第93話 本当にイメージする力だけでこんなに強くなれるのか?
俺と千歳は父さんが狙わなかった左側のギガントダイルの進行方向に立っている。
「どうする?」
「んー…口さえ開けばドリルでも貫通弾でも有効打になるけど、口を閉じてると困るんだよねー」
それは確かにそうだ、あの口を切り開くのは容易ではない。
父さんは痛みを伴うが不死のアドバンテージがあるおかげであんな危険な真似が出来ている。
「んじゃあ、一個やってみるからツネノリ付き合ってよ」
「何を試す?」
「光の拳と風のアーティファクト、ツネノリは光の剣と風のアーティファクトね。数はいらないからとにかく遠くに飛んで切れ味の凄いのを出してね」
遠くに飛ぶ?切れ味?
言われた通りにしよう。
「【アーティファクト】【アーティファクト】」
「ちょっと刃を飛ばしてみて、イメージ通りなら私もやって見るから!」
千歳の言う通りギガントダイルに向かって刃を飛ばす。
飛んだ刃は外皮に少し傷を付けただけで弾かれてしまった。
「OK、OK!予想以上の切れ味で助かるよ!
じゃあ私の番だ!【アーティファクト】!」
千歳は楽しそうに光の拳を精製する。
「次、ぶっつけ本番!ツネノリの真似して2個出し!【アーティファクト】【アーティファクト】!!」
千歳の背中と両腕に風のアーティファクトが精製されて小さな竜巻になっている。
「2個出し!!?なんで千歳が!!」
「うっわ、失礼しちゃう。ツネノリの使い方を見ていたら私にも出来る気がしたんだよね。
なんかさぁ、ツネノリとかお父さんは役に立たないから聞けないけど、アーティファクトってイメージさえあれば無限の可能性を感じるんだよね。これもイメージしたら出せた訳だし」
…それってかなり凄い事だと思う。
千歳は一度母さん達と話した方が成長する気がした。
「まぁいいや、タイミング合わせてよ!見ててね!!
うぉりゃ!!」
そう言って千歳はまだ距離があるにも関わらずギガントダイルに向かって大きく振りかぶって拳を突き出す。
そのパンチには「光の腕輪」の力、背中に付けた風の力、そして腕に付けた風の力が合わさったものが乗っていて。空気の塊のようなものがギガントダイルに向かって真っ直ぐに飛んで行った。
パァンと言う弾けた音の後ギガントダイルが顎を上に向ける。
恐らく千歳の拳が当たったのだ。
「もう一つ!!」
そして左腕で打ち上げるように放たれた拳がギガントダイルを持ち上げる。
「ツネノリ!今だよ!!」
俺はその声に合わせて剣を振る。
剣から飛び出した風の刃はギガントダイルの腹を切り裂く。
「殺せていないならもっとだよ!」
「わかっている!面倒だから刃を増やす!【アーティファクト】!」
俺は剣に纏わせた風の力を2つにして二本の刃を飛ばす。
二度目の風の刃でギガントダイルは真っ二つに裂けた。
「よしっ!」
「すぐ次が来る。
ツネノリ疲れない?」
「このくらいならまだ平気だ!」
そう言って俺達は2匹目のギガントダイルも同じ方法で倒す。
父さんは持分のギガントダイル3匹を倒し終わっていた。
「やっぱダメ!
ツネノリは一度全てのアーティファクトを停止して私の横に来て、佐藤、田中、鈴木!出番!!私の肩を持つ係!!」
千歳が号令をかける。
「急いで!!」
千歳の掛け声で佐藤達が千歳の肩を持つ。
「佐藤達はエネルギー兼私を支える係だからね!」
「千歳、何を!?」
「いいから見ていて!
イメージ…、光の拳…、あのギガントダイルを圧倒するだけの硬さ、大きさ、エネルギーは佐藤達。
出来た!【アーティファクト】!」
千歳の腕に大型の光の拳が精製される。
「ツネノリ!風の力で飛ばしたいの!手伝って!!
風は何個必要!?」
いきなりの質問に戸惑う。
だが、見ていれば大体の数はイメージ出来る。
「俺なら3個だ!」
「じゃあツネノリは2個、私が2個出す!」
「千歳、さっきから何を!?」
「ここで3人が潰れたらダメなんだと思うからツネノリを温存するの!
風、出すよ!【アーティファクト】【アーティファクト】」
「【アーティファクト】【アーティファクト】」
千歳の腕、巨大な拳の周りを風の力が渦巻いている。
「足りた!?」
「ああ、行けるぞ!」
「発射!!」
「「【アーティファクト】」」
千歳の掛け声に合わせて巨大な拳はギガントダイルに向かって放たれた。
それは想像以上の威力でギガントダイルをいとも簡単に砕いていた」
「千歳…、この成長速度はなんなんだ?
本当にイメージする力だけでこんなに強くなれるのか?」
「にひひ、やるでしょ?」




