第338話 その笑顔が俺を明るく照らしてくれる。
あの日の事は簡単に書く。
とても大変で神代行はもう懲り懲りになったが「能力査定UPで千歳の進学費用も潤沢だねツネツギ」と東に言われて引き下がれなくなった。
結局セカンドに入ったのが朝の7時半。
マキアの牢獄で魔物狩りを満喫した連中は昼の引き上げまでで馬鹿みたいに狩り続けてひと財産を築いていた。
カムカのランクが5時間で16になっていてどれだけハイペースだったのかと気を疑ったのだがもっと酷いのは途中でビッグドラゴンを1人一体ずつ出せと言われた事。
正気を疑った。
子供達はヒーヒー言っていたが大人達は楽しく倒していた。
ビッグドラゴンを楽しむ?あの戦闘狂達は意味不明だ。
その癖「ツネツギに負けていられない」と皆口々に言っていたがあのメンバーならガクとテツイを抜かせば俺が最弱だろうに…。
まあご愁傷様と言いたいのは千歳の提案で「戦わない人だって居るんだから家族財布の機能を持たせて」と言われて機能を追加したらカムカやマリオンの稼ぎをカリン達がこれでもかと使って豪遊していた事。
センターシティの洋品店なんかはニコニコで後日ツネノリ達が「素晴らしいお客様をご紹介いただきました」と感謝されていた。
ああ、何でカリン達が散財したかと言うと千歳の狙いが見事にヒットしたからだ。
なんでも途中でツネノリとメリシアを呼び付けていて何かと思えば2人共お気に入りで着ているペアルック姿で現れてカリン達の購買意欲を刺激したらしい。
まあ俺の財布もルルと共有した為にかなりの金額を甘味で消費されていた。
まさか千歳に頼んで持ち帰り用を家のリビングと研究室に送るとは思わなかった。
こっちは最終的に洋服組、甘味組、子守組に別れたと言っていた。
結局、急なお願いを引き受けてくれたホテルにパーティー会場を用意して貰って立食パーティーにした。
金額は各家庭の稼ぎで問題なく賄えた。
まあ、カムカの所はカリン達の散財であまり残らなかった。だが服だの靴だのを揃えてもセンターシティの景色に合っているだけでゼロでは浮くと思うのだが言わないようにした。
立食パーティーの内容は野菜と魚メインの料理で珍しく肉にしない理由を聞いたらアーイはキヨロスがやった視覚神の解体ショーを見てしまったから肉は食べたくなかったらしい。
あれは後で見たがとんでもなかった。
まあ、千歳の為にキレてくれたのだから俺は何も言えない。
食事のメニューに関しては、ルルは甘味さえ出れば問題ないし、アーイは魚ならOK、ジチは野菜が食べたいと言う平和的な物だった。
そのキヨロスと言えば千歳に本気を出したのに負けていて相当悔しがっていた。
千歳曰く「前にエテでの宿代を稼いだ経験とセカンドに詳しかったから勝てたけどゼロガーデンなら負けていたよ」と言っていた。
そして「でも言わない」とも言っていた。
千歳と言えば立食パーティー中にキチンと皆1人1人に感謝の言葉を述べていて、カムオやガイ達はまだ良かったがビリンの奴は「惚れ直したか?」と聞いて「戦ってくれた事は嬉しいけどバカじゃないの?」と返していた。
ザンネやカーイの所に行く時は冷や冷やしたが「千歳、なんの心配も要らないよ。君には俺たちが居る」「悲しんだ千歳さんが居たのは辛かったけど、千歳さんを助けられる力を示せて良かったよ。僕は更に強くなるから安心してね」とだけ言うと後はセカンドの話になった。
皆に感謝を述べてから神如き力でルルを4人に分けてノレルにキチンとお礼を言いつつ甘え倒していた。
ノレルもここぞとばかりにチトセを甘やかしていた。
そう言えばノレルと千歳を見て千明がヤキモチを妬かないかと気にしたのだが「ノレルさんは甘やかし担当だから気になりません。存分に甘やかしてもらいます」とケロりと言われた。
千明は凄い。
千歳の要望で東とジョマも来た。
千歳曰く「戦神とナースお姉さん達も呼んであげたかったけどジョマ達から注意されたから諦めた」と言っていた。
代わりに神如き力で戦神達に料理を差し入れていて喜ばれていた。
8月の時は怒りに任せて戦神をボロ雑巾に変えたのに仲良くなる辺りが千歳なのだろう。
結局、セカンドにほぼ一日いてゼロガーデンに帰ってきたのは夜の9時を過ぎた頃だった。
「ツネツギ!またやりたい!」と最後にマリオンから言われてゲッソリした。
裏方仕事がどれだけ大変だと思っているのだ?
