27:はじめての肉の刀(きゃ~!?)
「卑怯赤ちゃん! 邪悪乳飲み子! オレはお前を認めないっ! お前みたいな勃起も出来ないガキに男らしいイラガ師匠が負けるわけないんだ!」
「ふ、深谷ユウくんっ、頼みますから試験を進めてくださいよぉ!?」
喚く青年ともう泣きそうな監督代行のメガネさん。
いやー思わぬ因縁ありでとんでもないことになっちまったなぁ。
『ぶほほッ、ウケるぞい!』
「かれはじゃい(笑い事じゃねーぞジジイ)」
唯一、リモート見学の土御門爺さんだけは画面内のベッドで笑い転げてた。
あ、ナースさん来た。
病院で騒ぐなと怒られてしょげてる。
「はぁ……マジでお願いしますから深谷くん、二次試験を進めてください……!」
「ふんっ、いいだろう」
俺を睨みつつ頷くと、彼は全身に呪力を滾らせた。
なかなかの圧を感じるな。
「五大技術のうち、オレが得意とするのは『武装強化』だ。おい監督代行、その腕前をどう推し量る?」
「はっ、はい。『衝撃強化』試験と同じく、召喚した大岩へのダメージで強化度合いを見ます」
再び呪符を巨大岩に変えるメガネさん。
たしか舞鶴マジリさんってギャルっぽい子が『衝撃強化』で放った一撃じゃ、岩は半ばまで抉れてたっけな?
「ちなみに、使用する武装はこちらで用意させていただきます。武器の性能で差が出てはいけませんから」
「ちっ、道理だな。我が愛刀の出番はお預けか」
彼が腰の刀を撫でると、ブブッと一瞬震えた気がした。
バイブ刀か?
「同じ長さのものを用意しましょう。“創造、戦乱、我が統べるは緋の渚”」
メガネさんの手に刀がポンと現れた。
さっきから岩とか出してることといい、この人の呪法か?
「ではこちらを」
「うむ」
刀を受け取る深谷くん。
彼はさっそくその刀身に呪力を流した。
『武装強化』。
呪力の持つ“呪い傷付ける”という効力で、概念的に相性のいい『凶器類』を強化する技術だ。
「呪力装填完了。ではいくぞッ、はぁ!」
瞬間、ズパァンッという音が激しく響いた。
深谷くんが一気に刀を振り下ろすや、大岩が真っ二つに斬れたのだ。
「おっ、おぉ、これはすごい。刀の届かないであろう部分まで切れている」
「斬空波を起こしたからな。切断力を研ぎ澄ませればこの程度たやすい」
どうやら深谷くんはかなりの使い手みたいだ。
なんか師匠だっていうイラガより強そうじゃない?
「ありがとうございました、合格です。では二次試験、最後に66番の大文字ウタくん。お願いします」
「ぷり(うす)」
さていよいよ俺の出番だ。
「呪力操作五大技術のうち、どれを見せてくださいますか?」
うーんどうしよ。
俺的には『反発強化』が自信アリだが、それだとミズホに拉致られたモモコさんと被るしな。
それに万が一失敗して岩巨人に潰されるのは嫌すぎる。
というわけでここは、
「ばいしょうきん(『肉体再生』で行くとしよう)」
平和的な技でな。
つーこいでホイッ、
「うわっ!? ……って、あれ、全身が軽くなってる!? クソ上司にやられた足の水虫も消えてる!?」
さっそく監督代行のメガネさんに『肉体再生』だ。
明らかに疲労困憊だった身体を治癒。
足のほうもどうにかしておいた。
「これは『肉体再生』ッ。五大技術の中で最も高難易度な技じゃないですか……!」
「なっ、赤子の身でその技が使えるだと!?」
驚くメガネさんと深谷くん。
呪術に精通してるっぽい二人がこんな反応するあたり、やはりかなりの高等技術らしい。
「繊細な呪力操作イメージが問われる技です。実力者だろうが、自己治癒すら出来ない者も多い。なのに他者をあっさりと癒すとは……合格です。いや、おかげで本当に身体がすっきりした」
「しゃざいかいけん(アンタには迷惑かけちゃったからな)」
元気になったようで何よりだよ。
「みなさまお疲れ様でした。二次試験は全員突破です。それでは最後に三次試験、みなさまの『呪法』を見せてください」
おー最後はいよいよ呪法のアピールか。
「評価方法は二次試験と同じです。攻撃系呪法などなら巨大岩への攻撃、防護系呪法なら岩石兵の一撃を受け止めてもらいます。その他概念系呪法の方は、別途こちらに申し出てください」
ふむふむなるほど。
俺の今の手持ちは『獣身呪法』と『破砕呪法』。
どちらも攻撃系に当たる感じかな。
じゃあ岩石どつくかー。
「おい赤ん坊」
とその時。
深谷くんが、腰の刀に手を添えながら話しかけてきた。
なんすか?
「一人ずつ呪法を見せていくのも時間がかかるだろう? ゆえにここは、監督代行殿のことも考えて」
そして、彼は刃を抜いた。
漆黒の刀身に目玉の浮かんだ『肉の刀』が露わになる。
「時間短縮だ。互いに呪法をぶつけ合ってみないか?」
メガネさん「 普 通 に 試 験 受 け て く れ ! 」
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