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召喚され少女と密室二人きり、俺が死ぬまでの七日間。そこから始まるアタシの物語  作者: うさぎさう
2章 【再会までのエンドロール】

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後日談:エンドロールを超えてから



 ——時は現在、仕事後に父様と二人で王都向かう場面へ回帰する。


 あれから数週間が経っているが、計10冊も読めていない。父様もネオンとリクも協力しているのにだ。ちなみにリーゼは怪我が完治してからから協力する予定だ。


 1日は24時間。だけど、本を読める時間は限られている。

 睡眠時間の7〜8時間がまず差し引かれる。今はリーゼの喫茶店を手伝っているので日中は無理だ。そうなってくると、フミーが読書に当てられる時間など10時間にも満たない。

 フミーは幽閉されている間、数々の本を読んできた。それなりに速く本を読めると思う。

 それでも、分厚い本も多く1冊読み終わるだけでも時間がかかるものだった。

 

 そして、本題であるカザミショーヤを生き返らせる手掛かりになるものはあったかどうかだが、なかったと言わざるおえない。

 それっぽい方法が書かれていると思えばあとがきで作り話とぶっちゃけていたり、死者蘇生を題材にした詩集だったり、死者蘇生など如何に愚かなのかを語ったものだったり。

 フミーが読んだものに関しては一応日記で内容をまとめているが、どれも求めているものではない。

 ただ人を生き返らせる方法が知りたいのだ。




「司書さんは死者蘇生に関する3万5000冊の本を読んだんですよね。死者蘇生の方法知らないんですか?」


「ミーは読んだだけですからね。情報の真偽は知りません」


 図書館に着いて早々、司書さんに聞いてみたが彼女は読んでいた本から顔を上げることなく答えた。

 司書さんとは図書館に通ううちに何度か会話をしている。最初は畏敬の念を抱いていたフミーだけど、徐々に彼女はひたすら本が好きなだけの女の子だと知っていった。

 そんな彼女は会話をする時、本から顔を上げる時と上げない時がある。今回は上げない時だった。


「そっかー。じゃあ、司書さんが個人的に信憑性高そうだなと思った本ありますか?」


「……そうですね。『命の槍』でしょうか」


 続いてのフミーの質問には、本から顔を上げて答えてくれた。


「『命の槍』?」


「筆者不明な本のタイトルです。大昔にいた天使が死んで槍になって、その槍には生命を蘇らせる力あるって話です」


「わかった! 探してみる!」


「……」


 司書さんと話をするフミーを見守って会話を聞いていた父様が持っていた巻物を借りる。広げてその本の名前を探した。

 司書さんから詳しく聞いてもよかったが、自分で読んでみることにしたのだ。


「命の槍……命、槍……命の……」


 指でなぞりながら、その文字を求める。


「これじゃないかい?」


「あ!」


 父様が指差した先には確かにそのタイトルがあった。

 場所は左へ34メートル先、奥へ50メートル先のようである。


 さっそく二人でそこへ向かってみることにする。

 本棚の大きさ、設置の間隔は一定であり、加えて自分の歩幅を把握していれば、巻尺を使わなくとも自力で行ける。


「ここら辺かな〜」

 

 その辺りの本棚の場所へ着いた。

 今度は本棚の中から本を探す作業だ。


「あっ!」


「見つけたかい?」


 背表紙に何も書かれていない一冊の本を棚から抜き出したのだが、表紙に『命の槍』と書かれていた。それを父様へ見せる。

 表紙に天使の絵が描かれた白い本だ。


「読んでみようか」


「うん!」


 その本を持ち立ったまま開いた。

 

 ——本書は改訂版です。原版の出版から長い時が経ち、今の時代に通じない言葉も多くなっていたため、この時代へ合わせた言葉遣いへ修正したものとなります。


 最初に書かれていた文はこうだった。

 続いてページをめくる。


 ——今よりも遠い遠い大昔、雪が降り積もったある地に、天使が舞い降りた。

 ——その天使は少女の姿に羽が生えたような形であり、それはもう美しかった。



 そんな語りだしから物語は綴られていた。



 地上に舞い降りた天使は周囲から崇められ貢物をされるが、無表情のまま何も変わらない。天使は生物の頂点として扱われ、孤独だった。

 そんな天使はある日、一人の村人の少年と出会う。その村人も他の人たちと同じように天使を美しく思い見惚れたが、行動は違うものだった。村人の少年は天使の手を引いて森へ入ったのだ。天使は驚き、なすがまま身を任せた。

 そうして少年が連れてきたのは一面美しい花が敷かれた花畑だ。

 少年は語る。この場所を偶然見つけ、ずっと誰かに教えたかったのだと。そんな時、天使が現れて君しかいないと直感したのだと。

 少女はそれを聞いて、初めて少年の姿をしっかり認識した。彼はアザだらけで擦り傷がところ構わずついていた。

 少年も少女と同様に、孤独だったのだ。


 少年は天使に恋をし、天使も徐々に少年へ惹かれていく。


 中略。


 二人は結婚し、子供ももあけていた。幸せな生活であった。

 子供はすくすくと元気に成長し、その子供もまた結婚をし、子供を産む。

 天使とその夫には孫ができたのだ。

 天使は本当に幸せだった。地上へ降り立った最初の数千年の頃とは比べものにならないほどに。

 

