支配者に憧れた日
さてと、それじゃあ、アレやるか!
アレっとは、流水操作による戦闘服の作成である。
前々から試しては失敗、試しては失敗を繰り返していたが…やっと先日成功したのだ!
「流水操作発動、魔力混合開始、召喚」
すると、目の前から水が現れ、俺が紫色の光、つまり魔力をその水にしみこませると、紫に光、美しい魔力水が出来上がった。
それを自分の体に近づけるように操作し、紫色の中に星のような光を放つ粒子、つまり魔力が見える。
それを鏡のように自分の前に広げゆっくりと伸ばした腕から徐々に、黒の手袋、ショートブーツ、ズボン、白のシャツに紫色で紋章が描かれいる物、その上に色が黒の、マントみたいになっていて、丸い金属などが少し付いているロングパーカー、紫色の魔力で出来たファスナーの物だ。
なんと、水に魔力をしみこませることにより、「硬化」、水なので「変形」、「再生」、も可能となる。しかも、薄さや分厚さも変更出来る。
まぁ、服装は、本当は靴が良かったけど、水操作での作成があまりにも難し過ぎて、断念したのである。
ただでさえロングパーカーやシャツ、ズボンを作るだけでも難しかったのに、靴となると、もう疲労で作る気が起きなかった。
買えばいいが、それだと防御力に欠ける。
いつかまた作れるってなったら作りたいものだ。
何故金属が付いているか、それは防御結界の自動生成のためである。
この前、そこら辺を散歩してたら、緑色の石を見つけて採取していたのだ。
それが防御結界生成の鍵となることは知っていたが、肝心の結界魔法が使えなかったので、捨てようかとしていた所だ。
それをカモフラージュして、鉄に見せた防御石である。
この服、魔力水で出来た戦闘服のさらに便利な所は、隙間や土に水操作で染みこませて、敵が居る場合は奇襲を仕掛けることが出来る。
しかも、周辺の水は思うがまま。
支配者には持って付けの力である。
威圧感が出るために、まぁまぁかっこいい服装にしてみた。
自分では、結構気に入っている方だ。
昔、変装として設定を考えているときについでに考えた物でもある。
変装の為に!っとはいっているが、かっこいい方が支
配者っぽい!っていうのも混じっている。
それと、設定も同じような感じだ。
「よし、無事成功した」
あ、それと、しっかりと設定は守っている。
いつ誰が俺のことを見ているか分からないので、完全に大丈夫になるまでは突き通すつもりである。
まぁ、波動感知と空間感知で俺にバレない奴は居ないけど。
俺は試しに発動させてみる。
その時、ピン!っと頭の中で光りが走ったような感覚が自分を襲った。
噂をすれば影…っか。
誰か来たみたいだ。
まぁ、十キロくらい離れてはいるが…。
すると、プツリっと電源が切れたような感覚で消えた。
ん?
死んだか?
そう、これが消えるときは大体死んでいるか、瞬間移動だ。
十年間生きてきたこの世界には、 四竜騎士団 っというものがある。
何故知っているかって?
まぁ、そりゃあ十年間生きていたらこんくらいの情報は手に入る。
四竜騎士団とは、青竜騎士団、赤竜騎士団、黄竜騎士団、白竜騎士団の四つの騎士団によって構成されている大騎士団団体である。
その内の一つ、白竜騎士団がこのアトラス連合国にはいる。
そいつらがよく瞬間移動を使っているので、分かる。
どれ、死体を埋めにいってやろうか。
そうして、俺は結界魔法を使い、上空二百メートルにある飛行艇をかくし、飛び降りる。
華麗に着地を決めた後、感知した方向へ走り出す。森の木を避けながら。
まだ体はなまっちゃいないね、山籠もりしてたころが懐かしいよ。
俺は、生まれつき常人離れした力を持ってはいなかった。
だが、猫などの着地に長けている動物を研究した結果、この世界では常人でも二百メートルからの着地に成功するわけだ。
まぁ、何度も足を骨折させたけどね。しかも、この世界には「魔力」がある。その技術に加えて魔力を追加すると、千メートルくらいは行けるんじゃないか?
いつか実験してみるとしよう。
……懐かしいな。
俺は、木を避けながら思い出した。
支配者に憧れた日を。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~現世、ガヴァ六歳~
「はい、それじゃあ皆それぞれ絵を描いてください」
目の前には先生がいる。
皆はその先生を少し睨んでいる。
そう、どの学校にもいる「嫌いな先生」だ。
悠馬、つまりガヴァは、絵を描き始める。
それは「花」、悠馬は自然が好きだったのだ。
特に「風」、昔の悠馬いわく、風は、美しく、神秘的な物だという。
「あら、悠馬君、それはなぁに?」
「お花さん!」
そこには、灰色で描かれた花びらや、肌色で描かれた花びらがある花の絵。茎の部分は赤色、土は黒色で描かれていた。
「悠馬さん?ここは違う色ですよ?もう一枚紙をあげますから、書き直しなさい」
女教師は少し強めの口調で言葉を放つ。
「やだ!これが良い!」
悠馬は絵をぎゅっ!っと抱き閉めている。
「チッ!」
女教師はその絵を取り上げると、ビリビリと破り、床に放った。
「悠馬さん?「ルール」は、守りましょう?ちゃんとした絵を書きなさい!それじゃあ将来、捻くれた大人にありますよ?」
悠馬が自分が描いた絵は、汚らしいが、自分が思う理想の花だったのだ。
それを「ルール」っという物に縛られ、拘束された自分に腹を立てた。
悠馬は思った、「ルール」から縛られない人になりたい…っと。
縛られない為にはどうすれば良いのか…っと。
家に帰り、「ワールド・オブ・ルーラー」っというアニメを見ていると…。
「私は支配者…何からも縛られない者である!」っという言葉で思いつく。
小学二年生の頭を最大限に回転させ、アニメで聞いたヒントを元に導き出した答えは…「支配者」になることだった。
かっこいい存在になりたいっという一心だった、そして、それより遙かに上回る事は、縛られない存在になりたいっと言うものだった。
ヒーローや、主人公、悪役を上回る、何からも縛られないかっこいい存在、それが悠馬の求めた者だった。
その答えが「支配者」だったのだ。
そこから必死に努力を重ねた。
悠馬が最初に取り組んだのは「知識」、塾を毎日通い、中学生になって順位発表は毎回一位。
生徒会長になり、権力を少しは手に入れた。
そこで、少し遅れてやってはいた、「力」、それは、柔道や、剣道、弓道から空手、武器がなくても戦うことが幅広く出来る日本の武術に、悠馬は興味を示した。
弓道は銃を使わなくても簡単に作れる弓矢を使う、やり始めた理由である。武装集団に挑めるように、剣道も習得した。
だが、時の流れは残酷だ、成長するにつれ、悠馬は世界をしった。
レーザーガン、イージス艦、戦闘機、戦車や核爆弾、そんな物で対抗されたら勝てない。
だが、悠馬の気持ちは押さえきれなかった。ただなるだけでも良いから、支配者になりたい…っと。
だが、そんな物では無理だ。そんな考えから抜け出すため、高校二年生の夏、山籠り修行をしていると、転機が訪れたのだった。
それは、「輪廻転生」、より強力な力を得ることが出来る異世界、そこで、悠馬は決心した、必ず、何からも縛られない世界の支配者になると。