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セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
伊加利 千歳の章⑤妹のお節介。
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第72話 来てくれてありがとう。

お父さんが来るのは明日の朝だと思う。

できる準備なんかはほとんど無いので夕飯までは自由行動にする事にした。


メリシアさんは午後4時までは休憩と言っていたのでツネノリの相手を頼んだ。

1時間くらいしか無いけどゼロよりいいと思う。

これはあくまで妹としてのお節介。


1時間なら散歩しても時間は潰せるのだけど私は他にもモヤモヤしている事があったので済ます事にした。

「東さん、今来れる?」

「千歳?どうかしたのかい?」


「うん、1時間あるから話をしたいなって思って」

「そうか」


「後、ジョマも見てる?来れる?」

「千歳?」


「アハハハ、何?私も?」

「うん、一度東さんとジョマと3人で話をしてみたくて」


「私は別にいいけど、東が来るかしら?」

「東さん?」


「……千歳がそれを願うならいいよ」


そして次の瞬間、東さんと普段とは見た目の違うジョマが居た。

「いつもの姿はお休みなのは構わないでしょ?」

「うん、ジョマ、東さん…、来てくれてありがとう」


そして私達は近くのカフェに入る。

店員さんは東さんを知っているので個室に通してくれた。

部屋に入ってすぐ、ジョマが私に紙袋をくれる。

「千歳様の欲しいものよ。お兄様のも入っているわ」

中を見ると下着だった。

私は赤くなりながらジョマに感謝を伝える。


「アハハハ、いいのよ。そこら辺東やお父様は気が使えないでしょ?昨日あの宿の娘に洗われて恥ずかしかったでしょ?」

「うん、出来るなら自分で洗えるように洗濯機とか欲しいかも」


「ほら、ご要望よ」

「うん、参考にするよ」


「それで?千歳様は何が話したいの?」

「あんまり決めてないんだけど、2人と一緒の場所にいてみたくなったの」


「千歳……」

「アハハハ、それだけで神と呼ばれる存在を2人呼ぶなんて千歳様って本当素敵」


2人は対照的に呆れて喜んだ。

「聞いてみたいのは明日からの事とかもあるかな」

「何?答えられる範囲ならいいわよ」


「あ、先に東さんはジョマに言いたい事とか聞きたい事って無いの?」

「僕かい?そうだね…、なんでスタッフ達がアーティファクトを使えるようになっている?」


「あら、わからない?」

「君の口から聞きたい」


「千歳様はわかる?」

「なんとなくね、今聞いて驚いたけどメリシアさん達はアーティファクト使えなかったんだ」


「私は可能性を否定しないの。

何でスタッフは力を持ったらダメなの?」

「それが君の理由かい?」


「ええ」

「え、それだけ?ジョマ、折角なんだから嘘はダメだよ」


「あら、アハハハ。

じゃあ千歳様は他に何があると思うの?」


「ジョマの目的は明日以降、自分の身は自分で守りなさいってやりたいんだと思う。

多分、東さんがアーティファクトを使える事がわかった時から東さんがスタッフの人達にアーティファクトを配るのを期待している」


「千歳…」

「さすが千歳様」


「東さん、東さんはアーティファクトを配るのは嫌なの?」

「僕はツネノリとも話をしたけど、そう言うモノは渡したくないんだ。スタッフに戦う力は不要だと思う。

千歳、君の世界にあるテーマパークでスタッフが武装しているなんてあるかい?」


「うーん、警備員さんはいるかな?」

「そうだね、でもそれすら必要のない世界が作れるなら僕はそれを作りたいんだ」


「優しいだけの世界よね」

「ジョマ、東さんの世界もジョマの世界も私には必要だと思うよ?」


「それはそうよね。

東、やはりサードは必要なのよ」

「北海、今はその話はしていない」


「あら怖い」

東さんが怖い顔でジョマを睨む。

サードガーデンの話はお父さんから聞いている。

その世界に住むスタッフの人達が無事ならそれも良いのだろう。


「ジョマ、サードガーデンの事を見据えてこんな事をしているの?

