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セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
ツネノリの章①強制召喚。
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第7話 父さん!俺やってみるよ!!

「よし!では行くぞ!!」

そう言って母さんは腕輪を装着した。


「おう!いいぞー」

そう言って父さんも「勇者の腕輪」から光の盾を出す。


「まずは私だ!【アーティファクト】!」

母さんがそう唱えた瞬間、腕輪を装着して父さんの方に突き出した腕の前に、光る球…雷の球が発生した。


「よし、ここまではうまく行っている!行け!!」


母さんの声に合わせて勢いよく雷の球が父さんの方に向けて一直線に飛んでいく。


「うおっ!?」

だが父さんの光の盾は無事にそれを防ぐ。


「どうだツネツギ!中々のモノだろう?」

母さんはニコニコしながら聞く。


母さんはアーティファクトの出来よりも父さんとの時間を大切にしている。

だから未だに研究を続けるし、難度の高いアーティファクトを作っては父さんと検証をしているのだと思う。


「ああ、中々の威力だ。まあマリオンのアーティファクト砲を受け止めたことが無いから比較はできないがこれも相当だと思うぞ!」


「ふっふっふ、そうか!?そうであろう!!」

母さんはとにかく嬉しそうに言う。


「よし!次はノレルになる!」

そう言って母さんは胸の宝石を捻る。


そうすると母さんの髪の色が紫色から青色に変化をする。

ノレル母さんになった。

母さんは母さんの中に4人居る。

元はルル…母さんだが、実験で2人、青い髪のノレルと赤い髪のルノレに別れてから再度合体して母さん、ノレル母さん、ルノレ母さんに別れ、そしてもう一人ノレノレ母さんになった。


「ツネノリ、久しぶり元気かな?」

ノレル母さんは父さんを放って俺に話しかける。


「うん、ノレル母さんも久しぶり!」

「出来ればもっとツネノリとの時間も欲しいのだが、ルルが中々時間をくれないのだ。今度ゆっくりと話でもしよう」


「うん、わかったよノレル母さん!!」

そう言うと母さんは微笑んでくれた。


「ルル、わかってる。検証だろう?ヤキモチを焼かないでくれ。ツネツギ!行くぞ!」

「あいよー、ノレルも大変だな。ああ、久しぶり」


「ああ、久しぶりだな。久しぶりが検証なのが申し訳ないけど行くぞ。【アーティファクト】!」


ノレル母さんのアーティファクト砲は母さんの時よりも雷の球は大きいが、その分速度が遅くなっている。

「ふむ、やはりそうなるか。次はルノレだな。ツネノリ!また会おう」

「うん!」


そう言うとノレル母さんは胸の宝石をさらに捻る。

ノレル母さんの青い髪は赤くなる。


「ツネノリィー!!」

今度はルノレ母さんが俺に抱き着いてくる。


「ルノレ母さん、久しぶり」

「うん、久しぶり。もう酷いよね。ちっとも私達にしてくれないんだよ私は」


「そうだね」

「今度ツネノリからも私に行っておいてよね」

そう言いながらルノレ母さんが俺に頬ずりをしてくる。



「ルノレ母さん、俺もう17だよ?」

「いいのー。あ、忘れてた。ツネツギ久しぶりー」


俺に抱き着いたまま父さんに手を振るルノレ母さん。


「ルノレも久しぶり。ルノレもアーティファクト砲を試すのか?」

「うん、やってみろって言ってるよ」


「よし、じゃあ撃ってくれ」

「行くよー。【アーティファクト】!!」


ルノレ母さんのは雷の球は3人の中で一番小さかったが一番速かった。


「うおぉっ!?」

父さんも驚いている。


母さん毎に得手不得手がハッキリしているのが原因だと思う。

母さんは雷も風も両方普通に使える。

ノレル母さんは雷が得意で風が苦手。

ルノレ母さんは雷が苦手で風が得意。

大体こんな感じだと昔母さんが言っていた。


だが、父さんに言わせると結婚して約20年になる訳だが、その間に母さん達は少しずつ成長をしたらしく、ノレル母さんは駄目だった風の力を少し使えるようになって、ルノレ母さんは雷の力を使えるようになったと言っていた。


