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召喚され少女と密室二人きり、俺が死ぬまでの七日間。そこから始まるアタシの物語  作者: うさぎさう
4章 【そこから始まったアタシの物語】

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4章1話:名乗り

 木の葉が風に舞い、それがまた彼の存在を主張し、中性的で整った顔立ちが不気味さを強調する。

 その目の前の存在に悪寒が走り、後ずさった。


 ——ドットルーパ。

 フミーと同じく死者蘇生を目指すログライフ。その彼女を母に持つ吸血鬼の男。


「また、研究所を襲いに……」


 だとしたら、ここで食い止めなければならない。


「いや違う。オイラは目的を果たせればそれでいいんで、今となっては研究所とかどうでもいいっすね〜」


 警戒するフミーの態度を見てドットルーパはあしらうように首を横に振った。

 彼の黄緑の髪がその動きに合わせて軽やかに揺れる。


「目的?」


「言わなかったっけ? オイラは、オイラが楽に死ぬ方法を探してるっすよ〜」


 独特な喋り方をしながらフミーが手に持つ槍へ視線を向ける。


「オイラの母国——吸血鬼の国って言うんだけど、出て来て随分経つんでそこの記憶は朧げ。でも、とある噂があったのは覚えてるんっすよ〜」


 槍を注視したままドットルーパは続ける。


「吸血鬼の国の王城地下には厳重に何かが封じらられてるってね。そしてそれは、自分たち吸血鬼を殺せる槍らしい」


 お祖母様が吸血鬼の国にチョジュラスの槍があったと言っていたことを思い出す。ドットルーパが語るその槍はチョジュラスの槍のことか。


「まさか本当にそんな槍があるとは驚いたが——というわけでフミー、オイラを殺してくれ」


 自分の胸に手を当てながら、八重歯を見せてドットルーパ笑った。眉を八の字にし、不気味に。

 

「……え」


 突然の要求に体が凍りつく。


 ——殺す?

 ——アタシが?


「これは、そっちにもメリットあることっすよ〜?」


「……どういうこと?」


「あの金髪坊ちゃんの解析能力、槍に使ってないっすか〜?」


「……負担が大きいから、少しずつ、本当に毎日少しずつ使ってはいるけど……」


「なら教えてやる。——生命力の強い者を7人殺せば死者蘇生ができるんだよ、その槍は。そして、不老不死である吸血鬼なら2人分。オイラを殺せば、他の生命力強い奴あと5人殺すだけっすよ〜」


「……」


 ふと、鈴の音色と共に、エルフの女性の姿がフミーの頭に浮かぶ。


「それは、リクが解析してくれたからもう知ってる」


「あ、そう」


 すでに一人分の命を奪っているこの槍は、残り6人の命を狩ればいいことも、解析されている。

 そして、他の方法がないか、リクに引き続き少しずつ解析してもらっている途中の段階だ。


「なら、お互いメリットしかない。さぁ、殺してくれっすよ〜」


 命を奪うなど、最終手段だ。犠牲なんて、ない方が良いに決まってる。


「そう、それでいいっすよ〜」


 しかし、フミーは槍の先を彼へ向けた。

 今度は心底嬉しそうにドットルーパ笑った。


 誰かの死なんて嫌だ。犠牲は嫌だ。そのフミーの気持ちは大事なものだ。

 でも、目の前の男はそれを望んでいる。

 彼にとって死は犠牲じゃなく、救いだ。だから、自ら望む。

 それを認めなければならない。否定してしまえば、同じように自ら死を選んだクロシェットも否定してしまう。

 クロシェットが死を選んだことを許容するのなら、ドットルーパの死も許容しなければならない。

 フミーが直接命を奪うかどうかの違いでしかない。

 ——本当の話、そう考えなければ耐えられないだけだとしても。


「……」


 一歩、一歩、また一歩と近づく。

 これ以上進めば、槍がドットルーパの胸部に刺さるというところでフミーは立ち止まった。

 槍は振り回せるほどに軽いはずなのに、ずしりと重く感じる。


「思い残すことはないんで、一思いにやっちゃって。こう……痛くないように頼むっすよ〜」


 このチョジュラスの槍を突き刺せば、彼の命は終わる。長い人生が終わる。

 

「あんた、変わったっすね〜」


「———」


 突然の言葉にドットルーパの顔を凝視すれば、彼と視線が交わる。


「前は前で腹立たしい奴だったけど、今は別の腹立たしい感じ」


「腹立たしい……?」


「なんか、母さん——ログライフみたいな目してる。孤独な奴の目」


 そう言われた時、ドクンと心臓が大きく跳ねた。

 ログライフの何も意に返さないような空虚で、白い瞳が脳裏をチラつく。


 半ば無意識に槍を下ろし、俯いた。

 ログライフに似ていると称されたことが、フミーを揺らがす。

 だが、それ以上に孤独な奴の目と言われたことが、思考を氷結させた。


「あ、落ち込んでる? めんごめんご。……おーい? 聞こえてるっすか〜?」


 ドットルーパの呼びかけが通り抜ける。


「……あのさ、オイラ殺す気ないなら槍貸してくれっすよ〜」


 行動が静止していたフミーからドットルーパーが槍を取り上げた。それを自身の胸部へと突き刺ささんと——


「ダメッ……!!」


「——!!」


 叫んだ直後、無詠唱無呪文の召喚術で瞬時にフミーの手へ槍は戻る。冷や汗が背中を伝った。


 深く考えたらどうなってしまうかわかるから、心も頭も体も何もかも停止させるしかなかった。しかし、ドットルーパのその行動は反射的に止める。


「……おい。オイラの邪魔、するっすか〜?」


 尖った氷のような声に鋭い眼光で射抜かれ、逃げ出したい衝動に駆られる。しかし、フミーは足裏が地面に張り付いたように動けないでいた。

 ただ、魔法の発動はいつでもできるように身構える。


「はぁ……。殺してでもオイラは奪うっすよ〜?」


 殺してでも。嫌でも震えてしまうような言葉を聞いてもやはり、チョジュラスの槍を渡す気にはなれない。


 その意思を示すように、チョジュラスの槍を抱きしめるように腕へ収めれば、ドットルーパの腕がフミーの喉元目掛ける。フミーの反応は間に合わない。

 その刹那——


「そんな狼藉、正義を愛するあーしは許さない」


 フミーの喉元とドットルーパーの爪の先の間に刀が入り込む。風を切る音と風圧で存在を主張しながら。

 森の空気が一瞬にして変わったのを肌で感じる。


「———!」


 毛先の白い情熱の赤髪をたなびかせながら彼女は現れた。


「隊長さん……っ」


「白髪で紅色の瞳の君、先に名乗らせてもらうわ」


 凛とした真っ直ぐな声は、フミーの心に安心感を覚えさせる。


「あーしはユスティーツ警備隊隊長——アープル。正義を愛する女よ」


 ようやく彼女の名前を知った。









年内は更新ペースゆっくりになると思いますがよろしくお願いします!

今回の章で完結予定です!

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