サードガーデンに行く事になったスタッフの為に?」


「ふふふ、さすが千歳様。それもあるわ」


「そう言えば東さん。

このセカンドガーデンの人って、生まれた時からお爺さんお婆さんとか生まれた時からおじさんおばさんなの?」

「いや、最初はかりそめの命で作った大人を100人用意してそこに僕が生み出した最初の子供達を50人預ける。

その子供達が繁栄するまで世界を進めたんだ」


私は何気なく思った疑問を聞いて納得をしていた。

そうやって真摯に作っているからこの世界に辺な気持ち悪さが無いのだ。


「あ、一個気になったの聞いても良い?」

「何?千歳様、どうしたの?」


「セカンドガーデンって大体いくつくらいの人がプレイしてるの?」


「一応、最低年齢は12歳以上としてるけど実際は10歳くらいから上は50歳くらいかな?」

「ふふふ、年齢性別問わずに楽しめる。

それも魅力の1つよね。VR側は東が頑として認めないから性別と年齢は誤魔化せないけど、端末機の人達は性別や年齢は好きにいじれるから男の人が女湯だって好きに入れるのよ」

「え?、じゃあもしかしたら今後温泉で会う端末機の人って…」


「そうね、男の人が性別を詐称している可能性もあるわね」


「嫌っ!何それ!気持ち悪い!!」

私は気持ち悪さに取り乱した。


「千歳、落ち着いてくれ、端末機には残酷表現やそういった表現は外してあるから、君が1日目に見た肉塊になった友達は端末機ではただ横たわるだけだっただろ?」


「あ…」

そう言えば佐藤がそんな事を言っていた。


「私はそれが嫌だから、サードガーデンを作れたらそう言うのを取っ払いたいのよね」

ジョマが恐ろしい事を言う。


「それ、良くないよ!」

「えー、千歳様と初めて意見が合わなかったかもー」

ジョマはニヤニヤとブー垂れてコーヒーを口に運ぶ。


「千歳、君のその意見は貴重だ。

僕はそれをキチンと取り入れて性表現と暴力表現には力を入れて行くから安心してくれ」

「うん」


「あら、お兄様のお楽しみは終わったみたい。

こっちに来るわね」

ジョマが言って暫くするとツネノリがやってきて面子を見て驚く。


「千歳…、これはなんだ?」

「こんにちは、お兄様。

千歳様にお呼ばれしたのよ。中々楽しかったわ」


「じゃあ、そろそろお開きかな?」

東さんが終わる方へ舵を切る。


「うん、ありがとう東さん。ありがとうジョマ」


「いいのよ、楽しかったわ」

「ねえ、ジョマ?」


「なぁに?」

「もう一個聞きたいの」


「いいわよ」

「ジョマはどうやっても勝てない敵は用意しないよね?」


「ええ、私は千歳様達全員が持てる力を出し切れば勝てる戦いしかしないわ」

「ありがとう。頑張る。

ツネノリも頑張れるよね?」


「ああ、タツキアの村は俺が守る」

「あら、お兄様は村よりもあの娘さんに思えるけどね。まあどっちでも良いわ。頑張ってね」


そう言ってジョマは消えて行く。

「あ、お茶代…」

「貰い忘れたのか?」


「うん、私が誘ったから仕方ないのかな?」


「アハハハ、払っておくわよ」と声がする。

「ジョマ、またね〜」


「ふふふ、ええまたねぇ」


「じゃあ僕も帰るよ。

千歳のおかげで貴重な時間を過ごせたよありがとう」


「ううん、東さんもありがとうございました。

でね、一個言ってもいいかな?心読んじゃった?」


「いや、何もしていないよ」

東さんはそう言って私を見て微笑む。


「嫌かもしれないけど、東さんとジョマは2人でいても気持ち悪くないよ。だから2人で力を合わせたらサードガーデンはダメな世界にならないんじゃないかな?」


「え?」

「ごめんなさい。でも話しててそう思ったの。後はバランスとか匙加減とかに思えたの」


「千歳、やめるんだ」

ツネノリが私を止めてくる。


「東さん、ごめんなさい」

「いや、千歳がそう感じたのならそれは千歳の意見としていいと思うよ。

選ぶかは僕次第だけどね」


「はい」


そして東さんも「ツネツギは明朝に行くように手配しておくよ。

今日は明日に備えて早寝してね」と言って帰って行った。


「千歳、お前は本当に怖いもの知らずだな」

「そうかな?」


「普通神様を呼んでお茶なんてしないだろ?」

「楽しかったよ」


そう言うとツネノリは「はぁぁぁ…」とため息をついて心配をかけないでくれと言って歩き出した。


「ねえ、ジョマが言っていたんだけど、ツネノリは楽しかったの?どうだった?」

「答えない。帰って風呂に入るぞ」


「あ、ジョマが下着をくれたよ」

「本当か!?それはありがたいな」


「だよねー」

そんな事を言いながら宿に帰る。



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