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セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
伊加利 常継の章③親の苦労。
37/339

第37話 これで話さなければ誰も魔女だなんて思わないぞ。

俺が装置を外すと、横には千明が居た。

千明は横で装置を付けてセカンドに居る。


「すまないね」

「いや、仕方ない。行こう」

そして会議室に向かう俺と東。

東は今の所開発室で千明を守る為に1人、セカンドで千明と千歳とツネノリを守るために1人、そしてここに1人の3人が同時進行をしている。

「4人だ常継。4人目は地球の神様と会話中だ。後で説明をする」


会議室を開けると、満面の笑みの社長と一人の女が居た。

「よく来てくれた、東くん、伊加利くん。さっきのイベントは大成功だったよ」

社長はニコニコほくほくした顔で俺に握手をしてくる。


「はい。ありがとうございます」

「伊加利副部長は企画部の私からのお願いを内々に受けてくださっていました。

実はメールでのみのお願いでしたので今日が初の顔合わせなんです」

社長の横に居る女が適当な事を並べ立ててくる。

社長は「おお、そうか。伊加利くんが柔軟に仕事のできる男で助かったよ」とか言っている。


「東部長にも勝手に伊加利副部長と話を進めていた事を謝罪させてください」

「いや、伊加利の行動がイベント成功になったのなら僕は問題ないです」

東は感情を殺した顔で女に接する。

この女、あの魔女とは似ても似つかない。

地味な服装。瓶底眼鏡でスタイルも並。

持っている文具は社会人離れしたファンシーな文房具。

あの犬のキャラクターなんて数年前まで千歳が気に入って使っていた物と同じだった。

これで話さなければ誰も魔女だなんて思わないぞ。


社長は熱心に東にセカンドの出来を褒めている。

その後ろであの女は俺の心を読んだのだろう。

ニヤリと笑ってきやがった。

笑い顔のそれは確かに魔女だった。


「急に呼び出して済まなかったね。それでは要件を話そう」

社長がそう言って俺達を着席させる。


「まずは、2人に改めて紹介をしよう。企画部の北海 道子くんだ」

「北海です。よろしくお願いします」


…東京太郎といい、こっちは北海道子かよ…

同レベルのネーミングセンスをしやがって。


「今回のイベントは全て彼女の企画で出来ている。いやぁ、あの初心者20人と特別枠の初心者役をやっていた役者の彼たちは良い演出だったね」

「ありがとうございます」

…特別枠は俺の子供だよ。

だが社長は何も知らない。

何も知らない人間に怒りを向ける訳にはいかない。


「後は伊加利くんのベテランプレイヤーの演出は良かったね。

君はああやってガーデンでトレーニングを積んでいたんだね。

社内ではテストプレイとかデバッグとかを遊んでいるだけと酷評していた馬鹿共もいたのだがね、これで明日から何も言えなくさせることが出来るよ!!」

社長はそう言うと笑顔で大喜びをしている。

そう、社長は俺達に好意的だ。

その事を忘れてはいけない。


「はい、ガーデンの成功には伊加利の努力は欠かせません」

東が合わせて釘を刺す。


「ああ、今まで東くんが言っていた事は間違いでは無かったね」

「はい社長。後は東部長のプログラミングですね。あの世界を作り上げた東さんの才能は誰にも真似ができません」

魔女…北海がそう言って社長に進言をする。


「本当だね。ここに北海くんの企画力も合わさればガーデンシリーズはこの先10年も20年もヒットするだろうね」

社長は嬉しそうにそう言う。

俺としてもこの先もサーバー代を捻出する為には頑張って売れてもらうしかない。


「後は、北海くんは独学にも関わらず多少のプログラムが出来て、ガーデンに少し変更を加えたそうだね」

「はい社長」

そうだ、この女は東の世界に手を加えることが出来る。


「社長、そういう事は僕を通していただきたいのですが?」

東は社長に意見をする。


「うん、申し訳ないとは思うけど、君は頑なにユーザーの意見を聞き入れない事があるだろ?北海くんはそれを可能にすると言ってくれたからね。

