~第二の錦織圭たちに贈る言葉(38)~ 『気力を養うには反吐(へど)を吐くほどの練修がいる』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(38)〜
『気力を養うには反吐を吐くほどの練修がいる』
1. まえがき;
今から数か月前、2013年3月にNHK−TVで放送された『ヒーローたちの名勝負』の柔道家・山下泰裕VS斉藤仁の1985年全日本選手権決勝対決に至るまでのドキュメンタリー番組の再放送を観た。
試合結果は山下選手の判定勝ちであった。試合では、斉藤選手は練習に練習を重ねて会得した返し技で山下選手を倒したが、完璧ではなく、審判は山下選手が技を掛けた時にスリップダウンしたと判断した。その時、同時に倒れた斉藤選手が膝を痛めタイムを取った。その後、試合は再開され、攻撃を続ける決意をし、様々な技を繰り出し続けた山下選手が判定勝ちを収めた。
試合内容は以上であるが、番組は試合前の1年くらい前から二人の練習風景を記録していた。
斉藤選手は山下選手の大外刈りへの返し技を練習に練習を重ねていた。一方、山下選手は斉藤選手に負けたくないとの一念で激しい練習を重ねていた。そして、TV映像は山下選手が柔道場の入口から外に向いて反吐を吐いている姿を映し出していたのを見て、「体力が十分ある世界NO1の選手が反吐を吐くのか!」、何と激しく厳しい練習をしているのだろうと思い、強く印象に残った。山下選手にとって斉藤選手に負けないためにはどれだけ練習しても練習しきれない思いだったのだろう。
私はテニスの練習で反吐を吐いたことはないが、高等学校1年のバスケットボール部の夏合宿で練習中に何度も反吐を吐き、疲れで食事がのどを通らないという経験がある。その後は練習になれて反吐を吐くことはなくなったが、厳しい練習には耐えられるようになった。
技術など実力伯仲の戦いでは、技術ではなく気力に勝った方が勝利するのである。
山下選手のTV番組でのコメントは「斉藤選手を技で投げられるとは思えなかったので何とか攻撃を続づけて、斉藤選手にプレッシャーを与え、技を出させないようにした。」であった。
一方、斉藤選手は「(山下選手の)返し技が効いたとは思えなかった。何故負けたのか判らなかった。もう少し前に出て行こうとすればよかったのかもしれない。攻めさせてもらえなかった。」と述べている。斉藤選手も試合後の反省の中で、気力の重要性を感じたようであった。
2. 贈る言葉;
いままでの贈る言葉では、『心・技・体』の上昇スパイラルが勝利を生むと述べてきた。
『ウィンブルドンで優勝』するには、ジョコビッチ選手などのトップ10プレーヤーに勝たねばならない。そのためには気力のぶつかり合いに勝利する必要がある。
互いの『心・技・体』のぶつかり合いの中で気力が『先手』を取らせることになる。
「負けたくない」と云う思いが、一球でも多く相手コートにボールを返す気力を生み、ボールを追いかける気力を生む。
それが相手選手に対するプレッシャーとなり、勝利を引き寄せることになる。
私の経験で恐縮だが、テニスを始めて2年目の大会で実力伯仲の選手と1回戦で対戦した。
プレーを始めて数ゲームが過ぎた時、「あれだけ一生懸命に練習したのに1回戦で負けるわけにはいかない。」という思いが沸いた。「1回戦で負けたら自分の才能を否定することになる。何としても1回戦では負けたくない。」と思った。そうすると、ボールを何とか追いかけ、相手コートに返すこと、そして、ミスをしないように返球する動きになって、ボールを追いかける気力と粘りがでてきた。そして、相手選手が辛抱しきれずにミスショットをしてくれて試合に勝利できた。しかし、勝利はしたが、満足感は全くなかった。
(『勝ちたい』ではなく『負けたくない』という思いが無理なショットをすることを戒める効果があることを認識してください。)
以後、練習に励み『つなぐだけのテニスは止め、テニスを始めた時に目指したサーブ&ボレーの習得』を目指した。
『ウィンブルドン優勝』には5時間のフルセットマッチに勝利することを思い浮かべ、体力と気力を養っておかねばならない。
その為には『反吐を吐くほどの練修』が必要なことを山下選手は教えているのである。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2021年5月28日
参考文献;ユーチューブ「Excellent game of heroes “Yamashita VS Saitou” 」