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縛られない支配者になるために…!  作者: 八風ゆず
第三国血戦
29/31

天下天上作戦発令

 

コトコトと階段を歩く音が鳴り響く。

俺は艦橋へ登り、カノープスに呼びかける。


「カノープス」


カノープスはびっくりした様子で俺の下へ走る。

主人が申し付けてきたのだ。当然である。


「ど、どうされましたか?な、なにか不服になるような事が……」


カノープスの言葉を遮り、俺は命令をだす。


「いや、訓練は中止だ。実戦になるかもしれない」


カノープスは驚き、そこにいた全員も驚いた。

訓練が中止という事について、何を考えているのか分からない。

全くの意図が分からない。

五芒星共々システムローズオーバーローズ国民、ノートの導く道を歩んでいくだけである。だからノートの意図、意志を読み取り手助けをしなければと考えているが、わからないのだ。


天才的な頭脳、最強に近き力をもつノートは、世界を一人で手に入れることも容易いだろう。

だが、それでも自分達を拾ってくれた事は、自分達を認めてくれた証である。主に認めてもらうため、捨てられないためにその期待に応えたいが、分からない。 

それでも、自分たちを切り捨てない心の広さには、感動の感情が湧いてくる。


カノープスは必死に考える。

(主君様は何を………。分からない……、けれど、命令は絶対。真相は後に分かる筈……この前のファートルド事変の様に)

カノープスは跪く。


「承知しました。針路の方はどのように」


「アトラス方面へ向けろ」


「はい。わかりました。面舵いっぱーい!」


すると大和が左手に針路を変えた。

それと同時に、風を切るプロペラ音が耳に届く。


「来たか……」


超大型連合航空艦隊。通称「王城鷲(オウギワシ)

鳳翔

赤城

加賀

龍驤

蒼龍

飛龍

瑞鳳型2隻

翔鶴型2隻

飛鷹型2隻

海鷹

神鷹

雲龍型6隻

大鳳

信濃

龍鳳

千歳型2隻

大鷹型3隻

伊吹

生駒


である。


航空機は魔力操作で、無人機でも操作が可能だ。

なので、航空戦闘に関しては死者はそうそうでない。

俺は外に出てスピーカーを魔力で作り、呼びかける。


「オウギワシに告ぐ、これより訓練は中止、実践へと移行する。各艦の艦長は花王に帰港の後、すぐに作戦会議を実施する」


……こういうの良いな。

今思えば、支配者らしい振る舞いをあまりしてこなかった様な……。

ま、これからやっていこうか。

俺はポッケに手を入れ、艦橋の中に入る。


「お前達はアトラス沖にて待機だ。俺は艦載機を使わせてもらう」


カノープスは、敬礼をする。


「分かりました。三竜、主君様の準備を」


カノープスが三竜の方を向いて言う。

三竜は敬礼をする。

だが、青竜は何故か地面に座りながらだ。


「「承知しました」」

「は〜い!」


俺達は左舷甲板へ降り立つ。

そして、コトコトと音を立てながら艦載機発射機の所へ向かう。

全速力で航行する大和は、高い飛沫を上げながら威厳を纏い突き進む。

大空を飛び回る無人の零戦は、大和に仕えし鷹のように大和の天空を守る。後方にはオウギワシがずらりと並んでいる。

晴天の空に浮く一つの太陽が、大和につけられた、黄金のシステムローズの紋様がキラリと照らす。

涼しい風が三竜の軍服と、ロングパーカーのマントの様に長い部分がパタパタと音を立て靡く。


艦載機発射機に到着した俺たちは、魔力水で艦載機を作る。

三竜が発射機に艦載機を設置する。


「それでは、いってらっしゃいませ」

赤がそういう。


「あぁ、ありがとう」


俺は窓をスライドさせ、操作機を握る。

勢い良くガチャン!っと音を鳴らし、艦載機は発進する。

俺は大和と零戦達の間を抜け、オーバーローズ第一港。花港へと向かう。

太陽の下を艦載機が飛ぶ。

大洞窟を改造した造船所、港には、かつての大日本帝国所属の艦艇達がズラリと全て並んでいる。

潜水艦、大和を除いた戦艦、駆逐艦、重巡洋艦。

そして、後方からやってくるオウギワシ全空母艦隊。

俺は艦載機を水着させる。


それを気付いた一人の組織員が急ぎ準備し、クレーンで艦載機を持ち上げ、降ろす。

俺は窓をスライドさせて外に出る。

少し伸びをしていた時だった。


「あらぁ〜、ノート様じゃなぁい」


大人気を帯たお姉さん系の声が聞こえる。


うっ……この声は……。

俺は、すぐに嫌な予感を察知した。


「お会いできて嬉しいわぁ」


彼女の名前はカレナ・フェリアス。

コイツもナイントルクの一人で、厨房管理者。

コイツの面倒な所は……。


カレナがスンスンと俺の香りを嗅ぐ。

「あらぁ……?この匂い……五芒星のカノープス様と三竜の御三方の匂い……ノート様ぁだめじゃないですかこんな匂い……まぁ、五芒星の方々はまぁ五億歩譲ってセーフとして、許せないのは三竜の方々。私でも勝てるでしょうか……?」


