第39話 全陣営大流血覚悟ノ告白
【次男と三女と五女の場合】
テレビにて大統領府の記者会見の様子が流れ、人造人間たちと面談しに国公党本部の応接室に来ていた年寄りの国公党の議員たちがあ然とする。
「わ、若手の議員どもめっ! アイコクを勝手に持ち出しおって!」
議員のひとりがそういった憤りの言葉を【兄妹たち】の目の前で吐いてしまう。
「それは、どういう発言ですか?」
【次男】ファングがすかさず【四男】をモノ扱いした言葉を逃さず、鋭い指摘を入れる。暴言を吐いた議員は、しまったというような顔でソファに腰掛ける。
「だが、アイコクは我々の命令をよく聞く。そしてアイコクに命令して良いのは国公党の中でも偉い者だけのはずだ!」
と、他の議員が人造人間の面前を憚らずに叫ぶ。だが、ここにいる三人の【兄妹たち】は真相をよく知っている。
「今日、会ったのはですね……、一緒にこの記者会見を見てもらいたいからなんですよ、国公党のみなさん」
【三女】ティエルがそう言う。そして、記者会見が始まる。
【長男と四女と四男の場合】
人造人間の【兄妹たち】三人が並んで立ち、カメラのフラッシュを浴びる。今日集められた記者の大勢は、何の記者会見なのか分からず困惑した顔つきでいる。
【長男】ファストが前に進み出て、マイクをONにする。
「今日集まってもらったのは、人造人間に関する重大なふたつの事件に関してお話するためです」
記者たちがどよめく。人混みの中で、「最近なにかしたんだ?」「さあ、特に何も無いと思うけど」みたいな会話が数多く繰り返されている。
「まずはここにいる【四男】についてお話します。彼は、国公党によって性格を書き換えられ、国公党の操り人形にされてしまっていたのです」
途端に記者会見に集まった者たちがどよめき、ファストの声がかき消されてしまう。
「静粛に!」
司会が叫んで皆が静まり、ファストは続ける。
「【四男】が生まれる前、国公党はミルバル博士に対して極秘情報の流布をちらつかせて脅迫を行い、彼が【四男】を洗脳するよう仕向けていたのです。これが証拠音声です」
ファストが録音マイクを取り出し、再生する。
『次に生まれる人造人間を国公党の言いなりの人形にしないとロテの秘密を流布し、お前たちと人造人間の地位を失墜させてやる。どうする、お前は』
『くっ……。従うしか、ないのか』
再生が終わると、ファストは話を続ける。
「そして彼はこの一年間、国公党からモノ扱いされ、酷使されていました。これが証拠映像です」
スクリーンに映像が映る。そこには【四男】の頬を強くつついたり引っ張ったりする国公党の議員たちが映っている。他の場面では蹴られたり、殴られたり。皆が、【四男】のことを明らかにモノ扱いしていた。
「休む暇もないほど彼は働かされ、その合間合間に虐げられてきた……! これが国公党が【四男】にしてきた仕打ちです!」
ファストが言い切って、しばしの沈黙が場を包み込む。次に【四女】エルカレと【四男】が前に進み出る。
「最も、洗脳それ自体は私がさせませんでした」
エルカレがマイクを手に話す。
「ミルバル博士が洗脳プログラムを前に思い悩んでいるところを私が見たときに、すかさず”ダミーデータ”を仕込んだのです。【四男】の自我は残したまま、外からは【四男】が洗脳されているように見せかける。【四男】はいつも演技で洗脳されているように見せかけていた。でも、もう今日から喋って良いんだよ」
エルカレからマイクを譲られ、【四男】が話す。
「……やっと、これで解放される……! 僕はもう人形じゃない……!!」
人造人間に関わる重大な事件のひとつめはここで話し終わる。しばらくの間ができ、記者たちが互いに感じたことを話し合い、話の整理をしている。
【次男と三女と五女の場合】
テレビを見た国公党の議員たちが顔を紅くして立ち上がり、応接室のテーブルを蹴飛ばしていた。
「はっはっは、やってくれたな!!! では、前にも言った通りロテの秘密についてばらしてくれようぞ!!! これで貴様ら人造人間と興国党は終わりだ!!!」
「無駄だよ」
あくまでも冷静に落ち着いて、ジルカレが言い放つ。
「どういうことだ! そんなわけないだろうが!」
「だって、今向こうのあそこでお兄が全部話しちゃうもん」
ジルカレがテレビを指差す。そのテレビではファストがマイクを手に口を開こうとしている。
【長男の場合】
記者会見の場にて、【長男】ファストが口を開こうとしている。
「そして、もうひとつ。我々人造人間は、あなた方に謝らなければいけないことがあります。2年前の人造人間製造センターを襲ったテロについて、そして我々が隠してきたことの全てをお話します」




