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召喚され少女と密室二人きり、俺が死ぬまでの七日間。そこから始まるアタシの物語  作者: うさぎさう
3章 【エルフの里で見上げた月】

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3章1話:潮風に揺られながら



 青々とした濃い水の色。

 晴れやかな空の下、客船はそんな海上を進んでいる。


「わぁ……!」


 船の甲板からフミーは手を合わせながら地平線へ目を輝かせていた。

 揺られながら広い広い海の上いる感覚に興奮が収まらない。


「はしゃぎやがってガキだなやっぱ」


「年齢的にはあなたが一番下ですけどね」


 腕を組むリーゼとその隣には風で飛ばぬよう自身の帽子を抑えるネオンがいて、二人はフミーを見守っていた。


「あんまりはしゃいで海に落ちないようにね……」


 父様は壁にもたれかかっていて顔色が悪い。船酔いでこっちが心配になるほどの様子であった。


 ——アルウェイル森林地帯。危険かもしれないその場所へ向かっているのだが、こうやって渡航している間は平和であり旅行気分を味わえている。

 フミーたちがいたファースト大陸からアルウェイル森林地帯のあるサード大陸へはかなり遠く三ヶ月近くかかるため、少なくともその間は気を抜いて過ごせるのだ。


「父様、その感じで三ヶ月大丈夫?」


「酔い止めの薬、飲んでるからなんとか……。フミーは、……全然平気そうだね」


「うん」


 一説によると乗り物酔いは遺伝するらしいが、フミーの場合そんなことはなかった。

 父様の親であるフミーのお祖母様はどうなんだろうか。


「………………」


 酔いを緩和すべきく風に当たる父様から離れ、フミーはネオンへ近づく。

 船内の施設をすでに一通り見ていて思いついたことがあるのだが、この調子の父様に頼むことはできまい。


「父様に頼もうと思ったけど代わりにネオンに頼んでいい?」


「なんですか?」


 ネオンの袖を引き、へこっそり耳打ちをした。



———



 船内にはカジノや劇場など施設が豊富であり、その中の一つに魔法訓練ルームがある。部屋内に協力な魔法耐性が敷かれていて、自由に魔法を打つことができる。1000人は余裕で入れそうなほどの広さであり防音性能もあるらしい。

