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セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
伊加利 常継の章④父が見る世界。
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第49話 あの野郎…どこまでやれば気が済むんだ?

俺はフナシの街に来た。

今は24時を過ぎて12/4になった所だ、さっきまで外の世界で寝ていたので今晩はこのまま起きているつもりだ。


先にスタッフカウンターに顔を出して現状の確認をする。

「息子さんとお嬢さんがお見えになっていました。今は宿を取られてそちらに行っていると思います」

「ありがとう。それ以外の状況を聞いてもいいかい?」

「はい、あまり良くはないですね。とりあえず今朝の段階だと殺す者と殺されていた者で綺麗に二極化していましたが、今晩になって状況が一変してしまい。おそらくこの街だけでも8割のプレイヤーさんが一度は同士討ち…、他のプレイヤーさんに殺されています」


「それで、それだけじゃ済まないよね」

「はい、仕返しをしたいと言ってスタッフカウンターに来る人が非常に多かったです。

さっきもお嬢さんが心配していたプレイヤーさん達が大挙して山に向かわれました」


千歳が殺人を犯してしまったと言うアレか…


「ああ、その事なら聞き及んでいる。

そのプレイヤーは時間いっぱいまで復讐をすると言っていたようだ」


「……そう言うの残念でなりません。この先セカンドガーデンはどうなってしまうのでしょうか?」

「大丈夫、今外の世界で神とも話し合っている。悪い事になるべくならないように俺達が出来る限りの努力をする」


「はい、ありがとうございます勇者様」

「おっと、人が来るな、俺は子供たちの所に行く。何かあったら神経由で連絡してくれ」


「わかりました。良い旅を!!」

良い旅か…、これは東と決めた見送る言葉のひとつ。

俺のお気に入りは「頑張ってください」なんだが、まあ聞くところによるとそこら辺のマニュアルも形骸化していて、随分とスタッフのアドリブが入り込んでいて「行っといでー」と言うものまであるらしい。

…流石に俺にそれをやるスタッフは見たことが無い。


俺はホテルに行く。スタッフとは顔見知りなことと前日に東が回してくれた通達があるのでツネノリと千歳の部屋に通される。


俺はノックをして入るぞと声をかける。


部屋に入るとベッドの上で丸くなって寝ている千歳と、その横で千歳をあやすツネノリと2人が助けたと言う新人の子が居た。


「父さん」

「遅くなった」


「ううん、父さんが来てくれてよかったよ。ごめん…千歳が」

「ああ、聞き及んでいる。良くやってくれた」


「えぇぇぇっ?」

俺を見て初心者枠の男の子が慌てている。


「何だ?」

「あの…コロセウムで、ベテラン枠でミノタウロスを完封していた人ですよね?」


「ああ、そうだが」

ああ、あの時の俺を見ていたから驚いているのか…


「それに伊加利さんのお父さんですよね?ガーデン開発部の?」


!!?

何だコイツ?

何で俺を知っている?


「あ、遅くなりました。僕、伊加利千歳さんの同級生でクラスメイトの佐藤って言います。今年の運動会にいらしてましたよね?」


…千歳のクラスメイト?まずい…


「あの…もしかして、ここに居る千歳さんって本物の伊加利千歳さんなんですか?僕ずっと同姓同名の人だと思っていました。何かの縁だと思って守っていたんです」


…まずい、まずい、まずい。


千歳がガーデンに居る事。

運営の俺がいちいち行動している事。

ツネノリの存在。


どれを取っても大変なトラブルになる。


「あ、ああ…ちょっと待ってくれ。ツネノリ」

「何?」


「一瞬席を外す。彼、佐藤君の事をよろしく頼む」

「うん、大丈夫?まさかまた魔女?」


!!?

確かに…あの魔女なら千歳の同級生をモニターに混ぜるくらい朝飯前だ。

あの野郎…どこまでやれば気が済むんだ?


俺は瞬間移動でホテルの屋上に移動して東を呼ぶ。


「東!!見ているか東!!」

「ああ、セカンドに来てからずっと見ている」


「あの佐藤って子をどうにかできないか?」

「どうって?」


「まずいだろ?

