ現実に馴染めて居ないように感じた。


こうして、無事に初の戦闘は誰も怪我をせずに終了した。

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