第46話 ランクって何?そんなに大事なの?
今日の夕食は簡単にピザとパスタにした。
ツネノリはどちらも食べたことがあったらしいがナポリタンは初めてだったようなので味付けに驚いていた。
とりあえず足早なのだが急ぎすぎないようにフナシ山を目指す事にした。
途中、朝話しかけた女性2人組のプレイヤーが居た。
「今朝はどうも、君たちは無事だったみたいだね」
「こんばんは、これから山に行くんですか?」
「うん、折角のポイントアップキャンペーンなのに怪我を恐れて外に出ないのは勿体ないじゃない?」
「危ないです。今山は駄目です!!」
「千歳!!」
私は我慢できなくなっていて他言無用だったのについ言ってしまった。
「知ってる。プレイヤーキラー…殺人鬼が山にいるんだろ?」
「え?」
「もうネットじゃ凄い盛り上がっているよ。
効率的なランクアップ方法ってちょっとした祭りだよ」
「ネット?」
「兄さん、後で説明する」
「それでも来たんですか?」
「ああ、やられっ放しって言うのも気に入らないしね」
「多分、私達が殺されたのも夜だから、きっと今日も出てくるよ。
今日はこっちがやり返す番だ」
駄目だ、このままじゃ人間同士の殺し合いが始まってしまう。
「私たちが何とかするから、危ないからお姉さん達はここに居てください!
兄さん、急ごう!!」
「あ、ああ…」
私はお姉さん達に挨拶をするとツネノリを連れて山に向かって走る。
ツネノリも慌てて追いかけてくれる。
山に入った所で狼の魔物が襲い掛かってきた。
元々の想定ではプレイヤー同士による魔物の奪い合いが白熱してしまい、魔物が狩りつくされてポイントアップに悩む事になるのではないかと思ったがこうして魔物が居る。
これは多分プレイヤーの対象がプレイヤーになってしまったのだろう。
「千歳!」
「駄目だよこれ!間違いなく狙いが魔物じゃなくてプレイヤーになってる。
あの4人以外にもプレイヤーがプレイヤーを殺して回っているんだ。
そして魔物に殺してもらう為に魔物を倒していないんだ!!」
「ああ、早く倒して先に進もう!!」
ツネノリが剣、私が拳であっという間に狼の魔物を倒す。
私はとりあえず佐藤を守る為に探す事にしていた。
顔見知りと言う事だけだが、後は助けたのに後ろから攻撃をされてはたまらない。
その点、佐藤なら間違いなく攻撃をしてくる事は無い。
暫く山を駆け回るとホルタウロスが3体居るのが見えた。
その傍から人の声が聞こえてくる。
「千歳、ここからはゆっくり行くぞ、下手に近づいて巻き込まれても困る」
「でも!」
「駄目だ、俺達は死ぬ。あいつらは死なないんだ。申し訳ないがそこは冷静に行こう」
ツネノリの言う事も最もだ…
私は言う通りにホルタウロスに近づいた。
ホルタウロスと戦闘をしていたのは佐藤達ではない3人のプレイヤーで1人がこん棒、1人が剣、もう一人が弓矢だった。
「俺、もうダメだ!ホルタウロスに殺される前に殺してくれ」
剣を持った男が恐ろしい事を言っている。
殺してくれ?何を言っているの?
「じゃあ、俺が殺すわ」
そう言うと横に居たこん棒の男が剣の男の頭をこん棒で殴打した。
「ぐぎゃ」と言う声を上げて剣の男は死んだ。
え?何が行われたの?これって殺人じゃないの?
私の視線の先には頭から色々なものを出して死んでしまった男がいる。
「よし、これで俺はランク7だ!」
「いいなー、ねぇ…死にそうになったら言ってよね。私も600ポイント欲しい~」
弓矢使いの女がそう言って話している。
「ああ、わかってるって、ただ生き返った後が普通と違うからなぁ…やっぱホルタウロスを一匹残しておいて殺して貰わないとなぁ…」
「本当だよね。それでもこれってかなり効率的じゃない?
今までだったらチマチマ戦っていたけど、これならかなりの速さでランクアップ出来るからいいよねー」
そう言って笑っている。
ランクって…何でそんなに大事なの?
わかんない。
私はツネノリの肩を持つ。
「千歳?」
「ねえ、ランクって何?そんなに大事なの?
わかんない!
わかんないよ!!」
私は物凄い気持ち悪さで頭が痛くなった。
1人で溜め込みたくなくてツネノリに想いをぶつける。
「千歳、とりあえずあの3人は無視しよう。
今は佐藤を探して保護してやろう」
「うん…」
私はツネノリに手を引かれて先に進む。
人の気配がしない、魔物の気配もしない場所でツネノリにもう一度聞く。
「あの人たちは何?
私達みたいにランク9にならないと殺されるわけじゃないんだよね?」
「ああ、この世界は確実に魔女のせいで酷いものになってしまっている。
死なない事が、殺せる事が世界に悪影響を与えているんだ。
大丈夫、千歳は俺が守るから安心しろ。
あいつらがもしも千歳を狙ってきたら俺は容赦なくあいつらを倒す」
そう言ってツネノリが私を抱き寄せて頭を撫でてくれる。
何か、ツネノリって本当にお兄さんって感じがする。
まあ、実際兄なんだよね。
「落ち着いたか?落ち着いたら佐藤を探さないと」
「うん、行かなきゃね」
そう言って私達はまた走り出す。
「あ、一個いい?」
「何だ?」
私はずっと気にしていた事を走りながらツネノリに聞く。
「呼び方、お兄さん、兄さん、ツネノリ、ツネノリ兄さん…どれがいい?」
「ああ、ずっと千歳が悩んでいたのはわかっていた。好きに呼んでくれていいぞ」
「じゃあ、人前では兄さん、2人の時はツネノリかな」
「好きにしてくれ」
「ツネノリ」
「なんだ?」
「私もツネノリが狙われたら相手を倒すね」
「ああ、よろしく頼む」




