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培養槽の兄妹たち  作者: 観測者エルネード
人造人間、兄妹たちの章
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第17話 【兄妹】会議 さぁ次のステージへ上がろう、人造人間諸君

【兄妹たちの場合】


 夜が明けた頃に兄妹たちは泣き止んで、眠りについたのだった。皆は昼から午後くらいにかけてそれぞれが起きる。差し入れられた新聞で、昨日の事件が現実であったと再認識する兄妹もいた。

 夕方になって、夕飯ついでにみんなが集まる。【次女】を除いて。


「センターに戻れるのは2週間後になるらしい」


 ファストがそう伝える。


「なんだ、すぐに帰れるのね。てっきりお引越しが必要なのかと思っちゃった」


 と言うのは【三女】ティエル。


「ティエル、ドゥーレはまだ精神を病んでるのか?」


「うん。ロテに利用されたと知ってから後悔がもっと深くなって、まだまだ立ち直るのは時間が必要みたい」


 その日の晩餐は静かな晩餐であった。たまにしか会話せず、ただただみんなが黙々と食事をしていた。みんなが食べ終えたタイミングで【長男】ファストから新たな発表がある。


「これからは僕たち兄妹の情報をもっとオープンに開放する方針に変わった」


 テロを受けて、世論は一変した。今までは反対派から人造人間たちを守るためにという方便で情報を秘していても認められていた。だが人造人間ロテがテロに参加していたことによって、世論の関心がいっきに人造人間たちに向けられた。いわば、人々が監視するために情報を公開しろというものである。


「もちろん【長女】は今まで通り隠し通して誤魔化す。センターの地下に場所を移して、そこを極秘区画とする。だがそれ以外はオープンになる。君たちにもこれからは働いてもらう。人造人間の地位を、人々との触れ合いの中で高めていくんだ」


 これから新しい環境がやってくる。兄妹たちみんなに共通しているのは、その新たな環境に対して少なからず戸惑いや不安があることだった。


「差し当たって、明日大統領が来る。そのあとは、君たちが考えて行動するんだ」


「それって、お兄が今までひとりで頑張ってきたことを私たちもやるということだよね……?」


 【五女】ジルカレの問いに【長男】ファストが、こくり、とうなずく。


「そうだろう。あるいは、もっと大変かもしれないな。いずれにしても、この2週間だけが君たちの休める最後の期間だ。それぞれ、よく考えて準備してくれ」


 ファストは晩餐の席を立ち、彼の部屋へと戻る。その場に残された【兄妹たち】はお互いに目配せをし、不安な表情を隠しきれないでいる。

 パン、と【三女】ティエルが手を叩く。

「いいじゃん、私たち人造人間が人間に取り入るチャンスだよ。マイナスからのスタートだけど、頑張ろ!」

 叩いた手を震わせながら、笑顔で励ますティエル。内心では不安であるのだが、彼女なりに【兄妹たち】を元気づけたいと思っての行動だった。

 彼女に励まされてか、【兄妹たち】の表情が少し明るくなる。その日の夜はみんな、昨日よりも少しだけ安心して眠ることができた。




 そして、次の日。

「ねぇねぇ、あなたが人造人間っていうやつでしょ!」

 廊下で栗毛の謎の少女がジルカレに呼びかける。


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