↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚され少女と密室二人きり、俺が死ぬまでの七日間。そこから始まるアタシの物語  作者: うさぎさう
2章 【再会までのエンドロール】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/87

2章3話:フミーとバニーガール

 監獄を後にし、飲食店で昼食を済ませ、やってきたのは図書館であった。


「ちゃんと、静かにしろよ。ここの司書怒るとおっかねーからな」


 入る直前、立ち止まってフミーへ注意をしてきた。

 怒らせたことがあるのか、怒ってるとこを見たことあるのか、どっちなのだろう。

 言われずとも図書館では静かにするので、フミーが怒られることはないだろうけれど。


 余計なことは言わずに頷き、図書館へ足を踏み入れる。


「——っ」

 

 本棚が、先が見えないほど縦横規則的に並んでいる。

 フミーが幽閉されていたのがこの空間だったとしても読みきれない、圧倒的物量。

 本だらけの空間とは、読書家にとって夢のようだが、これほどまでだと怖さも感じる。

 それでも尚、広がる光景に釘付けになった。


 立ち尽くすフミーとは違い、迷いなく奥へ進んでいくリーゼに我に帰った。

 その足取りから、何度も来ていることは明らかだ。

 自由に見て回りたい気持ちを抑え、入り口のカウンターに座る司書さんへ会釈してから、リーゼへ着いていく。好き勝手に歩いてしまえば迷子になってしまうだろうから。


「あった」


 ある地点で立ち止まり、リーゼは小声で呟く。

 数分歩いたはずだが、すれ違った人はおらずだ。


「……」


 本を抜き、パラパラとめくるリーゼ。

 その本を横から覗き込むと、お菓子の絵が載っていた。さらに、材料や作り方も記載されてある。


「レシピ本……」


「店に新メニューをそろそろ追加したくてな。参考になるもん探してんだ」


 イマイチだったのか本を戻し、その隣の別のレシピ本を取り出しながら、フミーへ説明した。

 リーゼは喫茶店を経営している。働いたことのないフミーにとって、仕事に向き合う様というのは輝かしい。


「なんで喫茶店を選んだの?」


「んあ? ……なんでだろうな。聞かれてもわかんねーよ」


 本のページを目で追いながら、リーゼは答える。

 数ある職種の中から選んだ以上、何かあるのかと思ったがそうではないらしい。

 組織にいた理由は金と言っていた。

 だけど、森の高台にあるあの喫茶店が繁盛していうとは考えにくい。

 職業を選ぶ最大の理由であったはずのものは今はなく、曖昧に選んだ。

 そういうことも、あるのか。


「フミー、プリンとパフェならどっちか選べ」


「その二つなら……パフェかな」


「そうか」


 答えを聞いて、パフェのレシピが載ったページをじっと眺めてから、本を閉じた。

 そして、そのまま元の場所へ戻す。


「借りてかないの?」


「おおよそは頭に入ったし、必要ねぇ」


 そう言って踵を返した。感心しながら、フミーもそれに続く。


 全然本は読めなかったが、こんな空間へ足を踏み入れられただけで満足だった。

 


———



 図書館を出てからは王都内をぶらぶらと散策する。

 その最中、変な銅像を見つけた。

 兎が札束風呂に入り、ご満悦な表情をしている像だ。シュールである。

 その正面には暗い裏路地が続いている。

 二人で顔を合わせて、進んでみることを決意。

 狭い道であり、リーゼを先頭に一列で歩く。


「……ほー」


「行き止まりだね」


 しばらく歩いたところで壁が道を塞いでいた。

 凸凹も傷も一つもない灰色の綺麗な壁だ。

 この裏路地で不自然なくらいの存在感を放っている。

 そう、


「「不自然」」


 リーゼと声がハモった。


 この壁の正体、それは、魔法が一切使えないフミーですら見抜けるような魔法により作られた雑な置物である。

 魔法製の物体というのは、見た者に違和感を与えやすいと前に父様から教えてもらった。ベテラン魔法使いともなるとそうじゃない物も作れるらしいが。


「これ、魔法製の割に魔法耐性ゼロだぞ。ちょっと魔法ぶち込むだけで壊れるんじゃね?——えいっ」


 そう言って、掌でペタリとへ壁に触れると、掛け声と共に魔法の光が溢れ出す。


ドガアアアアアアァァァァァァン!


 低い鳴き声を上げながら、壁は一瞬にして崩れ、地面に落ちた残骸は霧散していった。


 スピーディーで派手な絵面であったが、早くもその先にあるものに意識が奪われる。


 ——『〈カジノ〉casino』


 金ピカの文字が掲げられた店があった。



———



 赤く長い耳に対してふわふわした丸い尻尾は白い。

 カジノにいる、兎モチーフの衣装に身を包んだ者といえば、それは一つしかない。

 フミーとリーゼを出迎えた者は、そんな赤いバニーガールと煌びやかな空間である。


「初見さんですか?」


「ああ、そうだな。ここカジノだろ? ウチ子供連れだけど大丈夫か?」


 子供というのはフミーのことか。やはり、159歳ということは信じてもらえていないようだ。

 かくいうリーゼは何歳なのだろう。

 

「年齢制限はありまんよー。辿り着いた方は基本誰でも歓迎! それが、ここのルールです」


「あの壁を壊して辿り着いた奴ってことか」


「別にー、壊さなくてもいいんですよ。テレポートで来た方もいらっしゃいますし、空からだって来れます。ただ、ある程度お客様を厳選したいので、壁は設置させてもらってますが」