あのカノンとか言う技や光の剣と盾、それに隠しコマンドなんかを君は嫌がっていただろう?」

「お言葉ですが社長、東さんも元々実装可能な段階にしておられました。私はその部分を少し改修して使えるようにしただけなんですよ」


「お?そうなの?」

「はい、伊加利にテストを頼んでおりました」

東はとにかく憎々しい顔で答える。

くそっ、ツネノリの使ったアーティファクト砲すら会話のタネに使ってきやがる。


「そうか、だから伊加利くんはあんなにうまく使えたんだね」

「とりあえず今回はバンバン新しい機能、ユーザーから要望のあった機能を乗せて行こうと思うし、今後はイベントも頻繁に執り行っていきたいと思うんだ。

そこで、今晩以降のイベントの内容を北海くんに説明して貰おうと思って2人を呼んだんだ。後の話もあるけどその先ね」


社長の話…と言うか北海の話は無茶苦茶だった。

それだけで東のセカンドを壊したと言っても過言ではない。


以下に要点と北海のコメントを載せる。

8/21 19:40~8/23 7:59(12/2 12:00~12/6 23:59)括弧内はセカンドの時間

ポイントアップキャンペーン。

いち早く高ランクの魔物と戦って貰えるように魔物撃破時のポイントを通常の3倍にする。

ユーサーアンケートで多かった機能の追加「プレイヤーキル」。

「武器の取り回しで仲間を巻き込みかねない武器を使っても謝罪のないプレイヤーが多いのでやり返したい」「殺してしまいたい」と言った声が多いので一時的に実装。


8/23 11:40~8/24 23:59(12/7 12:00~12/11 23:59)

vs巨大ボスキャンペーン。

街に迫る巨大ボスを全ユーザーが協力をして退治。

ユーサーアンケートで多かった機能の追加「市街地戦」。

街での戦闘を望むユーザーの声を受けて巨大ボスとの戦闘を実装。


8/25 3:40~8/26 16:59(12/12 12:00~12/16 23:59)

一部のプレイヤーが魔物化をして街を襲うので残りのプレイヤーが街を守るバトルキャンペーン。

プレイヤーが魔物になって街を襲う。

魔物にならなかったプレイヤーが魔物化したプレイヤーと戦って街を守る。

ポイントは魔物もプレイヤーどちらになっても10倍。

ユーサーアンケートで多かった機能の追加「一定期間の魔物化」。


8/26 19:40~8/27 23:59(12/17 12:00~12/20 23:59)

レイドバトルキャンペーン。

運営が指定した強敵を全プレイヤーで倒そう。

ユーサーアンケートで多かった機能の追加「レイドバトル」。


ざっとこんな感じだった。

東の望まない世界になりつつあるセカンド。

ゼロガーデンに居た魔女、北海の使い達のやり口よりえげつないやり口。

逃げようのないイベントとして世界を破壊する方法。


東がいくら「僕の意に反する」と言っても駄目だろう。

説明になっていない。


最初のプレイヤーキルを認める動きにしても、確かにユーザーからの不満は噴出していたが、行動に移すほどではなく、仮に行動に移してトラブルになれば世界は殺伐としてしまう。

俺は助け舟と言った感じで一応、上の説明をするが思った通り、北海は「何でもこちらで決めてしまうのではなくて取捨選択をプレイヤーに委ねたい」と言っていた。


その先はもう酷いものだ。

巨大な魔物が街を襲う?

それも五日にわたって?

守り切れなかったらプレイヤーの奴らは「失敗」で済ませるだろう。

壊れた街を見て「ガーデンはリアルだな、まだ復旧しないのかな?」と言うだろう。

だが中にある街は現実だし、人はAIなんかじゃない本物だ。

壊される家の一つ一つにも暮らしがある。


魔物化した人間が街を襲う事にしても、北海の狙いはスタッフの命だろう。

そうやってガーデンを滅茶苦茶にしていく。

最後のレイドバトルだけは普通そうだが、何を言ってくるのか分かったものではない。


だが話はこれだけでは終わらなかった。

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