ツネノリの事、千歳の事、俺の事…、どれを取ってもまずい」


俺は段々といちいち説明の必要なこの神様にイライラしていた。

頼むから察してくれ。


「よし、わかった。地球の神とも話していたのだが、もしも外の世界の人間に影響が出るようなら僕の力で事態を治めていいと言う話になったんだ。

彼がもし君たち親子の秘密に踏み入ったり他言しようとすれば、記憶を消してどこか遠くに行ってもらおう」


「待て、待て待て待て、それはどうなんだ?」

「地球の神は僕の範疇で好きにしていいと言ってくれている。問題は無い。

それよりもこの先だ、イベント終了までまだ17日もある。

もしもの時は僕がなんとかするんだから、ここは佐藤にある程度の事情を話して仲間にしてしまおう」


マジかよ。

…ログ見たけどあの子あんまり使えそうにないだろ?

…まあ、ここで悩んでいても仕方ない。部屋に行ってツネノリに相談をしよう。


「東、とりあえず佐藤君を寝かせてくれないか?ツネノリと相談したい」

「お安い御用だよ」


俺が部屋に戻ると佐藤が床で寝ていてツネノリが何事かと慌てていた。

「父さん、魔女が出た!佐藤が急に…」

「ツネノリ、それは東の仕業だ」


そしてツネノリと作戦会議をする。

東の佐藤を仲間に引き入れる話はやはりツネノリには受け入れがたいようで拒否をされた。

俺もそう思う。

だが、手数が必要になった時の為、万一の時は東が処置をする話をして納得をさせた。


問題はツネノリと俺の関係だが、父親の居ない親戚の子を幼い時から面倒を見ているから俺を「父さん」と呼んでいる事にした。

ツネノリはやや不服そうだったが、東から「手伝ってくれたら例の君と過ごした時間の話を今度するよ」と言われて渋々承諾していた。


佐藤を起こすと佐藤は自分が急に眠ってしまった事にも驚いていたが、俺達は事情があって信用できる仲間を探していると言うと目の色を変えて「僕にもお手伝いをさせてださい」と言ってくれた。

これで強ければ頼もしいんだけどな…


とりあえず、佐藤には運営が内紛状態で二つの派閥に分かれている事にした。

従来のセカンドを守っていきたい俺達開発部が率いる保守派。

それの対極の位置に居る企画部が率いる改革派。


改革派はイベントとして色んなモノを取り入れる事でセカンドガーデンを滅茶苦茶にしようとしている事、それを機にもっと過激なサードガーデンを興してユーザーを根こそぎサードに持って行こうとしている話を主軸にした。


千歳はある種の人質として強制的にログインさせられている事。

ツネノリも親戚の子として強制的にログインをさせられている事。

2人がここに居るのは俺の関係者と言う事で巻き込まれていて、あの企画部の女がコロセウムで言った役者のタマゴとかの話は眉唾だと教えた。


「じゃあ、死ねないって言うのは?」

「それは正直何が起きるかわからない。本当にログアウトした瞬間に死ぬのかも、外で身体を斬られるのかも何もかもわからないんだ。

だが、あの女は危険な女だ。何をするかはわからない。

だから2人とも絶対に死ねないんだ。」


どうやら佐藤は熱血系の男の子で、年頃的にこう言う設定が好きだったのだろう。

あっという間に話を信じてくれた。


「大体はわかりました。それで僕は何をすれば?」

「今はとりあえず仲間が欲しい。仲間と言っても戦う仲間だけじゃない。

昨日の人殺しが横行するようなガーデンにしてはいけないんだ。

だから君が誰も殺さないだけでも、誰にも殺されないだけでも十分に俺達の助けになるんだ」


佐藤は目を輝かせながら「わかりました!!」と言ってくれる。

「君はもうすぐタイムアウトだろ?」

「はい」


「もしかしたら俺達は別の街にあの魔女…すまない。

運営のイベント担当を俺達は魔女と呼んでいる。

あの魔女のせいで飛ばされる恐れがある。

次回ログインした時に俺達が居なくても気にせずにガーデンを楽しんで欲しい」


「わかりました!僕は昨日伊加利さん達が一緒に戦っていたトビーさんとイクさんにも仲間になって貰うように話してみます。あ、勿論この話は他言無用なので絶対に言いません!」


…ちょっと心配だが、最悪の時はひと夏の思い出になって貰って神の手で神隠しにあって貰うしかない。


「そうしてくれると助かる」

「じゃあ、そろそろ僕はログアウトなので帰ります」


そして佐藤が消える。

佐藤のボディはのこのこと歩いてスタッフカウンターに向かって行った。


すっげー疲れた。

魔女め…覚えていろよ。

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