表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イチャつくのに邪魔だからと冒険者パーティ追放されました!~それなら不労所得目指して賃貸経営いたします~  作者: 桃月 とと
物語の隙間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/130

物語の隙間話14(SS) 注意喚起の掲示板

 エディンビアの冒険者ギルドの掲示板には、いつも壁一面にギッシリと張り紙がされている。依頼だけではない。冒険者同士の伝言や仲間募集、なんなら戦果報告なんてのもあり、多くの冒険者がその前を入れ替わり立ち代わり眺めていた。


「もう! だーれも『注意喚起』の内容確認してない!」


 ギルドの受付嬢はその様子に憤っていた。横で聞いていたゲルトも頷きながら、


「ホント、どうすればいいんだろう……やっと治療室も余裕がでてきたのになぁ」


 小さくため息をついていた。

 ギルドが掲示している注意喚起の内容はこうだ。


【ダンジョン長期滞在後は、出口付近での休憩を推奨します】


 最近、ダンジョンへ長期間潜った後、地上に出た後で体調不良を訴える冒険者が相次いでいるのだ。ギルドが独自に調査したところ、所謂山酔い(高山病)に似た、『ダンジョン酔い』だと判明した。ダンジョンは異空間と繋がっているため、さあ帰ろう! と慌ただしく地上に出ると急激な変化に体がついていかないのだ。


「他のダンジョンでは見られないってことは、やっぱりエディンビアのダンジョンは特殊なんですね」


 ここまで大規模ダンジョンは世界でも稀なため、ダンジョン酔い自体知らない冒険者も多い。

 

「個人差があるとは言っても、最深階層まで行ってる高位冒険者でもなっちゃうこともあるのになぁ」


 まさに高山病と似た症状も多く、どうしようもない頭痛や吐き気に、シクシクと泣き言をいう筋骨隆々の男達をゲルトは最近いつも相手にしている。治癒魔法は効きづらいという特徴があるが、高山病とは違い死の危険はなかった。数日横になれば自然と治るため大きな心配はないのだが、毎日うめき声を慰める身になれば、気も滅入るというものだ。


「どうしたの? ため息なんてついちゃって」


 そこにノコノコやって来たのはトリシアだった。ギルド職員の目が四つ、キラリと光る。


「いいとことに来てくれました!」

「え? うん……だって、治療室またパンパンなんでしょ? ダンジョン酔いで……」


 彼女はピンチヒッターとして呼ばれたから来たのだ。これでは他に大怪我をした患者の治療に支障がでそうだからと。

 もちろんトリシアは、今いるダンジョン酔いの冒険者達を治療後、ゲルトや他職員に泣きつかれ、解決策を思案することになる。

 だが、いつもなら泣きつけば何かと考えてくれたトリシアだが、今回はいつもと様子が違った。


「いや、読まない人は読まないからどうしようもないよ……」


 言葉に覇気がない。すでに諦めているような顔だ。それでも何とか、ということで……。


「今の文章だとわかりづらいから、短文にして……文字の大きさ変えるとか、絵を描くとか、真っ赤な字で書いてみるとか……かなぁ」

「なるほど! やってみます!」


 自信なさげなトリシアをよそに、ギルド職員二人組は期待に満ちた目をしていた。


(効果あるかなぁ……)


 あっても誤差の範囲だろうなぁ……とトリシアは遠い目をしていた。なんせ彼女も冒険者の一員。彼らのことはいつも身近に見ている。冒険者の大半は『取扱説明書』を読まずに道具を使うし、『利用規約』なんて読まずに同意ボタンにチェックを入れるタイプだ。


 案の定、トリシアはその後もちょこちょこと、ダンジョン酔いの治療の助っ人としてギルドの治癒室に泣きつかれた。


「なんでぇ~!?」

「立ち止まって見てくれる人は増えたのに!!」


 ゲルトも受付嬢も憤りを隠せない。


「自分だけは大丈夫って思ってるんじゃないかな~。命に関わるわけでもないからねぇ」


 危険な魔物や植物の情報はそれこそギルドが全容を把握するより前に、冒険者の間に広がることも多い。もしくは大きな金銭が絡んでくると、冒険者はこぞって情報収集を始める。今回のものは、どちらにも当てはまらなかった。


「こうなったら……!!」


 意地でも注目させてやると、職員二人の瞳は燃えていた。


 【まだ知らないの?】【放置すると……?】と、不安を煽る文言をでかでかと書いてみたり、

 【今だけの特別情報!】【異変が確認されました!】と、何とかその下にある文字を読ませようにしたり、

 ありとあらゆる場所に掲示をし、依頼の受注や報酬の受け渡しの際に口頭で注意を促したりと、力の限りを尽くしたが、結局効果はなかった。


「やりすぎて逆にいつもあるやつだ~ってくらいにしか認識されなくなってるぞ~」

「うぅ……」

「途中からそんな気はしてましたぁ……」


 アッシュも苦笑しながら若い職員を労った。彼も現役時代が長かっただけに、冒険者の性質はよく理解できたのだ。


(みーんな、脳内広告ブロッカーが稼働しちゃってるわねぇ)


 すでにトリシアも、何人このダンジョン酔いを治療したかわからなくなっていた。ただ一度治療を受けた冒険者が二度目の治療を受けることはなく、長期間ダンジョンに潜った後は、言われた通り出口付近で休憩をして地上へと上がったのだ。


 結局、冒険者達は身をもって学んでいった。それぞれがそれぞれにダンジョン酔いを経験し、『ああこれがあの掲示板が言いたかったことだったのか』と、頭痛と吐き気で半泣きになりながら思い出したのだった。


「痛みなくして得るものなしってやつかぁ」

「痛い目みる前に……って思わないのかしらっ!」

「次はもっとうまくやろう」

「そうね。今回の件、まとめて皆に周知しましょ!」


 エディンビア冒険者ギルドの掲示板には今日も工夫を凝らした【注意喚起】が張られていた。誰に読まれるわけでもないが、確かに冒険者達の目の隅には映っていた。


 ギルド職員と冒険者達の終わりなき戦いはまだまだ続く!

ルークとノノとアッシュとチェイスは利用規約もちゃんと読むタイプです。

トリシアは状況によります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