第336話 俺はもう少し視覚の神を痛めつければ良かったと後悔をする。
皆でサウスの城に移動をする。
城に着くと目の前にジョマが居て「少しだけ千歳様を休ませましたからツネノリ様だけいらしてください」と呼ばれた。
着いていくと一つの部屋でそこには父さんと母さんに千明さんが待っていた。
そして大きなベッドで千歳が涙を流しながら寝ていた。
「お疲れさん」
「見事であったぞ」
「千歳の為にありがとうツネノリ」
3人が労いの言葉をくれる。
「千歳は?」
そう聞くと初めは恐怖や悔しさから涙を流し、途中からは皆が千歳の為に剣を振ってくれた事に対して感謝と申し訳なさ、神なのに情けない自分に対して許せないと泣いてしまったと言う。
「抱え込み過ぎだ…」
そして「人を捨てて神になって弱さを捨てる」と言い出したからひとまずジョマが眠らせたと言っていた。
「ジョマ、ありがとう」と部屋の外に声をかける。
「まあ、今日は幸いにして土曜日だから一晩こっちで休ませるつもりだ。
少しでも皆と居て心を穏やかにさせないとな」
「ツネツギと千明は途中で帰るが千歳は泊めるぞ」
「ツネノリ、千歳の事をお願いしてもいいかしら?」
「わかったよ」と言った所でジョマが部屋に入ってくる。
「ツネノリ様が来てくれたから千歳様を起こすわ。ツネツギ様とルル様、千明様も外に出てください」
その声で父さん達は外に出ていく。
「起こします」と聞こえてすぐに「うぅー」と言う散々聞き慣れた千歳の声がする。
俺はベッドに腰掛けて千歳の頭を撫でる。
「あれ?ツネノリだ…」
「おはよう千歳」
「私、寝ちゃったんだ?」
「そうみたいだな。千歳、父さん達に頼んでおいたんだが今日はウチに泊まるんだ」
「え?」
「何を驚く?夜中に嫌な夢を見たらどうするんだ?父さんや千明さんを起こす事もないだろう?
俺が一緒に寝るからウチに泊まるんだ」
「いいの?」
「何を遠慮するんだ?千歳だって俺の時差ボケが落ち着くまで何日もウチに来てくれたじゃないか」
「うん」
「だから遠慮なく泊まるんだ」
そう言うと千歳の顔が少しだけ晴れる。
だが千歳の顔が暗いのは変わらない。
俺は千歳に向かって両手を広げる。
「ほら」
「え?」
「わかるだろ?来るんだ」と言うと千歳が声を上げて泣きながら抱きついてくる。
「ごめんね」と何度も言いながら泣く。
俺はもう少し視覚の神を痛めつければ良かったと後悔をする。
「私ね、さっき人間を捨てようとしたの。
弱い私がサードの神様なんてきっとサードの人達は嫌だもん。神になって気持ち悪い奴や嫌な奴にも負けなくなりたかったの」
千歳は俺の胸に顔を埋めながら話し始める。
「でもツネノリは前に怒ったよね?今も怒るかな?」
「ああ、怒ると言うより呆れている。
だから俺やメリシアを頼れと言ったじゃないか。
これからは気持ちの悪い存在は俺が倒す。
安心するんだ」
千歳は嬉しそうな顔をしながら「でも」と泣く。
「でもも何もない。それどころか見ていないのか?ザンネ先生とカーイさんの攻撃力、父さんの本気、ノレル母さん、ノレノレ母さんの一撃。皆凄くて本当に千歳の出番は無いかも知れないな」
「見たよ。人の身であそこまでやるのはきっと大変な事だよ」
「だが出来た。
千歳は安心して俺達に任せればいい。
だから人のままでいろ」
そう言うとようやく「うん」と言って強く抱きついてきて落ち着いた声を出す。
「千歳、みんな来てるぞ」
「え?何それ?」
「ドフさんが千歳に話してから神殿が収集付かなくなってマリオンさんが皆で千歳に会おうって言い出した」
「うわ…、嘘でしょ?」
「本当だ」
「何か嫌な予感するなぁ…早く行こう」




