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セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
伊加利 常継の章⑦怒る者。
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第91話 世界に近い場所に居る神ならそれくらいしてやれよ。

ボウヌイは地獄だった。

九匹のビッグドラゴンの猛攻をプレイヤー達は凌いだが、断末魔の攻撃のいくつかを防ぎきれなかったと言っていた。


プレイヤーの被害も甚大で責められるものではない。


火の玉を何回か受けたのだろう…

村の中のスタッフ達は焼け焦げていたり、酸欠で死んだりしたのだと思う。

中には子供や妻だろう…2人の為に身を挺したまま死んでいるスタッフも居た。


「東、彼らはいつまでこのままなんだ?」

「他のスタッフ達も今はボウヌイを含めて巨大ボスが襲ってくる可能性がある以上、持ち場を離れることは勧められない。

全てのイベントが終われば人員を配置して救出に向かわせる」


「バカか?お前がやれば一瞬だろ?」

「だが、僕が行動に出ると北海が何をするか…」


「されてから考えろよ!!」

「ツネツギ…」


「ならせめて全員を綺麗にしてあげろよ。

生き返らせろなんて言ってない。

このままなんてあんまりだ…、服も身体も全部綺麗にしてあげろよ…、お前は神だ、世界に近い場所に居る神ならそれくらいしてやれよ」


しばらく悩んだ東は「わかった」と言った。

次の瞬間、俺の目の前にいた親子は綺麗な姿でその場に横たわっていた。

まるで生きているような姿が余計に俺を悲しくさせた。


俺はその家族に手を合わせる。



「最低だわ」

いきなり魔女の声が聞こえる。


「そう言う事しないでって言うのがわからないのかしら?」

「北海!」

俺は憎しみを込めてその名を呼ぶ。

次の瞬間、巻き戻されたかのようにボウヌイの人達は俺が現れた時の姿に戻された。


「何をする!」

「アンタ達わかっていないのよ…、東が綺麗にしても私が何度でも戻すわ。諦めなさい。

巨大ボスも後2日、私は本気で行くわよ?」


「これ以上やらせるか!!」

「フェアプレイで戦いましょう」


そう言うと北海の気配は消えた。



俺は東に後を任せる事にした。

「ツネツギ、今日の舞台はセンターシティだそうだ」

「わかった。怒鳴って悪かったな」


「いや、君たちが正しいのだと思う。きっと僕の問題点はその部分がいまいちわからない事だろう」



俺はセンターシティのコロセウムでツネノリと千歳が現れるのを待つ。

その間に他のプレイヤー達が続々と召喚に応じて現れてくる。


その中には見たくない顔もあった。

先日のポイントアップキャンペーンでプレイヤーキラーとしてプレイヤー達を殺しまくっていた連中、トセトでの戦いで斬り刻んでやった顔もあった。


恐らく昨日までの戦いを不参加にしたか、参加しても後ろで見ていただけなのだろう。

だがここまで人数が減った状態で逃げ回るだけでは話にならないだろう。


「あいつらは頭数にもならないな」


北海は本気で来ると言っていた。

どんな魔物が襲い掛かってくるのだろうか…



暫くするとツネノリと千歳が召喚されてきた。

2人は元気そうでひとまず安心をした。

千歳の元にここの所顔見知りになっているプレイヤーと学校の友人が寄ってくる。

学校の友人はボウヌイの人達をAIだと思っていて、バックアップからロードすればいいと意見してきてツネノリがキレた。


俺はそのタイミングで唯一無二の人工生命体に近い存在だと説明をする事にした。

彼らにはゲームでもスタッフ達は命で生活がかかっている。


「はーい!皆おはよう!!運営のジョマでーっす」

コロセウムに突如現れる北海。

その姿を見て歓声とブーイングが巻き起こる。

このやり取りはずっと見ていて慣れてしまった。


「はいはいはい、声援ありがとう。さて、巨大ボスとの戦いも今日を入れて後2日。私も本腰入れて頑張るわ!


さて、今日は一つお知らせと言うか、皆にちょっとお願いがあるの。

あのね、運営にも苦情が沢山届いたけど、昨日のイベントでボウヌイの村が壊滅しちゃって、約5000人のプレイヤーが死んで、村に居たスタッフ2000人も死んでしまったの…」


ここで「ふざけるな」「バランス悪いぞ」等のヤジが飛ぶ。

北海のプランではツネノリと千歳が居てやっと勝てるバランスなのだ。あの2人が居なければ余程真剣に向き合わないと話にならないのだ。


「最初に皆で黙祷を捧げたいと思います」

その声で皆がシーンとなって黙とうをささげる。


「あのね、みんなガーデンのスタッフはただのAIじゃなくて唯一無二の存在なの。天才プログラマの東 京太郎さんが1人1人に人格を持たせているの。だから今回死んだボウヌイの人達はもう蘇りません。この世界の中だけど命は貴重って…私は知って欲しいの」


ここでどよめきが起こる。

北海…話を合わせるにしてもこのタイミングで言うか?


「保守派の人達はその事実は公表しないで頑張って自分たちだけで命を守ろうとしていたの。

私達改革派はその部分も含めて公表したかったの。だからこうやって黙とうを捧げたりしているのよ」


そこで一斉に俺達に向けられる白い目。

くそ、北海の狙いはこれか?


「あ、仲間割れはダメよ。今日は本当に過酷なんだから。みんなも命が大事って知ったでしょ?みんなで協力して何とかこの難局を乗り越えてね!

今日は三部構成にしました!!

一部がここ、センターシティを襲う巨大な魔物との戦い。

途中で二部が発表になるの、それまでに全部の敵を倒せていれば全員でそちらに行くのもいいわね。残っていたら私が選別して転送を行うわ。

そして最後三部が公表になるからその魔物も含めて全部倒してね。


今日の参加費は1人1万エェン。頑張って参加してねー」


言うだけ言って北海は消えていく。


「お父さん…」

千歳が心配そうにこちらを見ている。


「魔女め…やってくれる。俺は命についてセカンドで説明をするとは言ったが、トセトに居たようなプレイヤーに言うつもりは無かった。万一知ってしまうと次のイベントで嬉々として魔物化してスタッフを襲いかねん」


「東さんに頼んで排除してもらうとか…」

「魔女の妨害が入ると思う。あれでも居ないよりはマシと思って我慢するしかない」


「うわっ、やだなぁ…」

「とりあえず3戦とも勝てばいい、勝つことだけ考えよう」


千歳が「分かった」と言った後、「ねえお父さん、ジョマと何かあった?さっきの話し方とか雰囲気とか変だったんだよね。機嫌悪いって言うか…」と聞いてきた。

こういう時ばかり鋭い娘だ。

俺はボウヌイでの出来事を簡単に伝えた。


「…ああ、それはジョマが悪いけどジョマの言いたい事もわかるかも」

「何?」


「「悲惨なものも見せないで何が命の大事さを語っているのよ」って言うメッセージかも」

「…言われてみればそうかも知れないな。だが俺はボウヌイの人達を一日も早く救ってあげたい」


「うん、私もお父さんと同じ気持ちだよ。後はスタッフの人達を殺させちゃダメだから頑張ろう」

「ああ、よろしく頼む」

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