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セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
ツネノリの章①強制召喚。
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第6話 俺達はそんな事で父さんを嫌いになったりはしない。

流石は季節が夏なだけはある。

起きたら汗でシャツがぐっしょりと濡れていてとても気持ちが悪い。

とりあえずリビングに向かって水を飲もう。


リビングに行くと母さんが朝ごはんを作ってくれていた。

「おはよう、母さん」

「おお、おはようツネノリ、いいタイミングだ。

さすがは私の子だ」


母さんがいつも通りの挨拶をする。

俺はとりあえず起き抜けに水を一杯飲む。


「さて、そろそろご飯が出来る。父さんを起こしてきてくれ」

「わかった」


俺は父さんと母さんの寝室に足を入れる。


布団がもぞもぞと動く。

俺の足音を聞いて父さんは布団にくるまったのだろう。


「父さん、起きてるなら起こしに来る前に起きてよ」

布団の端から見えた金髪がもぞもぞと布団の中に逃げていく。


俺は一気に布団を剥ぐ。


「布団の中に籠って暑くないの?」

「暑い…」


「なら起きなよ」

「お前かルルが起こしに来てくれるのがいいんじゃないか」


…まったく。いくつになっても父さんは子供だ。

そう言う父さんを連れてリビングに行く。


「おはよう…ルル…」

「おう、おはようツネジロウ」


そして顔を洗った俺と父さんが着席すると、パンとベーコンエッグが出てきた。

「「「いただきます」」」


そして俺達の朝食が始まる。


「ルル?今日の予定は?」

「出来たら昨日作った人工アーティファクトの検証をしたいのだが、ツネジロウの都合は?」


「俺なら大丈夫だ。検証が終わったら水汲みとかはしておかないとな」

「ではツネノリはどうだ?私だけではなくツネノリが使った時の感覚も見たい」


「いいよ、また父さん相手に打ち込めばいいんだよね?」

「…お前達、もう少し俺を大事にしてくれ」


父さんが「おいおい」と言いながら笑う。

母さんは「これ以上ないほどに大事にしている」と言って笑う。


これが見慣れた我が家の光景。


母さんはイーストと言う国の城で働く?アーティファクト使いだ。城に行ったところはほとんど見たことがない。


アーティファクトと言うのは神様から人間に贈られた遺物の事で、人間が火を発生させたり、風を吹かせたり、氷を生み出したりできるようになったり色々と凄いことが出来るようになる。

本来それらは全て神様から授かるのだが、母さんは自分でそのアーティファクトを作ってしまっている。


父さんは「勇者の腕輪」と言うアーティファクトに選ばれた勇者で、その他のアーティファクトは制約で基本的に使えないらしいが、勇者の腕輪で剣と盾を用意できて戦うことが出来る。

