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趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた  作者: 歩く魚
無双無槍

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プロローグ

 静寂と暗闇に支配された空間を、突如として紫色の閃光が襲った。

 眩い光は空間の隅々まで――そこがとあるギルドの一室であると明かしてくれた。


「はっ……ははっ! ついに、ついにやったぞ……ッ!」


 続いて声が響いた。

 狂気を孕んだそれは、男のものだった。


「これで……これで俺の計画が、ついに……はははははは!」


 この男が一体何をしようとしているのか、それを知っているものは世界に一人として――


「あの……もう灯りをつけてよろしいでしょうか」


 パチン。フィンガースナップと共に部屋にかけられていた数個のランタンが暖かさを取り戻す。

 明るくなった部屋で、先ほど高笑いしていた男――シンは恥ずかしそうに俯いていた。


「一回やってみたかったんだよ、こういうマッドサイエンティストムーブ」

「言いたいことがよく分かりませんが、シン様が喜んでおられるのなら私も嬉しいです。クッキーはいかがですか?」

「食べたいです」


 とっくに時間外労働だというのにメイド服を脱がないリゼット。

 彼女は淀みない足取りでシンの自室を出ていき、すぐに片手に皿を持って戻ってきた。


 そして、それを彼が腰を下ろしているベッドの脇、ローテーブルに置くと、一枚を指でつまんで主人へと差し出した。


「……うん、美味い」

「ふふっ……良かったです」


 続けて、リゼットは自分の指の汚れを丁寧に拭き取ると、シンのベッドへと上がり、彼の背後から肩を揉み始める。


「あぁ〜……ダメになってしまう……」

「良いのですよシン様。私がシン様の全てをお世話しますので」

「それは良くないよぉ〜……良くないけど……」


 年末の一件以降、シンとリゼットの距離は急激に縮まっていた。

 というより、シンがリゼットの過剰な愛情表現を受け入れ始めていた。


 彼の初体験は――それはもう最高だった。

 愛を向けられる行為はこれほどの充足感をもたらすのかと、その実感が心を溶かしたのだ。


 とはいえ、シンの心は揺らがない。

 あくまで平和に。助成金を求める日々は続いていた。


「しかし、シン様……」


 リゼットはマッサージの手を止め、シンを後ろから抱きしめた。

 ベッドに座っているシンと膝立ちのリゼット。

 必然的に、リゼットの豊かな胸がシンの後頭部を包み込む形になる。


「今回の魔術は、私としては容認できないのですが……」

「まぁまぁ、俺だって死にたくないからさ。ちゃんと機会を見計らって使うよ。生きるか死ぬかの線引きは上手いんだよ、俺」

「そう……ですか」


 軽く言ってのけるシンに対し、従者は納得していないようだった。


「……もしシン様が命を落とすことになれば、私はすぐに後を追いますよ」

「いや、寿命まで生きてくれよ……」

「無理です。シン様のいない世界など無意味なので」

「えぇ……」


 こうは言っているが、リゼットも内心ではシンの延命能力には信頼を置いていた。

 シンの欲望を、そしてシン自身が気づいていない能力にも多少の検討はついている。

 だからこそ今回のような魔術の制作に首を縦に振ったのだ。


「あとは肝心の使い時だよなぁ……ヴェスティアに行ってから一ヶ月。そろそろ新しい依頼でも探しにいくか。最近はノランさんも優しいし」

「お土産作戦が功を奏しましたね」

 

「もう一個くらい依頼をこなせば助成金の増額申請も……猫も増やせるな」

「……そろそろ他の動物はいかがでしょうか。猫も可愛いですが、もう七匹はいますし……」


「なら羊にしようかな」

「羊……ですか?」


 リゼットが首を傾げる。


「リゼットは羊を飼う夢、見たことあるか?」

「いえ……シン様と一緒に暮らす夢は毎日見ます」

「あ、そう……俺が羊と戯れてても、殺したりしないでくれよ。あれは羊じゃないけど」

「……わかり、ました?」


 シンはたまに、自分にしか分からない話をする。

 そして楽し気に笑うが、リゼットはその顔が好きだった。


 かくして、シンは新たな玩具を手に入れた。

 そして、これが原因で新たなメンバーを加入させるハメになるのであった……。

3章は不定期、週一くらいで更新できたらいいなという希望を持っています。


ただ、PVや評価ポイントがないとモチベがなくなるので、ぜひ評価ポイントをください!

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