 しかし、悲劇は訪れる。

 天使の夫の死だ。50歳という年齢だったが、この時代のただの人間の男でありながら長生きであった。

 その事実に天使は嘆き悲しむ。子とまだ幼い孫に心配されながら。


 夫とまた会いたい。愛するあの人と会いたい。

 そう切望しながら悲しみで自らを崩壊させ、天使は灰となった。


 ——その天使の灰で作られたのが『チョジュラスの槍』だ。


「……」

「……」


 その名称が出てきた時、本から視線を上げておもわず父様と顔を見合わせた。

 父様も驚いた様子。


「アタシたちの、家名……」


 アヤート・チョジュラス。

 フミー・チョジュラス。

 そして『チョジュラスの槍』だ。


「とにかく、先読もう」


 戸惑う気持ちはありつつ、ページをめくった。


 ——『チョジュラスの槍』 それは、死者を蘇らせる力を持つ槍だ。遺品、髪の毛、爪、その死者にまつわるものならなんでもいい。

 その死者のことを思い浮かべて、槍を振るう。その人を愛しているのならば、生き返ることだろう。

 愛する人とまた会いたいと願った天使の槍なのだから。



———



「司書さんっ!」


「どうしましたか?」


 『命の槍』を読み終わったあと、その本を教えてくれたカウンターへいる司書さんの元へ。

 いつもと変わらない様子で本を読んでいた。


「あの、どうしてこの本を……?」


 『命の槍』 一見するとそれはただの小説であり、作り話のようだった。天使なんて種族はない。架空の存在だ。


「どうして、信憑性が高そうだと思ったの?」


「それは……」


 本から顔を上げた司書さんの吸い込まれそうな大きい瞳をフミーは見つめる。

 彼女は口を少し開けたまま固まり、言うか悩んでいるようだ。


「僕も聞いていいですか。ミントさん」


「……ミーの名前知ってるんですね」


 これまで司書さんと呼んでいたフミーには初耳だった。


「覚えていませんか……。奇しくも僕が聞こうとしたことは聞けました。ありがとうございます」


「……どういうことですか?」


「昔、母に連れられここにやってきた時、紹介されまして」


 それが本当なら、司書さん——ミントさんがそのことを忘れていることになる。

 本のことならいくらでも覚えている彼女だけど、それは不思議ではなかった。異様な記憶力が発揮されるのは本に関することだけなのだ。

 フミーとした雑談の内容を数分もすれば忘れてしまうのが彼女だと、連日ここへ通ったフミーは知っている。


「……、その母君の名前は?」


「ルルーミャ・チョジュラス」


 またしても、初耳の名だ。

 フミーの祖母は、ルルーミャと言うようである。

 その名前を聞いたミントさんは、ピクっと肩を振るわせた。


「あぁ、そういうことですか。あなたたちがミーを不審に思うのも無理はないですね」


 呼んでいた本へ栞を挟み、ミントは本を閉じてカウンターへ置いた。本を持っている姿ばかりの彼女の初めて観測するその行動へフミーは驚く。


「まず、ミーはあなたたちがチョジュラス家の者とは知りませんでした。なので、その本を彼女に勧めた理由にあなたたちの出自は関係なく、ただ、……その本に書かれた『チョジュラスの槍』をミーが知っていたからです」


「チョジュラスの槍、本当にあるの!?」


 その発言にフミーはつんのめる。

 情報の真偽は知らないと言っていたのはなんだったのか。


「槍の実物を見たわけでも蘇生された人間を見たわけでもないので不確かですが、手に入れたと言った人物をミーは知っています」


「……それって」


 大きな黒い瞳孔でミントさんはフミーたちを見据えた。


「ルールー……いえ、ルルーミャ・チョジュラス、彼女は100年ほど前チョジュラスの槍を見つけたとはしゃいでここへやって来ていました」


「——!」


 それは、大きな足掛かりとなる情報だった。

 チョジュラスの槍が本当に存在するのなら、カザミショーヤを生き返らせられる。

 フミーは歓喜する気持ちが湧き、握り拳を作って震える。


「ミントさん、母さ——ルルーミャ・チョジュラスがどこにいるかわかりますか?」


「今も滞在していふかわかりませんが、『アルウェイル森林地帯のエルフの里』にいると言っていました」


 父様の問いかけに彼女はその場所を答える。

 フミーは、次にやるべきことが見えたのだった。







 そこまでの出来事と、その『アルウェイル森林地帯のエルフの里』について調べて結果をフミーは日記へ書き記す。


 ・アルウェイル森林地帯はサード大陸にある

 ・アルウェイル森林地帯はそこに住むエルフ族の管理区域

 ・かつては禁足地だったが、今は自由に立ち入り可能(森林地帯及びエルフの里を害する行為は固く禁ずる)

 ・アルウェイル森林地帯の中央にエルフの里があるがそこまでの道は何が起こるかわからないとされ、自己責任

 ・アルウェイル森林地帯はとても幻想的らしい

 ・エルフの里は和風

 ・霧がかかることが多い(迷子に注意)

 ・魔物が出現することもある

 ・また、アルウェイル森林地帯にはエルフの里以外の集落もあるようだが詳細は不明

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