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セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
伊加利 常継の章④父が見る世界。
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第48話 セカンドを無茶苦茶にするのも千歳達を悲しませるのも全部あの女の狙いなんだ。

家に帰った俺は早速スマホでガーデンの評判をチェックした。

普段はPCを使うのだが、今そちらは千歳がセカンドに行くのに使っている。


スマホで見た新イベントの評判はまずまずでポイントが倍になった事でランクアップがしやすくなったと運営への感謝ばかりが目についた。


それを見て安心した俺は早く眠る事にした。

事態が急変したのは夜中の事で、俺は朝起きるまで知らなかった。


朝起きると、ネットの中の書き込みは運営批判とプレイヤーによるプレイヤーを使ったランクアップの効率的な方法と一晩中プレイヤーに殺され続けたプレイヤーの悲痛な叫びばかりで殺伐としたものだった。


俺はすぐにコレが魔女の狙いだと分かった。


昨日の夜は働き方改革とか言われて追い返されたが、この状況ならちょっと早く出勤をしても文句はないはずだ。


会社には8時ちょっと過ぎに着いた。


「おはよう。最悪な状況だよ」

東は俺の顔を見た途端にそう言った。


「ああ、ネットの中が無茶苦茶だ」

「更にだ」


そこで俺は改めてツネノリと千歳に何かあった事に気付いた。


「何があった!?」

「千歳がガーデンの中で人を殺した事で動けなくなっている。

率先して殺した訳ではなく、正当防衛だ…それでも14歳の女の子には刺激が強かったみたいだ」


そう言って東がログを見せてくる。

ログにはツネノリと千歳がフナシ山で4人のプレイヤーに襲われる初心者枠の端末プレイヤーを守った事、その際に当たりどころが悪くてプレイヤーが苦しんで死んだ事、千歳の苦痛を和らげるためにツネノリがアーティファクト砲でトドメを刺したことが書いてあった。


「最悪だ…」

「これは千歳の行動のみで、その前後はもっと酷い」

そして見せてもらった中には効率と言って魔物に殺される前に仲間にわざと殺されるプレイヤーを見てしまった話等が書いてあった。


「多分、VRのプレイヤーが千歳とツネノリを入れて12人しか公式に居ない事になっているのも北海の策だと思うよ」

「ああ…」


見た目がグロテスクであれば、まだ躊躇をするプレイヤーも居ただろう。

だが、あの世界のプレイヤーは殆どが残酷表現の無い端末機でのプレイヤーだ。

その中でグロテスクなモノを…、いや、物だけじゃない。人の闇を見せられればおかしくもなる。


「今、2人は何処にいる?」

「初心者枠の子と一緒にフナシのホテルを目指している」


俺は分かったと言うとセカンドに行く事にした。



俺が目を開けるとゼロガーデンにある自宅の布団の中に居た。

そうだ…、昨日はルルの前で日本に戻ったんだった。

起きてツネジロウの記憶が適用されてみると、ルルはあまり寝ないで何かに没頭している事がわかった。


記憶の中のルルは俺に「いつセカンドに行っても良いように寝ておれ」と言って布団に押し込んでいた。


「まったく…、ルルこそ寝ないと体を壊すぞ」

そう言って俺はベッドルームを後にしてルルの元に行く。


「来ていたか」

「ああ、おはよう。ちゃんと寝たか?」


「今良いところで寝るタイミングは逃した。

大丈夫、ツネツギがセカンドに行ったら寝るよ」

嘘だな。

絶対にあと少しもう少しと言って夜になる。

まだセカンドは夜中だ、少し遅れても大丈夫だろう。


「ルル、飯にしてくれ」

「何!?聞いていなかったのか?

今良いところだと言ったであろう?」


「俺はルルの飯を食わないとやる気が出ない」

「馬鹿者が!今ツネノリや千歳がどんな目に遭っているのかわからんのだぞ!」


「千歳が参ってて、ツネノリが兄貴をしてくれてた。

今は夜中だ。急いで行っても寝てる所にと千歳に怒られる。

だから先にルルの飯が食いたい」


そこまでごねた所でようやくルルが俺の気を察したのだろう。


「まったく、仕方のない」と言って手抜きもせず普段食べているものと変わらない朝食を作ってくれる。


「私にまで気を使ってどうする?」と言って居るが、嬉しそうな顔をしている。


「いいだろ、後顧の憂いは無くしたいんだよ。

ルルが元気でいてくれるから俺は気兼ねなくツネノリ達を助けに行けるんだ」


「ところで何をやってたんだ?」

「秘密だ。魔女に覗き見されたら敵わん。基礎理論は出来た。

後でペック殿に通信球で指南を受ける」

ペックって言うのは「大地の核」ってガーデンの大地に埋め込まれた土地を元気にしたりするアーティファクトから力を借りて擬似アーティファクトって言うのを作った爺さんで、もう90を超えているのだが、ひ孫に囲まれてなんとか元気にやっている。

通信球ってのもそのペックさんが作った擬似アーティファクトでこの世界のケータイみたいなものだ。

ウチのルルが作るのは人工アーティファクトで理論なんかは何度聞いてもわからないが、神様…東の真似をしてアーティファクトを再現していて、擬似と人工は似て非なる物らしい。


「ツネツギ、千歳が参っていると言うのはなんだ?」

俺はセカンドでプレイヤー同士の殺し合いが可能になった為に、それを悪用すれば容易にランクアップが可能になった事。

それによって魔物との戦いよりも一部で殺人がメインになっている事。

そして巻き込まれた2人が正当防衛で相手を殺してしまった事。

争いなんて滅多にない外の世界では殺人も暴力も珍しく、千歳が人の心の闇や人を殺してしまった事に参ってしまい動けなくなった話をした。


「そう言うことか…」

「ああ…。多分、セカンドを無茶苦茶にするのも千歳達を悲しませるのも全部あの女の狙いなんだ」


「そうだな。いくら他の外から来る者に痛みが無いとしても、本当に死なないとしても殺人の重みは変わらんからな、千歳には何とか乗り越えて貰いたいな」

「ああ」


そう言って俺は自分とルルの食べ終わった食器を片付ける。

「ツネツギ?どうした片付けなんてして」

「あ?俺がセカンドに行ったらまた没頭するだろ?」


俺はそのままルルをお姫様抱っこしてベッドルームへ連れて行く。


「こら何を…?」

顔を赤くしたルルがあわてるが知った事では無い。


「寝とけ」と言って俺はルルをベッドに追いやって布団をかける。


「こらやめろ。ツネノリと千歳が…」

「はいはい、ルルなら寝ても間に合いますー」


「私ならまだ平気…」

「目が閉じてきたから諦めろー」


「ツネツギ…私はまだ…平気…」

「はい、おやすみー」


そのままルルを寝かしつける。

限界が近いことくらい顔を見ただけでわかる。

20年の夫婦生活をなめるなって話だ。

まあ、まだツネノリは騙されるかもな。


時間は9時ちょっと前。

向こうはいい時間だが行くだけ行くかな?

殺伐としたセカンドも見ておかないとな。


俺はセカンドに飛んだ。

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