「大体こんなもんか」

父さんがやれやれといった顔をする。


「ノレノレちゃんもやるって」

「え?ノレノレって使えるのかな?」


「それは建前で本音はツネノリに会いたいんだよー」


そう言ってルノレ母さんは宝石の頂点を下に向ける。

今度は灰色がかった紫色と言うかほぼ灰色の髪色をしたノレノレ母さんが出てきた。


「にひひ、ツネノリー、母ちゃんお前に会いたかったよー」

そう言うとニコニコ笑ったノレノレ母さんは俺に抱き着いてくる。


「母さん、久しぶり」

「本当、ルルちゃんが酷いよね。いつもツネノリとツネツギを独り占めするんだからさー」


そう言った母さんは俺から手を離して今度は父さんに抱き着く。

「ツネツギー。久しぶり!」

「ああ、ノレノレも元気そうだな」


「うん、でも最近は出番が無いからあんまり外に出して貰えなくて退屈だよー」

「ルルにも困ったものだな」


「本当、ツネノリにもツネツギにもみんな会いたいんだよね」


「さ、さっさと検証をしてしまおうぜ?」

「ん、だめ。後30秒はこのままでいさせて」


ノレノレ母さんはそう言って父さんに抱き着いて離れない。

子供の前なんだけどなぁ…と普通の親子なら思うのかもしれないが俺は父さんと居られる時間が限られている以上母さんのこういう行為を否定も邪魔もしない。


2分くらいが過ぎたころ「ツネツギ、もう30秒経ってるよー?」とノレノレ母さんが言い出した。

「ノレノレが言うまで少し待とうと思ってたんだ」

父さんはノレノレ母さんを気遣っていた。


「にひひ、ありがとう。ルルちゃんがヤキモチ妬くからそろそろ検証をしちゃおう!」


そう言って父さんと距離を取るノレノレ母さん。

「きっと駄目だろうけど…【アーティファクト】!」


少し待ってみたが、何も起きない。

ノレノレ母さんはアーティファクトの使用が偏っていて、誰でも扱えるようなものは使えないと言っていた。

逆に使用者が限定されたり、常人には使用できそうにないアーティファクトなら使えるらしい。


「あー、やっぱダメかー、残念。そろそろルルちゃんが煩いから変わるねー。2人ともまたねー」


そう言ってノレノレ母さんは母さんに戻った。


「まったく、どいつもツネノリにベタベタしおって…」

母さんはぶつくさと言っているがその顔は決して機嫌が悪い顔ではない。

検証の成功と父さんが居るからだと思う。


「よし、ツネノリ…、腕輪を試してみてくれ」

「うん」

そう言って俺はアーティファクト砲の腕輪を装着する。



「父さーん、準備は良いー?」

「俺は構わないが、ツネノリ…お前…真っ直ぐに撃てるのか?」


お?

おっと…確かにそうだ。


「母さん」

「構わん、やってみろ。ツネツギ、走ってでも受け止めろよな」


「おいっ!俺に厳しいだろ!!」

「あははは、わかったわかった。私も二つほど手を貸しておく。【アーティファクト】」

そう言って母さんは父さんに速度上昇のアーティファクトを使った。


「これで大暴投でも追いつけるだろ?」

「…うぅ…そういう事じゃないだろ…」

父さんはブツブツと言っているが父さんも母さんに振り回されるのはまんざらではないのだ。決して怒り顔ではなくニコニコとしている。


「もう一つは…、ツネノリ…よく聞け。アーティファクト砲は腕の延長線上に発射される。だから必ず腕を曲げずに真っ直ぐに父さんのど真ん中を狙え!」


「狙え!?」

父さんが叫ぶ。


「ありがとう母さん。父さん!俺やってみるよ!!行くよ!!」


そう言って俺は腕輪を付けた左腕を父さんに向ける。


「【アーティファクト!!】」

俺がそう言うと俺の腕の前に雷の球が発生された。


「よし!いいぞツネノリ!撃て!!」

母さんが後ろで指示をくれる。

俺はそのまま父さんを狙って撃つ。


俺の意思に反応して雷の球は母さんと同じくらいの速度で父さんめがけて飛んで…あれ?


「お前…ツネノリ!狙いが甘い!!」

父さんが叫びながら雷の球を追いかけていく。


ちょっとそれてしまったが速度が速くなっている父さんは何とか雷の球を追いかけて居る。



「ちくしょう!俺は44だぞ!何で全力疾走してんだよぉぉぉ!!」

そう言って走っていく父さんを母さんは愛おしそうに眺める。


「母さん?」

「ん、付き合わせて済まないなツネノリ」


「いいけど、大丈夫?」


「ああ、私はこうする事でしかツネツギの心を癒してやれん」

「え?」


「ツネツギ…父さんな、向こうの世界で家族とうまく行っていないらしい」


その言葉が俺には衝撃的だった。

父さんはこんなに素晴らしい人なのになんでうまく行ってないのだ?


「何で!!?」

俺はたまらずに母さんの肩を掴む。


「いや、ツネツギ…父さんは詳しくは言わない。多分ここと向こうの二重生活が思いの外大変なのだろう。お前は父さんに何も聞かないが向こうではそうも行かないのかもしれないな」

母さんは泣きそうな顔をしている。


「母さん…」

「おっと、ツネツギが戻ってくる。私たちは笑顔で居るんだ。それがツネツギ…父さんとの絆になるのだからな」


そう言った母さんはもう笑顔になっていた。

俺は今日、母さんの強さを見た気がした。


父さんは「何とか被害は出さなかったぞー!」と言いながら笑顔で戻ってきた。


父さん、母さん、辛いのに笑顔で居なければいけないなんて親って大変だね。


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