第59話 先生とは誰だ?
くそ、ツネノリが気絶した。
怪我の度合いが気になるがプレイヤーの進行が激しくて前にしか集中できない。
そもそも300対俺ってどうなんだ?
北海の奴、千歳は良い人と言っていたが何処がだ?
いや、もしかするとそう言う所に気付いた千歳がこの事態を解決する鍵なのかもしれない。
今はツネノリに集中するんだ。
「千歳!!!」
「どうしたのお父さん!!」
俺は橋の反対側でプレイヤーを受け持っている千歳に声をかける。
「ツネノリが気絶した!」
「嘘!!」
「嘘じゃない!様子を見て欲しい!出来るか!!」
「ちょっと待って!後10人倒さないと突破されるよ!!」
「くそっ!出来次第でいい!!俺がその間300人を何とかする!!」
俺は徹底的に銃火器使いと大砲使いから倒す。
遠距離から人質やツネノリを狙われては敵わない。
「おい!あいつ人質と気絶した仲間を守っているぜ!」
まずい!気づかれた。
今までは気づかれる前に斬り刻んでいたからバレなかったがこう数が多いと無理だ。
「よし、近接組は前に出ろ!壁になってくれ。二重だ!!」
くそ、倒している連中の後ろに控えている奴らが陣形を組み始めた。
「橋が壊れると困るから先に銃火器で試すぞ!銃火器隊6人!一斉に気絶している奴を狙え!!」
ツネノリ!!!
「やらせるか!!」
「おっさんは行かせねえぇよ!!」
目の前にはこん棒と剣を構えた大女と小男が邪魔をしてくる。
こんな奴らに東の国の勇者様が負けるか!!
俺はゼロガーデンに召喚された時、東のイーストって国で勇者として呼ばれた。
それ以来、ガラでもないのに勇者をしている。
本当はゼロガーデンに居るカムカって言う親友の1人が本物の勇者だった。
この「勇者の腕輪」が手違いで俺なんかを呼んでいた。
だが、今は面倒くさい勇者の肩書すらありがたく感じる。
俺は一瞬で2人を細切れにする。
元々、俺は家族の為なら他のモノは平気で切り捨てられる。
そう言う部分も今の状況にはお似合いかもしれない。
3人目、槍を持った女が向かってくる。
槍を細切れにしてから女を一刀両断する。
ツネノリを狙う銃火器を見る。
何とか射線に立って盾で防ぐ。
俺の盾なら大砲にもひるまない。
そこまで徹底して修行をした。
ゼロに居る仲間たちの本気の一撃を受け止める修行もしたんだ。
今が本領を発揮する時だ。
だが、もう銃から弾は発射されていた。
くそ、盾を張る時間が無い。
こうなれば身体で全てを受け止める。
死ぬ程痛いが死なない身体になっているんだ。
何が何でも子供は守る。
親って言うのはそう言うもんだ!
「ツネノリ!!!」
何とか高速移動で弾より先にツネノリの前に立てた。
俺は身体全体を倒れているツネノリに被せる。
直後にくる激痛。
6人の銃火器使いが多分ありったけの弾を撃ったんだろう。
俺はハチの巣で死んだ。
「ぐぅぅぅぉおおおぉぉぉぉあぁぁぁぁ!!!」
「お父さん!!」
遠くで千歳の声がする。
「やった、邪魔なジジイは殺せた!」
「マジかよ!!」
銃火器使いが一斉にどよめく。
「このジジイ、まさかランク30かよ!?」
「何、ランク30?そんな奴…、コイツ運営のベテランプレイヤーか!それなら合点がいく!」
「俺、今ランク7だったのに一気にランク8になれたぜ!!」
「マジかよ!じゃあ魔物連れてきてジジイをずっと殺し続けたら俺達もランク30が夢じゃねえ!!」
プレイヤー達がバカみたいなことで盛り上がっている。
勝手に盛り上がってろ、今のうちに回復してお前らなんて斬り殺してやる。
痛みの無い端末プレイヤーで良かったな?
殺されるのって言うのはな、死ぬって言うのはな…滅茶苦茶痛いんだよバカヤロウ。
「お父さん!!」
まずい千歳の声がする。
千歳がこっちに来て戦闘になって殺されたら話にならない。
俺は慌てて身体の再生を待つがどうにも治りが遅い。
もしかすると身体に弾が残っていると治るの大変なのか?
ん…?
今ツネノリが動いた気がした。
俺はツネノリに呼びかけたかったがうまく声が出せない。
血か何かが喉に詰まったか?
「せんせい、おれがとうさんとかあさんをまもる」
ツネノリが急に子供の時のような喋り方をした。
先生?
誰の事だ?
ツネノリは学校に通わせなかったぞ。
勉強は俺とルルで十分に…
…俺は申し訳ないが千歳の勉強風景を思い出していた。
俺と千明が頑張って教えても千歳の出来は普通だった…
学校に行かせても、塾に行かせても普通だった。
あれ?
何でツネノリはあんなに出来た?
「出来たか?それでこそ私の子だ!すごいぞツネノリ!!」
「お、すぐに出来るようになったなツネノリ、凄いぞ。ルルに似たのか?」
「何を言う、ツネツギに似たからこそ出来が良いのだ!いや、私達の子だからツネノリはこんなに出来が良いのだ」
「そうか!俺とルルの子だからか」
「とうさん、かあさん。おれ!がんばるね!!」
「ああ、私よりも天才のアーティファクト使いになってくれ!
ツネツギよりも強い勇者になってくれ!」
「うん!!」
俺はルルと一緒にツネノリに勉強を教えた日の事を思い出していた。
…自身の親バカ具合に頭まで痛くなってきた。
親って奴はあの時に何で不思議に思わないんだ?
「父さん!!」
「なんだ?」
「俺、父さんの真似して剣を持ってみたんだ!練習付き合ってよ!!」
そう言ってゼロガーデンの仲間に分けて貰った刃の入っていない剣を持ってきたツネノリに剣の稽古をつけた日。
ツネノリの動きは初心者離れをしていた。
「お前…どこでそんな動き…」
「父さんの事はずっと見ていたからね!!」
そう言って笑うツネノリの顔で俺の子供は凄いなと感嘆して納得してしまっていたのだった。
何か大変なものを見落としてしまった気がする。
先生とは誰だ?




