第90話 全員が持てる力を全部出せば勝てる風に出来ている。
俺がゼロに行くとまだツネジロウは布団の中だった。
起きるとルルが固まっていて何事かと思ったので話しかけたら「向こうでは夜中だったがツネノリの姿を見たくて接続を試してみたら宿屋の娘を抱きしめておった…」と言われて俺は笑ってしまった。
「バカか!?
笑い事ではない!
まだ早かろう?」
「そうか?」
俺やルルの結婚が二十を過ぎていたがサウスの王様は今のツネノリくらいの時に結婚をして幸せに暮らしている。
「なら千歳が今の歳で男の胸に抱かれておったらツネツギは平気なのか?」
「千歳!?ダメだ!早過ぎる。アイツはまだ14だ!」
ルルはニヤッと笑うと「ほれ見ろ」と言ってきた。
「いや、違うぞ…、千歳がガーデンに住んでいるのなら俺は別に結婚を否定しない。
だが外の世界だと後10年は勉強やら何やらとあるんだ」
その後、少しの問答をしてようやくルルが落ち着いてきたので俺は「実験はうまくいったみたいだな」と話を変えることにした。
「ああ、だがまだどうにも疲れるし長時間の運用が出来ない。
もしかするとノレノレに全部任せるしかなくなるかも知れん」
「あー、そっち系か…」
「うむ…」
ノレノレに頼むと言うのは余程の場合だけだ。
戦闘で相手がアーティファクトでの攻撃を仕掛けてくる場合にそれが直接的な攻撃であれば別だが、時のアーティファクトで動きを止めるなどの場合にはノレノレには効かない。
それ以外で言えば通常の火や水などのアーティファクトが使えない代わりに身体能力が異常に高い。
だが問題もある。ルルがノレノレで居られる時間は限られている。
そしてその後はルル達に戻ってもアーティファクトが使えなくなる。
正直、援護をしたくてノレノレになっても戻った隙を魔女に狙われでもしたら一大事だ。
「困るか?」
「当たり前だ、ただツネノリの顔を見て声を聞くのとは訳が違う。私も母としてこの戦いにだな!」
「あー、じゃあ千歳の真似してみるか?」
「なに?」
「おーい、東ー、見てるか?」
「見ているよ」
「わかるよな?」
「疲労の軽減かい?」
「ルル?」
「うむ、後はどこまで私の希望が通るかだな…」
「あんまりやり過ぎると北海が邪魔してくるかも知れないから、今はルルでもノレルでもルノレでもノレノレでも使えるようにする事と、疲労感の軽減にしておくよ。
後は改良の余地は残しておくからルルが頑張ってくれ」
そう言って東は話を終わらせる。
「ふむ、これで何とかなりそうだ」
「それは良かった」
「だが出来る事なら私の手で全て何とかしたかったのだがな」
「それは追々やってくれ。
今はとにかく時間が足りない。
魔女の話ではないが全員が持てる力を全部出せば勝てる風に出来ている。
ルルの力も不可欠かも知れないだろ?」
「まあ、それはそうだな」
そう言ってルルが納得をする。
「さて、朝飯を頼む」
「了解だ。座って待っておれ」
俺はルルと食事を食べる。あまり相応しくはないが話はツネノリと千歳が不在の戦いでボウヌイが滅ぼされた事、千歳が談判して魔女が譲歩した事、そして魔女の狙いがサードガーデンに死者を送らせることが判明したと伝えた。
「死者か…、ふむ」
「全く困った話だ」
「神が神の力を使う事を魔女が認めていない事が厳しいな」
「全くだ…、どうにかして残りのイベントでの死者数を減らさないとな」
「次はそれだな」
「なに?」
「次元球はひとまず形になったんだ、次を目指すべきだろう?
まあ大まかな部分は今の会話で思いついたがな」
「マジかよ…」
「私を誰だと思っておる?
これくらいあっという間だ。
ツネツギがセカンドに行ったら即始めるぞ」
「了解、じゃあ俺はセカンドに行くよ」
「いきなりツネノリ達の所か?」
「いや、先に滅ぼされたボウヌイを見に行く」
「そうか…、あまり抱え込むな?」
「ありがとう。気をつけるよ」
そう言うとルルからキスをしてきた。
「私がここから全てをうまく行かす。
ツネツギはツネノリと千歳を任せたぞ」
「ああ、行ってくる」




