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余震

 余震


 ある日、校区付近に震度3の地震が起きた。


 私たちは、避難訓練で練習したマニュアル通りに、退避をおこなった。

 ここの生徒は無言すぎて、ある意味優秀だ。


 今回の地震はマグニチュード4.2、震源の深さを20キロと言う事だったが、気象庁は今回の揺れは余震の可能性があると発表している。


教室に戻ると、まだ余震の段階という不安でざわついていた。私自身はそれほど気になってはいなかった。


 私に気づいた優君が、慌てて寄って来た。何が言いたいのか顔に書いてある。

「ねえねえ聞いた?  妃咲ちゃん。 今回の地震ってまだ予兆の段階だってよ?」


 冷静に見えている私を、せかすように焦った態度をとる。

「そう? 余震っていうことはこの先、大きな地震がくるってこと?」


「そうさ、間違いないよ。やっぱり恐いよね」


「そうだけども私はそれほどなかったわ、だって震度3ぐらいの地震だったから。でもこの地震がもう少し続いたら、その時は大きな地震の予兆かもね。

「やっぱりさきちゃんは強いな、尊敬するよ」



 妃咲は自宅に帰ると、今日の地震のニュースをテレビでやっていた。

 新しく引っ越していた賃貸マンションはおもいのほか広くて清潔感があった。


 父は転勤族で持ち家を建てるのは難しい。おかげで私も転校で振り回されている。今日も父は仕事でいなかった。


「妃咲、夕食済んだら片付けといてね」

 外出の支度をしているのだろう。リビングから見えない所から母の声が飛んでくる。

「うん」


 まだ夕方6時前だったが、早めに用意してあった夕食は冷めていた。私は夕食を早めに済ませようとしていた。


「ごめん、温めなおしてね。じゃー行ってくる」


「行ってらっしゃい」


 顔を合わせること無く出ていく母の雑音が玄関ドアの閉まり切る音で終わった。


 物静かな空間の始まり。


 急に、昼の地震の事を思い出した。


 やっぱり余震だったのかなぁ。


 予知出来たらなあ~。


 ん! 予測出来るのか? あのコインで。

 先の事なんて、わからないはず。

 地震とかは、なおさらの事。


 妃咲は、電子レンジに入れたスープを温め過ぎていて、慌てて出そうとすると熱くて持てなかった。


「あちゃー、しまった」


 テレビでからは、コメンテーターが「気付いてからはもう遅い」と、発言していた。


 うん、いけるかも知れない。

 大丈夫さ、真奈ちゃんには話せばわかる。


 また、私の暴走が始まった。



 

 翌日学校に行くと、早速優君を探した。


「どうした妃咲、今日はなんか雰囲気違うな!」

 海斗がいたが優君は近くにいない。


「ねえ、優君は一緒じゃないの?」

「なんで? あいつは体弱いから、今日は風邪で熱出して休んでいるよ」


 私は、昨日と違って、妙に焦っていた。

「そうなんだ、お大事にだね」


「あいつ、また何かやったのか?」

 海斗の表情に力が入ってきていた。


「いいや、違うよ。今日は私の方が用事あったの」

「妃咲が学級委員長なら、優が何か問題があって動くにしても、妃咲の用事じゃね?」


 まあまあ、そんな時もある。

「いや、私がちょっと聞きたい事があったの」


「ん、どうした? 俺も聞いていいかな?」

 海斗は優君がいない時に限って、喋り方も柔らかくなる。どっちが本当の海斗なんだろうか。


「いいよ、海斗も聞いて欲しいの」

「わかった」

 何故か声が静かになっていく。


「優君のコインの話、何かを予測出来ると言ってたよね?」

「わかったぞ、地震か!」


 さすが、海斗は頭の回転が速い。


「そそ、本当にこの間の地震が余震で、未来に本震がきたらと考えると」

「先に、知ってた方がいいと」

 海斗がやる気になって来たみたいだった。


 しかし、4人集まって、未来の予測をする光景を想像すると、こっけいだし、そもそもコインの力なんて、そんなにも信じていない。

「でも、それを知って、私たちが、何かできるのかなあ?」

「そう言われると、そうだけど、少なくとも俺たち4人は安全な場所にいられるんじゃね?」

 海斗の考えは、とても合理的だった。


「そうだね!」

「そうと決まれば、あいつが出てきたら早速始めようぜ、でもこの話は他に言わない方がいいかもな」

「うん、私もそう思う」


 話に夢中になっていたが、途中から気になっていた。誰かに見られている気がした。

 振り向くと、他のクラスのメイサちゃんが廊下を通り過ぎって言った。


 メイサちゃん。メイサちゃんなら教えてもいいかも。

 



 午後の授業も、サラサラと進められ、他の生徒も質問すらしない。私から見たらみんなマネキンのようにしか思えない。人形やロボットと言うよりも、色がなく真っ白の個性も何もない、単なる物体だった。


 それに加え、きょうの海斗は優君がいないので、いつになく、とてもおとなしい。

 私はここで何をすればいいのだろう、何を演じればいいのか。


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