マリオン達はセカンドが気に入ったと言っていた。
魔物を倒すとお金になってそのお金で美味しいものが食べられるのは最高らしい。
千歳は眠くなるまでルルに甘え倒してツネノリと寝ていた。
翌朝、ツネノリに聞いたら3回ほど夜中にうなされて起きていて「ウチに泊めて正解だったよ」と言っていた。
次の日はなかなか帰らずにルルに相談して人工アーティファクトを作っていた。
効果を聞いたら「痴漢変態除けのお守り。痴漢や変態に私を認識させなくするんだよ」と教えてくれた。
確かに父としては安心で嬉しい物だ。
翌週、東は千歳とジョマの見守る中でガーデンを全て外に出した。
東の顔は男の顔になっていた。
勿論、外に出しても何も無い。
何かあっては困る。
千歳とその話をしたら「外に出す時に、地球の神様達に遠くから見守って貰っていたし「絶対に見守ってよね」と釘を刺したから何もあるはずがないよ」と言っていた。
気が付けば怒涛と言う時間を過ごした。
後1ヶ月半でサードが始まる。
ツネノリは瞬間移動以外は問題なく勇者をしているし、千歳は第三の神チィトと言う名前でサードに降り立つ事になっていて「恥ずかしい」と顔を赤くしていた。
一年前はまさかこんな事になるとは思っていなかったし、千歳とこんな形で関係が改善されるとは思っていなかった。
ツネノリが勇者で千歳が女神か…
トンビが鷹を生んだものだな。
「…さん…」
「常継さん!」
おっと、目の前で千明が俺の顔を覗き込んでいる。
「済まない」
「もう、また考え事?子供達の事でしょ?」
「ああ、もうすぐ3月だからな」
「大丈夫ですよ。
何の為にツネツギさんやツネノリ、ゼロガーデンの皆さんが助けてくれたと思って居るんですか?」
「そうだな」
「それよりも、今日はようやく一日中デートの日なんですから私に集中してください」
「済まない。気をつけるよ」
「本当よ。これからは倹約家が泣き出すディナーなのよ?」
「う…、本当に泣き出すのか?」
「ええ、ルルさん風に言うなら「財布の紐は緩めろよ常継!」ですかね?」
「ひぇっ、やめないか千明?
俺はお前と食べられればそれだけで十分だぞ?」
「ダメです。
折角のディナーなんですから。
ちゃんと行きますからね」
そう言って千明が明るく笑う。
その笑顔が俺を明るく照らしてくれる。
あの日、ルルが言った意味がよくわかる。
「わかった。覚悟を決めたよ」
「ふふ、じゃあ少し早いですがのんびり歩きながらお店に行きましょう。あ、スマートフォンで写真撮って千歳に見せてあげなきゃ」
「何!?やめとけ「私を置いてそんなに良いものを!?」って怒られるぞ?」
「あら、私は怒られませんよ」
「俺が怒られるんだ。最近なんて「ガーデンでしかご馳走を食べていない」が口癖なんだぞ」
「それは本当の事ですし。
嫌なら連れて行ってあげてください」
「ぐっ!!?」
そんな俺を見て千明が「ふふふ」と明るく笑う。
こんな日がくるとは夢にも思わなかった。




