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召喚され少女と密室二人きり、俺が死ぬまでの七日間。そこから始まるアタシの物語  作者: うさぎさう
3章 【エルフの里で見上げた月】

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3章27話:結び〈1〉


「いよいよ帰るんですね……!」


「テンションたけーなネオ」


 張り切るネオンを気だるげにリーゼは眺めていた。


「エルフの里もいい場所だったけど、その……やっぱり研究所が恋しいというか……」


「リクに会いたいんだろ。わかってるわかってる」


 言い淀む真意を見透かす発言にネオンは照れ臭そうにしている。その珍しい表情を揶揄うようにリーゼはニヤニヤとした。

 二人の様子見て、父様は安堵の表情を浮かべる。


「リーゼさん、さっきは体調悪そうだったけど、大丈夫そうみたいだね」


「うん」


 父様の言葉にフミーは頷く。


「……」


 一方、一緒に帰る予定のお祖母様は黙って空を見上げていた。雲一つない青空だ。

 色々と思うところがあるのだろう。


「ちゃんと森林地帯抜けられるかな」


 フミーは森林を見据える。

 行きでは能面に襲われたり木の枝に襲われたりと散々な目にあったものだ。


「大丈夫。今度は絶対、離れないから」


 父様はフミーの肩に触れ、優しく微笑んだ。


「……。ありがとう父様」


 正直なところ、その言葉を信じる気はない。その判断が最適だと思えば、父様はまたフミーを置いていくことだろう。

 だから願うなら、そんな状況にならないで欲しい。いや、そうならないようにフミーは強くなった。

 お祖母様もいるし、行きの時とは大分状況は違うので大丈夫と信じよう。



———



 道中、魔物が出現したり妖精と出会ったりしたものの、能面が現れたり幻影が現れたり木の枝が襲ってきたりということはなく、森林地帯の出口である洞窟の前に辿り着いた。


「……っ! あれ……本当にこれ、出られるのか!?」


 暗く続く洞窟を見るなりお祖母様は目を輝かせた。


「本当に、あたいは解放された……!?」


「よかった。あの脅し通じてたんだ」


 フミーのおかげで何とかなったのなら、それは嬉しく思う。


「流石あたいの孫!」


「母さん、一体どういう……」


 フミーと肩を組んでくるお祖母様の言葉に疑問を持つ父様。そこら辺の詳しい説明はしてないから当然か。


「まっ、こいつのおかげであたいはここを出られるようになったって話だ」


「はあ……?」


 要領を得ないお祖母様の説明に眉を顰める父様。


「道案内のためについてきたんじゃないんですか? そもそも出られないって言ってたでしょう」


「いやだから出られるようになったのだよ」


「……」


 父様はそれはもう複雑な表情で、喜ばしいが解せないといった感じだった。

 一方、そもそも森林地帯を出られないという話すら知らなかったらしいネオンとリーゼは首を傾げている。


「まっ、とにかくそういうことだから一緒に暮らさせてくれや」


 そう言ってお祖母様は父様の肩を軽く叩いた。



———



 再び三ヶ月近く船上で揺られ、リクの待つファースト大陸へと帰ることになる。

 リクには寂しい思いをさせたかもしれないが、その分お土産はたくさん買った。


「さて、と」


 徐に立ち上がり、フミーは自室を抜け出した。

 船の施設は豊富である。その中の一つに魔法訓練ルームへ向かう。


「誰もいない……か」


 1000人は余裕で入れそうな広さだが、フミーが独占できるようだ。部屋の中央へと歩き、その広さを体感する。

 そして、『魔法訓練ルーム』なのだから何をするかは一つだ。

 お祖母様との修行はとても実りあるものだった。しかし、船上でのこの三ヶ月では一人で自主練をしていくつもりだ。

 