 ウサ耳を揺らしながら、愛嬌を演出するかのように、自身の唇に人差し指を当てながら話す。


「それはそうと、利用されるなら説明受けてもらって、契約書にサインしてもらいまーす」


 そこからは、お金をチップへ変換する、景品が色々ある、換金ももちろんできる、店内での乱闘は禁止、と言った基本的なことを教えられた。


 二人して契約書に同意のサインをする。

 リーゼはバニーガールに説明を受けても尚、契約書をじっくり読んでいて意外にも慎重であった。

 ちなみに、ルールを破ると恐ろしい魔法の刑になるのだとか。


 フミーはお金を持ってないので、リーゼから借金する形でチップを貰う。大人になって働いた時に返せと言われたので、明日にでも働き先を見つけて返さなければ思うところ。

 だがそれも、華やかで豪勢なカジノを見渡すと考え悩むのは無粋に感じ、今は忘れることにする。


 ギャンブルの要素がある小説もいくつか読んだことがある。

 幽閉されていたら絶対できないことであり、だからこそやってみたい願望が芽生えるものだった。

 だから今、フミーはとても浮き足立ちワクワクしていた。


「せいぜいチップ0にしないようにな」


 そう言い残して、リーゼはポーカーの席へ。

 ポーカーだけにポーカーフェイス大事だと思うが、意外と表情豊かな彼女は大丈夫だろうか。


 フミーは最初に何をやるか迷ったが、ブラックジャックが目に付いた。

 カザミショーヤともやったことがあり、実戦経験がある。


「あら、お嬢ちゃん、やってくのね。ルールは知ってる?」


「うん!」


 4つある席の内の一つに座る。

 ディーラーは黒いバニーガールの女性だ。

 自分以外に座っている人がいないのだから、彼女との一対一になる。


「どれくらい賭ける?」


 リーゼから渡されたチップは30枚だ。ちなみに、リーゼも同じ数である。

 たくさん賭けてたくさん稼ぐ、そんなギャンブルの醍醐味には憧れるが、最初のうちはあまり賭けない方がいいだろう。


「5枚で!」


「りょ〜かい」


 5枚のチップを出すと、ニッコリ笑うディーラー。


 ブラックジャックを簡単に言えば、トランプの合計点が21を超えないようにしつつ21にディーラーよりも近づける。といったところか。

 カードを追加するかどうかの塩梅が難しいゲームだ。


「じゃあ、さっそくカード配るわね」




 ——1回目、初期手札が20でスタンド、ディーラー19で、フミーの勝利。


 ——2回目、初期手札が18でスタンド、ディーラー23でバースト、フミーの勝利。


 ——3回目、初期手札が16でヒットし19、ディーラー20で、ディーラーの勝利。


 ——4回目、初期手札が21でナチュラルブラックジャック、ディーラー15で、フミーの勝利。


 ——5回目、初期手札が17でヒットし20、ディーラー18で、フミーの勝利。


 ——6回目、初期手札が19でヒットし21のブラックジャック、ディーラー20で、フミーの勝利。


 ——7回目、初期手札が18でスタンド、ディーラー17で、フミーの勝利。


 ——8回目、初期手札が9でヒットし18、ディーラー19で、ディーラーの勝利。


 ——9回目、初期手札15でスタンド、ディーラー25でバースト、フミーの勝利。




 ——数回、いや数十回も続け、相変わらず賭けるチップは少ないが、徐々に徐々に増えていく。


「お嬢ちゃん、運が良いのね。……いいえ、直感かしら。一度もバーストしていないわ」


 バーストとは手札の点数が21を超えることだ。これになると、自動的に相手の勝ちになってしまう。

 だからこそ、手札を追加するかどうかの塩梅が難しいのだけど、バニーガールのお姉さんが言う通りフミーはバーストしていない。

 ヒットするかどうかは完全になんとなくの判断であるが、これが直感ということか。

 ちなみにヒットとは、追加でカードを引くことである。バーストといい用語が色々あるのが面白いところ。


 そんなこんなで、チップを100枚まで増やした。

 次はもっと賭けるチップを多くしてみよう。


「お姉さん、チップ20、ベット」


「ふーん、今さら自信湧いちゃったのかしら」




 かくして、ブラックジャックだけで500枚稼いだ。


「これだけあれば、何か景品と交換できるかな」


 増えたチップを見ながらぼやくフミーに、ディーラーのバニーガールが反応する。


「いくつかできるわ。私のおすすめは——」



———



「ああぁ……クソッ! 一回1000枚までいったのに残ったのは300枚かよっ……!」


 不満気に首を掻きむしるリーゼ。


「元手よりは増えたしいいじゃない。何か景品と交換するの?」


「欲しいもんなかったし、換金した。てか、お前こそ何か交換してたな」


「ああ、コレね!」


 手に持っていた物を掲げた。

 ディーラーのバニーガールにおすすめされ、自分でもピンときた物である。


「本……いやノートか……?」


「日記帳にするの」


 日記でそれまでの出来事を記録しすれば、再会したカザミショーヤへフミーの物語を語る時に便利だと思ったのだ。

 記憶力にも限界もあることだし、記録を残すのは大切だ。


 しかも、特別性のノートであり、経年劣化することもなく、付随している革のカバーは盾代わりになるくらい丈夫らしい。さらに、持ち主追跡機能があり、必要になった時引き寄せられるんだとか。

 さらにさらに、ページ数は1000ページで、ちょっとした辞典レベルだ。毎日1ページ書いても1000日保つ。


「今日さっそく使うんだーっ!」


 その場で跳ねるご満悦なフミーに対し、リーゼは微笑を浮かべ、そのまま二人はカジノを出た。


 昨日のことも書きたいのに、すでに今日、書かなければならないことがたくさんある。

 出来事だけではなく、感じたこと、考えたことを書き残したい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。