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セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
伊加利 常継の章⑦怒る者。
88/339

第88話 千歳やツネノリの頑張りは想定範囲内かい?

タツキアの宿屋にツネノリと千歳を任せた俺はゼロガーデンのルルの所に戻った。

ゼロガーデンの時間では午後3時だった。


「今帰った」

「ツネツギ?」


…ん?明らかにルルの機嫌が悪い。


「どうしたルル?トラブルか?」

「トラブル?…お前は何を言っているのだ?」


「え?」

「次元球がなんで3個ともここにあるんだ!!」


「あ」

「忘れおってー…ツネノリの声を聞こうと何度試してもツネツギの声ばかりだったんだぞ!!」


「えっと…今すぐ置いてきます」

「当然だ!!さっさと行け!」


俺は文字通り脱兎のごとくその場から逃げてセカンドガーデンに行く。

部屋でツネノリにマッサージをしてくれていたメリシアに2番がツネノリで3番が千歳に渡るように頼んできた。

彼女はひとまずと言って2人の枕元に次元球を置いてくれたので見届けた俺はルルの元に帰る。


「戻りました…」

「うむ、確認した。ツネノリと千歳は寝ているな」


ルルは早速実験をしたようで機嫌は良くなっていた。


「寝ていると言うか昏睡だ」

「昏睡?」

「ああ、2人とも限界までアーティファクトを使いすぎたんだ。ほら昔ノースのアーイが擬似アーティファクトを使いすぎて昏睡しただろ?あれと一緒だな」


そして俺はタツキアでの戦いを説明する。


「ああ、説明って不便だな。東!ルルにツネノリと千歳の戦いを送ってくれ。俺もツネノリが倒れる所は見ていないから映像で確認したい」


そう言うと直後には東から映像が届くのでルルと2人で確認をする。


「…なんだこのバカでかい魔物は…」

ルルがびっくりしている。


「だがそれ以上にこの千歳の戦い方は何だ?勇者の腕輪で爆発槍?巨大な盾…、それにドリル…ドリルって何だ?」

俺はドリルについて説明しがてら勇者の腕輪が剣と盾を生むアーティファクトではなくて光で物を作るアーティファクトだと千歳が東から聞き出した話をする。


「…千歳の可能性は物凄いな。それに手を繋いで相手を自分の力に変える想像力やツネツギの盾に先がある事を見抜いた目も素晴らしい…」

「ああ、俺もそれには驚かされた」


「この想像力があれば…」

「ルル?」


「ああ、コチラの話だ気にするな。

次だがツネノリの方は第2の師匠がテツイだったとはな…」

「俺も驚いた。一緒にイーストで悪魔化した狼と魔女を倒した際にアイツは「氷の指輪」から力を引き出して「炎の腕輪」に打ち勝っていた。多分東はそこに目をつけたんだろうな…」


ツネノリのアーティファクトから力を引き出す方法には驚かされた。

今回の戦いであの力が無ければタツキアは無事では済まなかっただろう。


「ザンネとテツイ…その力が合わさったツネノリ…、下手をすれば私達より強いかもしれないな」

今ルルはツネノリが風を纏わせた剣で一心不乱ビッグドラゴンの首を斬っている姿を見ている。


「ああ、確かに強い。俺とルルの強みは戦いの数、経験値になるだろう。

俺が知りたいのはこの後だ。この後ツネノリが何をしてどうして昏睡してしまったかだ。

アーティファクトを使いすぎて倒れるとツネノリはメリシアに宣言していた。俺は戦闘後にメリシアからそれを聞いたんだ」

「先ほどツネノリもその名を呼んでいたな。その娘がツネノリの初恋の相手か」


「多分、村に2人でいたようだからこのまま見ていれば映像が出るだろう」

俺の予想通りツネノリはタツキアの村に入り、あの人ごみの中でメリシアを見つけて一直線に彼女を目指す。


「ほう、優しい顔立ちの娘だな。これがツネノリの初恋の相手か」

「ああ、名前はメリシアだ」


そして二人が話している時に俺とプレイヤー達の攻撃でスーパービッグドラゴンが討たれる。

あの時、俺はやつの腕を盾で受け止めていた。

その間に火の玉が打ち上げられたのだ。


映像の中でツネノリに抱き着いたメリシアがツネノリを押して逃げるように言う。


一瞬固まったツネノリが彼女に守ると宣言をして剣を構える。

ここからだ。


「まずはあの火の玉を砕く!

両腕に時のアーティファクト!

【アーティファクト】【アーティファクト】


次!

二刀に風のアーティファクト!

