第95話 何があったか知らなきゃいけないから大丈夫。
ジョマがお父さんと東さんのやった事にショックを受けて物凄い意地悪をしてきた。
あまり考えたくないが、ツネノリや東さんを悲しませたくて標的をタツキアにしてビッグドラゴンに襲わせると言う。
お父さんはタツキアには5000人のプレイヤーが行ったからとツネノリに言葉をかけていたけど私はここ数日の事が全て気持ち悪い。
・成功報酬だったはずなのに参加費になってしまった事。
・一緒に戦ったプレイヤー達の大半が亡くなってログイン不可状態で5000人居ても残ったプレイヤーはフナシで佐藤を襲ったり、トセトで殺人を犯していないプレイヤーを殺そうとして私達にマキアの牢獄に送られたりした因縁深い相手で戦力にならない事。
そう言う点からも嫌な予感がするのだ。
今、本来は戦闘中なのだが、目の前では本気を出したツネノリが1人でギガントダイルの群れに飛び込んでこれでもかと斬り刻んでいる。
今、ツネノリは全身に風のアーティファクトで高速移動、超跳躍を可能にしていて、両手の剣には雷のアーティファクトを8個ずつ纏わせている。
昨日までなら気絶をしていたが今は東さんがバックアップに入っているのでこれだけの力を出してもツネノリはおかしくなることが無い。
ツネノリを食べようと口を開けたギガントダイルに対してツネノリは高速移動で口の中に伸ばした剣を差し入れて雷の力で体内から焼き殺している。
まだ始まって少ししか経っていないのに今回の戦闘で現れた12匹のギガントダイルは残り3匹になっている。
「本当なのか?…わかった…そうだな、先にそうしてくれ」
お父さんが突然話し始めた。相手は東さんだと思う。
「お父さん?」
「千歳…、落ち着いて聞くんだ。タツキアはダメだった」
「え?」
私はお父さんの言葉が嘘だと思いたかった。
「本当だ、だが今のツネノリにはまだ言えない。ギガントダイルを始末した所で東が先にツネノリだけをタツキアに飛ばす」
「お父さん、メリシアさんは?」
「…」
「お父さん?」
「大きな声を出すな。ツネノリに悟られる」
「お父さん…、それって…」
「ああ、彼女は助からなかった」
その瞬間、私はメリシアさんとの数日を思い出していた。
あの優しい笑顔、ツネノリとの事を話すと真っ赤になって照れる顔。
ツネノリの想いを受けて真剣に悩んでくれた事、想いに答えようとしていた事。
「あの2人は…自覚無かったけど…きっと好き合っていたんだよ?
この先結ばれて幸せになって…、お父さん、私ね…」
「千歳、ツネノリに気付かれる。堪えなさい」
お父さんが怖い…辛そうな顔で私にそう言う。
いつの間にか目の前のツネノリは最後のギガントダイルを倒していた。
「東さん!!父さん達は!?」とツネノリが言っている。
ああ、多分東さんが一秒でも早くタツキアにツネノリを連れて行こうとしているんだ。
それでツネノリがお父さんと私を気にしてくれたんだ…
次の瞬間、ツネノリの姿は無かった。
「お父さん!!!」
「千歳、よく堪えた」
私はお父さんの胸に飛び込んで泣いた。
初めて人を殺した晩以上に泣いた。
「お父さん!何で?何でメリシアさんが死ななきゃいけないの?どうする事も出来ないの?知っているよ!東さんから聞いたよ、東さんが人を助けたらジョマが邪魔をするって聞いたよ!でも嫌だよ!!」
「千歳…」
そう言ってお父さんは私を強く抱きしめてくれる。
それがもっと涙を出させた。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「泣きなさい。お前の立場も辛いはずだ。北海の事も理解し始めていて解決の糸口も見つかり始めていたはずなのに、そこにツネノリと彼女の事だ…」
「私、私ね!!!もしツネノリとメリシアさんが付き合って、それで東さんがゼロガーデンとセカンドガーデンでの恋愛がダメって言うならジョマも呼んで東さんとジョマで何とかしてもらうつもりだったの!真剣に応援していたの!!」
「ああ、知っている。千歳ならそうすると思っていたよ」
「それなのに!それなのに!!」
そのまま私は沢山泣いた。
「東か、わかった…今行く」
お父さんがそう言うと私を連れてタツキアに飛んだ。
タツキアは村の入り口が滅茶苦茶になっていた。
おじさんの宿も前部分がぐちゃぐちゃになっていて、そこでツネノリが座り込んで泣いていた。
そこにはメリシアさんが横たわっていた。
「東…、千歳に状況を教えてやってくれ」
そう言ったお父さんはツネノリの所に歩いて行く。
振り返ったツネノリはお父さんを殴り飛ばしていた。
「父さんなら瞬間移動ができたはずだ!!
魔女の妨害がなんだよ!!
何で今日に限って何もしてくれなかったんだ!
父さんや東さんが本気を出せばメリシアは死なないで済んだかもしれないだろ!!」
お父さんはただ「すまない」と言って怒るツネノリを抱きしめていた。
ツネノリの怒りは収まらずにアーティファクトで父さんを攻撃する。
父さんは何も言わずに甘んじて攻撃を受け止めていた。
「やめなよツネノリ!!」
そう言って私が走っていく。
「…ち…ちと…せ……、メリ…メリシアが…」
ツネノリは泣いていた。
弱り切ったツネノリを見たのは初めてで私も大泣きをした。
泣いた私に驚いてツネノリが「千歳…お前まで泣くな…」と言ってまた泣く。
私がツネノリを抱き寄せるとツネノリも私を抱きしめる。
2人で散々泣いた後、「お前が泣くとメリシアが心配する」と言ってツネノリは目の前で横たわるメリシアさんに「千歳も来たぞ」と語り掛ける。
その顔が何とも悲しげで涙が出た。
目の前に居るメリシアさんは怪我一つない綺麗な姿でとても死んでいるとは思えなかった。
だが、何か雰囲気が違う事で死を実感した私はまた泣いた。
「最初は酷い状況だったんだ…俺が着いた時、メリシアは死ぬ瞬間で俺に気付いたのか最後に俺の名を呼んでくれた…。そして死んだ後、東さんが綺麗にしてあげようと言ってくれたから俺が回復のアーティファクトで傷を消して今の姿にしたんだ」
そう言ってツネノリはまたメリシアさんの亡骸に向かって突っ伏して泣く。
「東さん、何があったの?教えて…」
「千歳…、大丈夫かい?」
「うん、何があったか知らなきゃいけないから大丈夫。教えて」
私は衝撃の事実を東さんから聞いた。




