電波くんと会話したけどやっぱり電波だった
2022.6/27
不揃いの部分を揃えました。
内容は変えていません
電波くんと呼ばれる同級生がいる。
無表情でガタイがよく、なんとなく恐くてほとんど話したことはなかった。
接点もないし変な人がいるんだな、くらいだったのに……
「電波くんって呼ばれる理由がよく分かった」
「そうか」
電波くんは気にもとめず飄々としている。
「ねぇ、好きな子が他の男といるの嫌じゃないの?」
「気にしない。あいつはいつもああだ。娼婦をしていた事もある。」
「……それはさっきから言ってる前世…で?」
「そうだ」
電波くんは、学年で一番人気のある高野麻理につきまとっていることで有名だ。
でも少し話してみて分かった。彼は高野麻理と前世からずっと一緒だと言い張る電波系ストーカーだと。
「その…前世では高野さんとはどんな関係だったの?」
刺激しないよう、彼の話にのる。
「いつもそばで守る関係が多かった。護衛や用心棒だ」
「へえ」
――どうやって逃げようかな……
「沢田さん、あいつに男を寝取られたからといって気にしなくていい。あいつは昔から誰も好きにならない」
「……デリカシーないし、なんの慰めにもなってない」
電波くんの言う通り、元彼は今、高野さんと付き合っている。たしかに高野さんは男を取っ替え引っ替えで有名だ。しかも大体が略奪。
「電波くんは他の子に目がいかないの?」
「そうだな」
「それって何?運命ってやつ?」
「そうだな、多分。報われたことはないが」
「へえ」
――嘘でもホントでも趣味わる。
「でもさ、電波くんこのままだと警察に捕まると思うよ」
これはずっと言いたかった。つきまとわれて嬉しいならとっくに付き合ってる。
「……それは……」
電波くんは初めて口ごもり大きな拳を握ったり閉じたりしている。
――やばっ!踏み込み過ぎた?
「初めてなんだ……そばにいられないのは」
電波くんは悔しそうな顔をした。
――そんな顔してるけど自業自得だよ。
「ねえ。異世界みたいなとこにいたの?だったら召喚されてウェーイみたいなの見た?」
軽く聞いてみただけなのに、電波くんの顔色が悪くなり手が微かに震えている。
――やばっ!また余計なこと言ったかも
「俺のいたところは、異分子は全て排除するところだった。だから……」
電波くんの手の震えが大きなものになる。
「いっ…いいよ言わなくて!! ていうか言わないで!!」
――もう噓とかホントとかどうでもいい!
「もう行くね!あいつらもいないし」
実は高野さんと元彼がイチャコラしている前を通らないと帰れず、困っていたところを電波くんから声をかけられた。
「そうか。また明日な」
電波くんはさっきまでの態度が嘘のように飄々と手を振る。
――あれ、もしかして元彼を見て落ち込んでたから慰めてくれたの……?
なんてキュンとしないよ!
マジでこわっ
電波くんはそれからも相変わらずだ。
ただ私の事を、前世で家族だったとか言い出し始めた。やめてーー