まあ、戦うと言っても狼や熊とか一部のモンスターが相手でこの世界に危険な事は無い。


「で、母さん。今日は何を作ったの?」

俺が疑問を口にする。


「ふふふ、よく聞いてくれた。これだ!」

そう言うと母さんはテーブルの上に腕輪を置いた。


「能力は?」

実験台になる父さんは真剣な顔で母さんに聞く。


「アーティファクト砲だ」

「マジかよ」

父さんがげんなりして母さんが胸を張る。


「母さん、何そのアーティファクト砲って?」

「おお、ツネノリは知らなかったのぉ、マリオンは覚えておるか?」


「うん」

マリオンさんは父さんと母さんの古い友達だ。

物凄く綺麗な人で子供が沢山いる。


「そのマリオンの鎧姿は見たことがあったかな?その鎧にはな、アーティファクト砲と言って、雷の球を風のアーティファクトを使って噴出して相手に当てる武器が付いている」


「それを母さんは作ったんだ」

「ああ、そうだ。だが今回凄いのは、筒を使っていない点と複数のアーティファクトを一つの腕輪に集中させたことだ」


「…ああ、それで後は威力がみたいのね。それで俺に試そうと言うわ…」

話している最中の父さんが突然、びくっと揺れて髪の色と目の色が徐々に黒くなる。


「父さん!!」

「おはようツネノリ」

父さんは俺に微笑みかけてくれる。


そして笑顔のまま母さんを見る。

「おはようルル」

「ああ、お帰りツネツギ」


母さんも金髪の時の父さんよりも黒髪の父さんの方が嬉しそうだ。


「え、アーティファクト砲を作って俺で試すの?マジで?」

父さんは今帰ってきたばかりなのに状況がもう飲み込めている。

これは神様が父さんと母さんに授けてくれたもの。


父さんは異世界の人間で、昔このガーデンに召喚をされて母さんや仲間達と世界を救ったと言う。

そして元の世界に帰る時に母さんと離れ離れにならないで済むように神様が金髪の父さんを授けてくれて、父さんの居ない時は父さんと同じように振舞ってくれるし、記憶も何もかも父さんに受け継がれる。そして父さんの記憶も金髪の父さんに受け継がれるので俺や母さんは寂しさを感じない。


まあ、母さんはそれでも金髪の父さんよりは黒髪の父さんが好きみたいで、父さんが帰ってくるとパアァっと明るくなる。


父さんは週に5日はこっちに居る。時たま週に6日になる時もあれば泊っていく事もあるが、基本的には朝食の頃に来て、夕食を食べるか食べる前に帰ってしまう。

なので日中は極力父さんと一緒の時間を過ごすようにしている。


「なあ、俺も今年44だぜ?いい加減俺を実験台にするのはどうなの?」

父さんが笑いながら母さんに言う。


母さんも嬉しそうに「ならツネノリに頼んで身体を鍛えて貰えばいい」と笑う。


「それって問題解決にならなくね?」

「ははは、そうかもな」


「なあ、勇者の腕輪のレプリカを作ってツネノリに持たせれば解決じゃないか?」

「馬鹿者が、万一の事があって私たちのツネノリが怪我をしたらどうする?」


父さんと母さんの掛け合いは終わらない。


「おま…、俺に万一があって怪我をしたらどうすんだよ」

「その時はルノレになって回復をしてやる。安心しろ」


「んぎぎぎぎぎ、ああ言えばこう言う!」

「あははは、だから諦めろツネツギ」


その一言で皆が笑う。



「水汲みは俺が行ってくるから父さんと母さんはゆっくりしていてよ」

俺は食事を先に済ませてそう言って立ち上がる。


父さんと母さんが2人きりで過ごせる時間は多くても一日に8時間ちょっとしかない。

元の世界で父さんの眠る時間も考えると十分に多いのかもしれない。

だが、やはり父さんが向こうに行ってしまって金髪の父さんになった時の母さんの寂しげな顔は毎日見ていて悲しい。


父さんは、その事について神様に相談をしたことがあったと俺に以前話してくれた。

その事と言っても父さんと母さんの事ではなく、金髪の父さん「ツネジロウ」の事だった。


俺自身、自覚は無いのだが、俺も父さんに戻った瞬間に嬉しそうな顔をしていたり、母さんみたいに金髪になった時に寂しそうな顔をしてしまっていると言う。

ツネジロウはそう言う空気を感じないように、入れ替わり時のみ寂しげな表情や声を察知しないようにして貰ったと言っていた。


母さんには個別で父さんが申し訳ないと謝ったと言っていた。

だが、父さんにも向こうでの生活があるのだ。

謝る必要は無い。


俺達はそんな事で父さんを嫌いになったりはしない。

そんな子供ではない。


向こうにも家族が居ると聞いた。

母さんはその事を真剣に考えたと言っていた。


多少ショックはあったが、父さんはあちらの世界の人間だから受け入れるしかない。

そしてそれ以上に、この世界に来てくれて色々と世界の為に尽力をしてくれている。

更に持てる全てで俺達を愛してくれている。

去年辺りから父さんにどこか元気がないのが気になっている。

母さんは何かを知っているらしい。

だが父さんは俺には何も言わない。

早く父さんに頼られる男になりたい。

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