段々と早口になるカレナに、俺は少し鬱陶しさを覚える。

ウザさならシルフィードがダントツだが、鬱陶しさでシルフィードに勝る奴が現れたのは驚きだった。


見ての通りコイツ面倒な所は、ヤンデレ気味た性格の持ち主のところだ。コイツを相手にするのが一番嫌いだ。


「てか何でお前がいるんだよ。厨房は?」


「私はさっきまで花港の警備や艦艇整備をしている方々に食料配給をしたいたところです。でもぉ、ノート様が来るのが見えたので急いで、お急ぎで参りましたぁ」 


頬に両手を添えながらカレナが言う。


「別にこなくていいよ」


「あぁ///そんなノート様///私をあしらわないでもらいませぇ〜」


「…………はぁ」


俺は思わずため息を付く。 

まさか、ここで会うとは思ってもなかった。


俺は変な声を出しながらハートを飛ばすカレナをいない者としながら会議室へ進む。

扉を開け、巨大な机がある中、もう一つある小さな机に、真ん中へ向く椅子に座る。

すると、25名の艦長達が「失礼します」と言いながら座る。

一人の美しい白い髪色、赤と青のオッドアイを持った白竜眷属の女性が縦長い机の、俺が座る椅子の目の前に座る。


「ところでノート様、実践とは……?作戦はもう立てられたのですか?」


オウギワシを代表とする彼女はレイラ・ホワイト。

大型航空連合艦隊の旗艦信濃の船長である。


「まずは現在、我等が連合艦隊旗艦、戦艦大和はアトラス沖にて待機中である。今から説明する作戦は私が作り上げた戦略(シナリオ)だ。意見があるなら言ってくれていい。まず大和による艦砲射撃を行う。その後、ナスカラディア周辺に爆撃し、他の街、エルアディア、ハルイディア、アウトディアからの援軍の停止をさせる。その次は、全世界に我々という絶望(存在)があるということを知らせてやる」


その最後の言葉を聞いた瞬間、全員が驚いた。

そう、これはつまり、システムローズが本格的に世界征服に向けて歩み出すということ。影の裏にもう姿を暗ませなくても、我々という存在を証明し、魔王への復讐、アトラス、ユラーザの支配統一を表から出来るようになるわけだ。

主が今まで動かなかったのは、この艦隊や戦車を整えるためだろう。


「や、やっとですか!?」


レイラが立ち上がり声を上げる。

歓喜の声が次から次へと上がってゆく。


「静まれ」


俺の一言でハッっとし、椅子に座る。


「続きを言う。ユラーザには私の結界を込めたアーティファクトを使い、他国との通信などを完全に絶てる。次に我々の技術の端くれを魔国とアトラスに、渡す。そこで我々の艦隊などを使い、この戦争に終止符を打つ」


「はい!」


俺が言い終わると、高く可愛い声で、子どものような犬の獣人が小さな手を挙げる。

アイツは確か……瑞鶴の艦長だっけ。


「二つ質問があるのですが、よろしいでしょうか!」


「あぁ、構わない」


すると、少し目をウルッっとさせ言う。


「ユラーザの他国との関係を断つとは、どういうことでしょうか!」


「ユラーザは最近、魔国侵攻の準備を固めていると聞いた。我々が叩く魔国を横取りされたくはないだろう?」


そう、これはある意味彼女達、彼等の心理操作だ。

魔国への憎しみが強いこの組織員国民達は、自らの手で魔国を滅ぼしたいだろう。それに、我々が魔国を滅ぼすと、ユラーザだけでなく孤立国家日国にも名を轟かせることが出来る。

俺達の力を世界に知らせることで、国が何処にあるかも分からない俺達に恐怖し、支配統一の抵抗を減らせるって訳だ。


「そ、それじゃあ、技術の端くれを何故渡さなければいけないのですか?」


「私が望むのは完全なる相手の降伏。ワザと資材を使わせ、抵抗を完全に諦めさせ、無条件降伏をさせる」  


すると、瑞鶴の艦長は泣きそうな顔で敬礼しする。


「あ、ありがとう御座いました!」


「他に意見がある者、反対の者はいるか?」


問いかけると、皆が首を小さく振る。


「それでは、この作戦を実行いたします」


レイラが代表として言う。


「あぁ頼む」


「作戦名は何に致しましょう」


背中を向ける俺に対し、レイラが問う。


作戦名。そうだな〜。


「……この作戦を『天下天上作戦』と呼ぶ。弱き(天下)の者を我等強き(天上)の者が完全に支配する作戦だ」

   


かつて、世界がシステムローズに恐れた事を記した深淵の国の逸話の始まりは、ここから始まった。

そう、始まったのだ。

悪夢が、絶望が、恐怖が世界を支配する時代が。

なんら変わらない生活を送る背後には、奴等がいるという恐怖を、絶望を感じながら過ごす悪夢の日々が始まった。

人々はいつか、暗黒の時代とこの時代を呼んだ。



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