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【あやかしの国に渡る少女】  作者: 有馬波瑠海
3/25

【 月を見る二つの影 】

こんにちは!有馬波瑠海(ありまはるか)です!

(*´-`)




今回で連載小説は、四作品目です。うん。なんとも不吉な・・・。まぁ、気を取り直して、書いていきますので、最後までお付き合いいただけたら、嬉しいです・・・(*´-`)



【今までの連載小説】


1 【時雨の里】(連載中)

  https://ncode.syosetu.com/n5101gr/



2 【七世と森の少年】(完結済み)  

  https://ncode.syosetu.com/n1320gs/



3 【闇に沈む侍】(完結済み)

  https://ncode.syosetu.com/n3500gt/



4 【あやかしの国に渡る少女】←今回

 半雪(はんせつ)は、さらっと恐ろしいことを言った。あやかしの世界というのはこれほどに殺伐としているものだろうか・・・。今まで多くのあやかしを祓ってきたが、改めてあやかしというモノの存在は恐ろしいモノであると知った。そんなアタシの思いを知ってか知らずか、半雪(はんせつ)が1つ昔話をしようと言って、語り始める。



 昔々この国には、一匹の九つの尾を持つ黒狐(こっこ)がいた。黒狐(こっこ)は、大妖怪としてその強力な力から、力が全ての妖怪をひれ伏させた。


 そんな黒狐(こっこ)もいつしか、嫁をもらったそうだ。それはそれは美しい白狐(びゃっこ)だったそうだ。そんな二匹はすぐに子宝に恵まれ|九つの銀色の尾を持った銀狐(ぎんぎつね)が生まれた。銀狐(ぎんぎつね)は、二人の偉大なあやかしの元ですくすくと成長していった。


 しかし、その後、白狐(びゃっこ)は病に犯され亡くなってしまう。黒狐(こっこ)は、ひどく悲しみ塞ぎこんでしまう。そんな黒狐(こっこ)を心配して、多くの妖怪達が、黒狐(こっこ)を町へと連れだそうとしたのだが、町に出れば、白狐(びゃっこ)との思い出に溢れ、黒狐(こっこ)の心はさらに悲しみに覆われていった。


 黒狐(こっこ)は、周りに従えていたあやかしに何も告げず、あやかしの国を抜け出した。人間の男に化けて、鳥居を潜り抜けて人の世界に出た黒狐(こっこ)は、一匹であちこちさまよい歩いたそうだ。ちょうどその頃は人間の世界ではお祭りをやっていたそうだった。見るもの見るものどれも美しく、黒狐(こっこ)の心を楽しませた。始めて見る食べ物に、空に浮かぶ光の花、黒狐(こっこ)は時を忘れてあちこちを見て回った。


 しかし人の世界は、結局、深く傷ついた黒狐(こっこ)の心を癒すことはしてくれなかった。黒狐(こっこ)は、気づいてしまった。傷つき弱った今の自分は、人の世界では、自分の姿に誰も気がかれないということに・・・。金魚すくいをしようと近くに行っても、後から来た人々が自分の体をすり抜けて行く。


 あやかしの世界に戻れば、白狐(びゃっこ)の思い出で苦しくなり、そして、人の世界では誰も自分の存在を認識してはくれない。どこに行っても悲しみはついて回る。黒狐(こっこ)はたった一匹で、川へとやって来た。一人川に映る月を見た。あやかしの国で見るには劣るが、とても綺麗な満月だった。


「今日は、月が綺麗だね・・・。」


 驚いて振り向けば、紅白の着物纏(まと)い、長い髪を一つにまとめ、朱色の結いヒモと共に三つ編みしていた。その女は妖艶な笑顔を向けて、こちらを見て、ふぅーとパイプタバコを吐いた。


「お前も、一人かい・・・?じゃあ、アタシも隣に座らせてもらうよ。」


 その人間の女には、黒狐(こっこ)のことが見えていた。あぁ・・・。陰陽師(おんみょうじ)か・・・。黒狐(こっこ)はそう思った。でも、もう良い・・・。今、ここで(はら)われても・・・それは、それで・・・。黒狐(こっこ)は体の力を抜いて瞳を閉じ、覚悟や決めた。


 しかしその人の女は、黒狐を払う様子を見せず、黒狐(こっこ)に話しかけた。



「お前・・・。お腹、空いていないか?」


 その女は、黒狐(こっこ)に問いかけた。黒狐(こっこ)は女の真意が掴めず、黙っていた。すると、女は黒狐(こっこ)の手を取り、夜の祭りの屋台に向かって走り出す。黒狐(こっこ)は一体何が起こったのか分からなかった。