【アーティファクト】【アーティファクト】

【アーティファクト】【アーティファクト】

【アーティファクト】【アーティファクト】

【アーティファクト】【アーティファクト】

【アーティファクト】【アーティファクト】」


「何!!?12個同時発動だと!?」

「違うぞルル、剣も出している…これは13個だ」


俺は「勇者の腕輪」の影響で複数装備は基本出来ない。

回復のアーティファクトも昔とある事情で使えたこともあったがあれは限定的な状況だからノーカウントだ。

13個も同時に使うと言うのはどういう次元なのだ?


俺の不安は当たっていたようで映像のツネノリはとてもつらそうな顔をしている。

しばらく高速で剣を振るい続けるツネノリ、そしてようやく火の玉を破砕出来た時に力尽きたようだ。

…だが俺が着いた時タツキアは濡れていた。


そうしているとツネノリがタツキアを火事から守ると言い出していた。

「まだだ!メリシア…済まない。

まだやる…、済まないけど身体…支えて」

映像のツネノリはそう言って再び立ち上がり、両腕を天に掲げて剣を出して局地的な台風を巻き起こしていた。


「一人の人間がこの出力を!!?」

ルルが驚いて映像のツネノリを見続けている。


そして火が消え終わった後ツネノリはメリシアと共に倒れこんでいた。

ここで映像が終わる。


「ふぅ…」

「俺達の息子は凄いな」


「ああ、あれだけの力を出せばツネノリも千歳も倒れるのは当然だ…」

「どうしてやればいい?」


「力を使わせない以外の方法は無いだろう」

「そうか…」


「私は私で頑張る事にする。恐らく2人が目覚めるのはセカンドの中で2日くらい先だろう。その間に何とかしようと思う」

「何とか?」


「まあ、当初の予定通りだ…、確実に成功させる気にはなったがな」

そう言うとルルは不敵に笑う。


「2日か、今からゼロガーデンの時間で16時間か…、丁度俺の居ない時間と被るな」

「その間、セカンドガーデンを守るのは一般プレイヤー達か」


「ああ、彼らの利点は死なない事だ。何が何でも止めてもらいたいものだ」


俺達はそんな事を話した後、久しぶりだからとのんびりと過ごす事にした。

ルルは研究がしたいといいつつもツネノリ抜きの時間を受け入れてくれていて俺は久しぶりにゆったりとした時間を過ごすことが出来た気がしていた。


夕方、東から「またお見送りが来ている。退社時刻だそうだ」と言われたので帰る事になった。


「ルル、無理はしないでくれ」

「わかっておる。今子供たちは昏睡状態だからの、やれることも限られておる」


俺がゼロを出ると部屋の入り口にはここ毎日の風物詩になった、北海のお見送りが待っていた。


「お疲れ様です。副部長」

「ああ、君も毎日マメだね」


「ええ、副部長にお子様達抜きでプレイヤーがどこまでやれるか楽しみですので」

「なるほど、俺が居たらダメな話だね」


「ご理解ありがとうございます」

その声に合わせて俺は東に別れを告げて北海と出口を目指す。


「今日は千歳様も常則様も大活躍でございましたね」

「ああ、親の知らない所で子供は大きくなるもんだな」


「常則様の師匠はどの方も素晴らしい方ですね」

「君はザンネもテツイも知っているんだろう?」


「ええ、私と言うか私の使いが見たものを追体験しましたから」

「その点に対して何か複雑な気持ちとかはあるのかい?」


「いいえ、あれは結果でしかありません。

それに部長の使いもそうですが、部長とは別人格ですよね?

私の使いは私に少し似せましたが別人格ですのでそこまで何かを思うと言う事はありません。

そうですね…、こう言えばいいのでしょうか?

私の使いがしてしまった事に謝罪とかの気持ちはありません。

代わりに、散々嬲り殺された私の使い…彼女たちの敵討ちをしたいと言う気持ちもありません」


「そういうものなのかな?」

「わかりません。私はそうなだけかもしれませんね」


「最後に一個いいかな?」

「はい、何でしょう?」


「千歳やツネノリの頑張りは想定範囲内かい?」

「どうでしょう?確かに今日の結果は驚きました。特にツネノリ様が高速移動をされて台風を引き起こしてタツキアを守り切れるとは思っていませんでした」


「そうか、今日も見送りありがとう。明日もお手柔らかに頼むよ」

「はい副部長、本日もお世話になりました。明日もよろしくお願いします」


そう言うと俺は帰路に就く。

家では今日も千明がツネノリと千歳の活躍を見て目を輝かせていた。


「おかえりなさい。

ツネノリ君の彼女、メリシアさんって言うのね。

とても優しそうないい子で私応援したくなりました。

イベントが終わったら是非タツキアに旅行に行きましょう!!」

千明が嬉しそうにそう言う。


「ああ、千歳が応援している。千明も気にいるかもな」


寝る前にスマホでイベント状況の確認をした所、プレイヤー達は爆弾を抱えての特攻や防御を捨てての攻撃でギガントダイルと言う新種の魔物を撃退してセンドウを守っていた。

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