「リーゼとカジノに行っちゃったし……」


 久しぶりに森林地帯を出たお祖母様は船内で営業中のカジノに興味を持った。今頃リーゼと共に堪能していることだろう。

 そして、父様は船酔いのため自室で休息。ネオンは船内の店を巡っている。リクへのお土産をまだ買うようだ。

 各々の時間がある。フミーはフミーで有意義に過ごそうじゃないか。




 3ヶ月経過。




 何事もなくファースト大陸に船は到着。

 無我夢中で魔法の熟達に費やしていたせいか、あっという間だった。


「フミー、昨日も遅くまで特訓ルームにいましたね」


「父様には内緒にしてね」


「いいけど、オーバーワークじゃないですか?」


「平気だよ。足りないくらい」


 船から降りながらネオンとそんな会話をした。



———



「行きましょうか、フミー!」


「うん」


 まず研究所へ帰り荷物を下ろした後、実家へ帰っているリクをネオンとフミーで迎えに行くことになった。

 久しぶりにリクに会えるため、ネオンは落ち着きがなく手足をバタつかせている。

 フミーが一緒に行く必要性がない気はするが、ネオンに誘われた。緊張しているからついてきて欲しいんだろうか。


「なんていうか……ネオンは本当にリクが好きなんだね」


「っ!!!」


 正直、好きな人に会いたくとも会えない自分の状況を思えば羨ましい。


「…………はしゃぎすぎました。ごめんね」


「いいよ」


 ネオンは顔を赤くして大人しくなってしまうネオン。

 このまま、もう少し踏み込んだ話をしてみることにする。


「いつか、結婚とかするの?」


「———」


 足を止めて、ネオンは固まる。そして、表情が見えないほどに俯いた。

 踏み込みすぎたかと、別の質問をしようとしたが、ゆっくりとネオンは顔を上げた。


「そんなこと、できません」


 そう答えたネオンは人形のように無表情で、熱が冷めたかのような目をしていた。そして再び歩きを再開する。


「どうして? リクもネオンが好きなのに」


「知ってますよ。でも、あの子は一人っ子で、いいとこの出で、跡取りが必要です。私は子供が産めませんから、難しい話ですよ」


「……? それだけ? どうとでもなる気がするけどなぁ。養子もらったり、駆け落ちしたり」


「養子はともかく、駆け落ち……していいんでしょうかそんなこと」


「うん。リクはネオンのことすごく好きだからOKだよ」


 彼と恋バナをしたフミーは知っている。どれだけネオンを好きなのか。


「……。つきましたね」


「!」


 場所は王都の外れ、使用人が何人もいるという豪邸へ辿り着いた。


 乳白色の外壁は見るものを惹きつけ、掃除の行き届いた綺麗な窓は輝かしい。

 思わず息を呑む。


「その……フミー、リクを呼んできてくれませんか。私はここで待ってるので」


「えー? なんで?」


「ここには何度か来たことがありますけど、中には入ったこはないんです。良い顔されないでしょうし……」


「悲観的だね」


「リクは本来、家の家業を継がなきゃいけない立場なとこを幽閉解除に協力してもらったりしてたので、息子を誑かしやがってーとか言われるかもしれません」


「気にし過ぎじゃない? まぁ、とにかく行ってみようよ」


 嫌な想像をしているネオンの手首を掴み、玄関をノックした。

 リクの実家でリクの家族なんだから、何も不安に思うことはないだろう。


「ネオン! フミー!」


 玄関を勢いよく開けて出てきたのはリク本人だ。


「わ、わ、わーっ!」


 ネオンは叫ぶ。

 会って早々リクはネオンに抱きついたから。


「フミーは髪切ったんだね」


 ネオンへ抱きついたまま首だけ動かし、リクはフミーを見た。

 

「うん。リクは……少し髪伸びた?」


「切るのが面倒で」


「ところで後ろにいるのって——」


 リクの背後、家の中には二人の人物がいた。濃淡の差はあれどちらも金髪であり、片方は女性、もう片方は男性。

 女性はおっとりした顔立ちで男性は海の浅瀬のような水色の瞳を有していて、どちらもリクに似ている。

 リクの両親なのだとすぐわかった。


「父さん、母さん、紹介するよ。この人がネオンで、こっちがフミー」


「初めまして。フミーだよ」


「ネオン……です……」


 リクの両親は優しくフミーたちを出迎えてくれた。

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