 女は屋台に行くと、二人分の食べ物を店主に頼んだ。いくつもある屋台を、一人と一匹で沢山回った・・・。屋台の主人の中には、時々不思議そうな顔をする者もいたが、二人分を作ってくれた。女は、優しく笑って、黒狐(こっこ)に祭りを案内する。その女の笑顔はあまりにも美しく、闇に沈んだ黒い狐の心に光を灯した。



 その後、黒狐(こっこ)は、度々あやかしの国を抜け出しては、人の世界に行きその人間の女に会った。そして、気づいた。その女はいつも一人でいることに。なぜだろうか、その女を見る他の人間は、こそこそとその女の陰口を言い、女のことをよく思っていないようだった。


「ここには、アタシの居場所がないのさ・・・。アタシは、アンタ達のことがよく見えてしまう。


 だから、ある時親が気味悪がってね。捨てられたのさ・・・。今は、ここら辺の由緒正しき陰陽師をやっている、一宮(いちのみや)の神社に預けられている・・・。


 でもよそ者のアタシには、結局、心休まる場所なんて、どこにもなかった・・・。ここの当主の一宮笠彦(いちのみやかさひこ)は、アタシのことを大切に育ててくれたけど、周りはそれをよしとしなくてね。


 よそ者が一宮(いちのみや)家に入ることを疎ましく思ってる。そんな中、笠彦(かさひこ)さんが亡くなってね・・・・・・。


 事故だった・・・。あやかしが悪さをするから、退治してして欲しいとの依頼があった家からの帰り道、馬が突然暴れだして落馬。その時、頭の打ち所が悪くてね・・・。


 父親同然だったあの人をなくして、悲しみにうちひしがれていたら、今度はよそ者であるお前が、最悪を持ち込んだから笠彦(かさひこ)が死んだんだと言われてね。・・・・・・葬式にも、出してもらえなかった。」


 その女は、静かながらも荒々しい言葉づかいに、パイプタバコ・・・。とても、気品に溢れているとは思えない・・・。しかし、その陰陽師の女の口調は、あまりにも切なく悲しげでそして、弱々しかった。


「最初に、アンタを見た時・・・。すぐにアンタがあやかしだと分かって、祓おうと思った・・・。だけど・・・。」


 その女は、黒狐(こっこ)を見て、悲しく微笑む。


「出来なかったよ・・・。だって、アンタ・・・。アタシと同じ臭いがしたから・・・。一人ぼっちの、悲しい臭いがしたから・・・。」


 女は、いつものようにパイプタバコを吸いながら、大好きな夜空に浮かぶ月を見て言った。


「今夜もまた、月が綺麗だね・・・。」


 その表情は、今までに見たことがないくらいに悲しく儚いものに黒狐(こっこ)には思えた。


「なら・・・。俺と共にあやかしの世に来ないか?」


 黒狐(こっこ)は言った。女は驚いたように黒狐(こっこ)を見た。そして、女は艶やかに笑うと黒狐(こっこ)に聞いた。


「そっちの世界でも、月は見れるのかい?」 

 

 黒狐は、空に浮かぶ月を見て言った。


「あぁ・・・。少なくとも、こっちで見る月よりは綺麗に見れるだろう・・・。」


 女は、パイプタバコにもう一度口をつける。そして・・・。


「そうかい・・・。それなら、行ってやっても、良いかも知れないね・・・。」


 ・・・と、呟くのだった。


 次の日の明け方、女は、黒狐(こっこ)に連れられてあやかしの国に渡った。狐に嫁入りをしたわけだ。この日の天気は不思議な天気だった。すみ渡るような青空にも関わらず、ポロポロと降る雨・・・・・・。この日の天気はまるで一匹の黒狐(こっこ)と一人の人間の女の心を現しているようだった。何百年も昔にあったこの出来事は、伝説として語り継がれ、時代と共に名前を変える。晴れている日に降る、ポロポロと降る雨の日を今日では、()()()()()などと言うような呼ばれ方をするようになった。

読んでくださり、ありがとうございました!(*´-`)次回は、明日の午前9時です!よろしくお願い致します!(*´・∀・)ノ




Twitter始めました!(*´・∀・)ノ

@xGUlpsT6bU6zwi1  


投稿のご連絡、小説内で扱かったイラストなどをツイートしています!( ・`ω・´)

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