 そこへフミーとネオンは来ていた。父様は船酔いによる体調不良のため自室で休んでいる。リーゼはカジノに行った。


「水魔法や炎魔法、付与魔法など色々ありますけど、最初は一つに絞った方がいいですね。どうします?」


 ここへ来た理由、それはネオンへ魔法を教えてもらうためだ。フミーは召喚術なら使えるが魔法は一切使えない。幽閉される前に父様から教わったのは召喚術だけだからだ。

 ログライフ一派の襲撃の際、自分の足りなさは嫌というほど自覚させられている。だから必要なのだ。召喚術以外の武器が。


「炎魔法がいいな。召喚術だと炎は召喚できないし」


「わかりました。お手本として炎の玉を出すので見ていてください」


 そう言ってネオンは数歩距離を取り、掌を広げる。


「!」


 一瞬にして火の玉がネオンの掌へ出現していて思わず目を見張るフミー。

 直径20センチくらいのそれはメラメラと燃え、小さな太陽のようだった。


「熱くないの?」


「自分で生成したものですからね。まぁ、初心者の魔法使いだと調節に失敗して自爆する人もいますが、体に感覚を慣れさせればそんなことにはなりません」


「へぇ〜」


「あと杖など魔法補助具を使用すれば安定しますね。それに慣れすぎるとなくなった時に困るのでおすすめしないですが」


「フムフム」


 ネオンが言ったことをメモするるべく日記帳を取り出した。日々の記録どころか最近は単なるメモ帳代わりの役目も果たしている日記帳だ。


「よし!」


 書き終わって日記帳を閉じるフミーを見計らってネオンは口を開く。


「手を出して。最初は私がサポートして使えるようにするのでそれで感覚を掴んでください」


 言われた通りにを出し向ければ、その手首をネオンが掴む。掴むその手からは何かが溢れてくるかのように熱かった。


「イメージして、さっき私が出した炎を。召喚術を使う時も物体を想像するでしょう。同じようにやってみてください」


「……」


「想像したら、今度は掌に力を込めて」


「…………!」


 言われた通りにすれば、フミーの手から飴玉サイズの炎が点火する。


「わわ……っ」


「この感覚を忘れないで」


 それからは、ネオンのサポートなしで出すよう言われるもできず、そうすればネオンがサポートし炎出す、またサポートなしで出そうとするといったことを繰り返していった。


 そして休憩を挟みつつ3時間後——ようやくネオンのサポートなしで米粒並の炎を出現させることができた。


「やった!!」


「魔法を一切使えない状態から3時間でこれは凄いです。この調子で頑張りましょう」


「わーい!!」




 そして一カ月後。




「炎魔法の才能ないですね」


「ガーン!」


「まさか米粒サイズの火の玉が限界値とは……」


「うぅ……」


「蝋燭に火を灯すくらいならできそうですが」


 誕生日の時に便利な程度である。

 乗り物酔いが遺伝しなかったのと同様に魔法の才能も父様から遺伝しなかったようだ。

 父様はどんな魔法だろうと扱えていたのに。


「そういえば母様は魔法が一切使えなかったなぁ……アタシって結構母様似なのかも……」


「どんな魔法もそつなく扱えるアヤートが例外ですよ。気に病む必要はないです」


 いつか父様のように色んな魔法を自由自在に扱いたいと思っていたがその道は茨であった。


「他の魔法も試してみましょうか。そうですね……光魔法とかどうでしょう」


「光魔法か……発光して辺りを照らしたり目眩ししたりだよね」


 炎魔法とは違いあまり攻撃性の高くない印象だ。


「上級者以上ともなれば光で刃を作って物体を切るなんてこともできますよ」


「光で……切る!?」


「光のエネルギーを密集させて飛ばす感じですね。……私は光魔法は不得手なのであまりやりませんが」


 苦手を告白するネオンは苦々しい顔だった。


 それから5時間ほど経過し、光魔法の初級段階である弱い光を作るところから始め、見事成功。

 だが炎魔法の件からここで喜ぶのは早計だと自制する。




 一週間が経過すれば、暗闇でも作業をすることが可能なほどの光を作れるようになった。

 これにはネオンも「あなた絶対光魔法の才能ありますよ」と飛び跳ねテンションを上げていた。期待に応えられなかった場合を想像し心苦しい。炎魔法での経験からネガティブ気味なフミーであった。




 そうして一ヶ月後だ。船に乗ってからで数えれば二ヶ月。

 そんな頃に、フミーは自分の才能を自覚した。


「あ……」


「すごいですよ。そのままキープしてください」


 フミーが掲げた掌に、白く発光する刃があった。


「——っ」


 だが10秒も満たないうちにそれは形を崩して消えていく。


「はぁ…はぁ……」


 10分間腕立て伏せをしたように息が上がり、肩で呼吸をする。


「お疲れ様です」


 流れる汗をタオルでネオンは優しく拭いてくれた。


「1分は維持できるようにした方がいいでしょう。それまで私が教えられることはないですね」


「1分か……」


 10秒でもこんなに辛いのだから、1分維持などできるまでどれほどかかるだろうか。

 ——だが、炎魔法の上達に失敗している以上今度こそは。




 2週間後。




 滝のように汗が流れ、喉が悲鳴を上げるほど忙しなく呼吸をする。

 服は汗によりべっとりと身体に張り付いて気持ち悪い。


「ぜぇ、ぜぇ、はぁ……はぁ……、どっ、どお?」


「1分、できてましたよ!」


 疲労のあまり床へ這いつくばるフミーへネオンは嬉しそうに結果を教える。


「こんな短期間でここまでできるとは思ってませんでした。この調子でいけば光魔法の攻撃もすぐ扱えるようになるでしょう」


「や、やった〜」


 喜ぶ気力も残っていなかったが、なんとかガッツポーズを作り喜んだ。

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