【人柱になった赤ん坊と母親の涙】
こんにちは!有馬波瑠海です!
(*´-`)
今回で連載小説は、四作品目です。うん。なんとも不吉な・・・。まぁ、気を取り直して、書いていきますので、最後までお付き合いいただけたら、嬉しいです・・・(*´-`)
【今までの連載小説】
1 【時雨の里】(連載中) https://ncode.syosetu.com/n5101gr/
2 【七世と森の少年】(完結済み) https://ncode.syosetu.com/n1320gs/
3 【闇に沈む侍】(完結済み) https://ncode.syosetu.com/n3500gt/
4 【あやかしの国に渡る少女】←今回
目が覚めると、もう朝でアタシは見慣れない部屋で一人布団に寝ていた。あれ?昨日あれからどうしたんだっけ?確か、池の前で時雨の縦笛を聞いていたはずだ。思い出せない・・・。
するとそこへ、座敷わらしが襖を開けてやって来る。
【座敷わらし】
「里李。おはよう。」
【里李】
「おはよう、わらし。あの、昨日アタシどうやって寝たんだっけ?」
座敷わらしは、アタシの布団の横まで来てちょこんと座ると言った。
【座敷わらし】
「里李も時雨様の縦笛が好きなんだね。昨日、里李をおんぶして、時雨様が池から帰って来たから、私が里李を寝かせておいた。」
【里李】
「そうだったんだね。ごめんね。世話をかけちゃったみたいで・・・。」
【座敷わらし】
「ううん。時雨様の縦笛は、誰が聞いても落ち着くんだよ。とっても綺麗で優しい音・・・。傷ついたあやかしに、水子の霊は、よく、時雨様のあの縦笛の音に癒されに来るよ。元々は、雨花様がやっていたんだけどね・・・。」
そう言うと、座敷わらしは、ニッコリ笑う。
【里李】
「雨花って?」
アタシがそう聞くと、わらしは少し寂しそうな顔をした。
【座敷わらし】
「時雨様のお母上だよ。」
あぁ・・・。言葉が無くなる。そうか、時雨の母親は人間だったのだ。でも、あやかしからしたら人の寿命は、ほんの一瞬。半雪の話からするとその雨波なさんはあやかしからとても慕われていたようだった。きっと、この目の前にいる少女のあやかしも、その雨花を慕っていたのだろう・・・。とても、懐かしそうにわらしは、雨花のことを話し出す。
【座敷わらし】
「雨花は、とっても優しくて、本当に綺麗な人間だったよ。いつも夜になれば、綺麗な縦笛を吹いて皆を楽しませてくれた。」
今から、なん百年も前・・・。
美しい満月が、部屋を照らしている。その部屋の中に、一人の女と、幼い少女の妖怪はいた。
【雨花】
「わらしは、甘えん坊さんだねぇ・・・。」
【座敷わらし】
「だって良いでしょう?今日は、沢山お手伝いさたんだから・・・。」
座敷わらしは、雨花の膝に座って風車を回している。
【座敷わらし】
「私、お母さんに甘えたことがないの・・・。だって、生まれてすぐに飢餓で苦しんでいた村を救うために、人柱にされて川に流されちゃったから。でもね、今でも覚えてるの。
私が川に流された時、川岸でワンワン泣く女の人の姿を・・・。その女の人は、私を川から引き上げようと、一生懸命に川へ入ろうとしていたのだけど、周りにいた人が必死にその女の人を押さえて、川へ入れさせないの・・・。
川の流れも速くて、そう、とっても速くて・・・もっとその女の人を見ていたかったのだけど、どんどん見えなくなって、最後には声も聞こえなくなっちゃった・・・。」
少女の頬からポロリと涙が溢れた・・・。
溢れた涙は、ホロホロと流れ続け、小さな頬に小さな川の流れを作る。
【雨花】
「その女の人は、可愛そうだねぇ・・・。だって
こんな可愛い娘の涙も拭いてやれなかったんだから・・・。」
雨花はそう言うと、少女の頬に流れる涙を拭い、縦笛を吹く。優し美しい音色で、少女の心に傷が少しでも消えていけと祈るっているかのような、暖かい音色だった・・・。
【座敷わらし】
「あの言葉に・・・。私はどれだけ救われことか・・・。雨花が死んで、あやかしの世界に人はいなくなった。わたしは、雨花の面影に浸りたくて、もう一度お母さんに会いたくて・・・・社をくぐって人の世界に行き、ある旅館にとりついた。すると、その旅館は大繁盛。毎日色んな人間が来た・・・。でも、その中に雨花の姿はあるはずも
なく、私はあやかしの国に戻って来た・・・。落ち込んで帰って来た私を時雨様は、優しく迎え入れ、縦笛を吹いてくれた・・・・・・。」
あやかしの世界は力が全てと言って聞いたけれど、長い長い時を生きるあやかしが、たった一人の人間との別れに、こんなにも心を痛めて、いつまでも思い続けている。置いて早くに行かなくてはならない人も、先立たれずっと思い続けるあやかしも結局、心を持った優しい生き物なのではないかと、アタシは思った・・・。
夜中、アタシはこっそり屋敷の外に出る。あの人に会うためだった・・・。今日もあの人は、縦笛を吹いているのだろうか・・・。昨日と同じように、救われない水子の霊を慰めているのだろうか・・・。
池につくと、その人はいた。神秘的な光景というのは、きっとこういうモノを言うのだろう。美しい月の下、青く輝く森の中に波一つたっていない済んだ池。そのほとりで下にかけて紺色が濃くなっていく美しい着物を着た、パイプタバコをくわえた雅な青年が立たずんでいる。
しかし、あの縦笛はどうやら吹いていないらしい・・・。縦笛の代わりに時雨は、青い勾玉を月の光に照らして見つめていた。
時雨は、こちらを振り返らず声をかけて来る。
【時雨】
「今日は、もう吹かないぞ?それにアンタ、そうだな。少しは身を軽くする努力をした方が良い・・・。重すぎる。」
【里李】
「なんですって!アタシ、標準体重だから!いたって普通だから!健康だから!あなたがか弱すぎるんじゃないの?」
アタシの発言に時雨は全く興味を示さない。時雨の視線はたった一点に注がれている。
大切そうに時雨は、その青い勾玉を持ち、見つめていた。
【里李】
「それ、一体なんなの・・・?」
そう聞くと、時雨は始めてこちらを見た。そして、艶やかに笑いながら言う。
【時雨】
「・・・なんだと思う?」
【里李】
「えぇ?」
二人の間に長い沈黙が落ちた・・・。
読んでくださり、ありがとうございました!(*´-`)次回は、明日の午後21時です!よろしくお願い致します!(*´・∀・)ノ
Twitter始めました!(*´・∀・)ノ
@xGUlpsT6bU6zwi1
投稿のご連絡、小説内で扱かったイラストなどをツイートしています!( ・`ω・´)