始まり-2
息を潜め、慎重に周りを確認しながら出口へ向かう
「兄ちゃん!!!」
アルがそう叫んだと同時に目の前に何かが飛んできた
「…!!」
球状のものが赤く染まっている、これはまさか
「頭が…飛んできた?」
先程食堂で子供に襲われていた若い大人の頭がそこにはあった
「アル!こっちにこい!!!」
ただならぬ危険を感じでアルを呼びつける
「兄ちゃん!すぐそこまで来てる!」
頭が飛んできた方向から先ほどの子供が歩いてくる
「アル、俺が合図をしたら先に外へ出て森へ迎え」
「そしたら兄ちゃんが…」
「いいから、言う通りにしろ」
「おい!お前!なんのつもりだ!!」
「……」
俺はそう向かってくる子供に怒鳴ったが返事は無い
「…クッ!!!」
出口の靴箱の隣に置いてあった傘を真っ直ぐに投げつける
「アル!!!行け!!!」
合図と共にアルは外へ走っていった
「何?」
俺の投げつけた傘は子供にはあり得ない動き、上体を後ろに反らす形で避けられていた
「ギギギギギ」
歯軋りのような音を立てながら目の前の血に濡れた子供が走ってくる
「クソっ!!!」
咄嗟に横へ転がり回避するが靴箱に当たってしまい
逃げ場が無くなった
「……!」
武器になるようなものもない、あっても奴の動きにはついていけない
「ギォ…」
無表情で、剥き出しの歯茎が見える状態で殴りかかってくる
「が…!……」
両腕でガードをしたがハンマーのような衝撃が襲う
「!!ギ!!シ!」
そのまま奴はひたすら防御の姿勢をしている俺に向かって殴り続ける
もう腕の感覚がない、俺はそのまま奴の攻撃の圧に押され、座っている状態になる
「ギャ!!!!」
奴の拳が振り下ろされる
もう終わりだ、反射的に目を瞑った
!!!ゴォン!!!!!!!!!
鈍い金属音が響き渡る
「…?」
目を開くとジェド爺が鉄パイプで奴の攻撃を防いでいた
「ジ…爺…」
口の中は切れて声もまともに出ない
「早く逃げなさい」
そう言いながらジェド爺は奴の攻撃を防ぐ
「…ッ!」
満身創痍の体に鞭を打ち、外へ向かう
「…ハァ!!!!」
ガッ!!!
ジェド爺の攻撃が奴の側頭部に入り、1mは吹き飛んだ
「…」
ピクリとも動かないのを見ると、ジェド爺の一撃がまともに入って死んだのだろう
「ルカ、大丈夫か?肩を貸そう」
ジェド爺も傷だらけなのに俺を気遣ってくれる
「だいじょ、ぶ、逃げよう」
「分かった、森に向かうぞ」
そのまま2人で森へ向かった