第330話 僕は初めてツネツギの本気を見たのかも知れない。
「皆、済まないが先にやらせてくれ。早く千歳の所に行きたい」
「いいぜツネツギ」
「やっちゃいなよ」
「東、このバカに俺の声は届くのか?」
「ああ、今も聞こえているよ」
「貴様、よくも俺の娘を辱めてくれたな!!【アーティファクト】!!」
「勇者の腕輪」が精製した光の剣は今までのものより遥かに強力なものだった。
ツネツギはその事に気付いていない。
「俺の娘の下着を覗く?バカにする?大人向けの下着を着させようとして笑う?許さん!」
そのまま深く斬り込むツネツギの剣はあと少しで命に届くものだった。
僕は初めてツネツギの本気を見たのかも知れない。
ツネツギはこんなに怖かったのか…
「ツネツギ様はそこまで、危うく殺す所でしたよ?」
「何!?やり足らんぞ!?」
いつもの表情でいつもの反応をするそのギャップが特に怖い。
「どいてツネツギ」
「ノレル?」
青くなったルルがツネツギを退かして前に出ると覗き変態趣味の神に平手打ちをする。
「ノレル、ダメだよ。神の身体に素手で触れたら怪我するよ!」
「マリオン、ありがとう。でも手の怪我なんて知らない。コイツは私の世界を傷つけた!殺してやるわ!【アーティファクト】」
青いルルの全アーティファクトの一斉解放で覗き変態趣味の神は顔に大怪我を負う。
「ルル、ルノレ、ノレノレ、時間をくれてありがとう。やるわよ」
そう言って灰色のルルに変わる。
「ふ〜、よくも私の千歳に!母ちゃん怒っているんだからね!」
そう言って殴る灰色のルル。
「ああっ!ダメです!
首が折れています!治療しますからルル様は「創世の光」を使ってみてください!」
「わかったー。
コロス!【アーティファクト】!」
「うわぁ、ノレノレって怒ると怖いな」
ツネツギが灰色のルルを支えながら言うが皆から「お前も十分に怖いよ」と言われていた。
「創世の光」は過去最速の5分で発動をして覗き変態趣味の神を焼く。
「骨の一歩手前で止まる!悔しい!」
そう言って紫色のルルに戻る。
「だがやるだけはやった、行くぞツネツギ、千明。カリンにマリカ!」
あっという間に5人は瞬間移動で消えていく。
「じゃあ、次は僕ですね」
そう言って出てきたテツイは何も言わずに覗き変態趣味の神を氷漬けにする。
「まだ辛うじて生きていますね。次は何を喰らわせましょうか?どうしたら命に届くのかな?」
テツイはブツブツと殺す算段をしている。
「テツイ…やり過ぎると俺の分が無くなる…」
「あぁ、カムカ様!すみません!!」
そう言って火のアーティファクトで氷を溶かしたテツイが後ろに下がる。
「先生!凄かったです!!」
「ありがとうパルマさん」
パルマがテツイに駆け寄って労をねぎらっている。パルマはテツイを尊敬しているな、いい師匠に巡り合えて僕は嬉しい。
「さて、次は俺とマリオンか?」
「ダメだよカムカ。先に子供達にやらせてあげようよ!」
カムカは「お、そうか?そうだな」と言ってカムオ達を見て「やるか?」と聞く。
「父さん、先に行かせて。ガリルは?」
「俺もやるよ。ビリンもおいでよ」
「俺もかよ?」
「ああ、でもまずは1人ずつやろう」
そう言うとカムオは「剛力の手甲」を装着する。
「行くよ筋肉。俺はコイツが許せない!よくもチトセさんを怖がらせたな!【アーティファクト】!」
カムオの渾身の一撃。
身体をくの字に曲げて切り揉みしながら飛んでいく覗き変態趣味の神。
「どうかな?」
「おぅ…、カムオさん凄いな」
ビリンは少し引き気味にカムオを見ている。
「兄さん…兄さんがそこまで怒ったのを見たのは初めてだ」
「まだまだです。
ノレノレ様のようには行きませんね」
ジョマがそう言って吹き飛んだ覗き変態趣味の神を連れ戻しながら言う。
「くそっ!」
カムオが悔しがるが、見た感じレンカとアンの攻撃と同じダメージを1人の一撃が与えているのは称賛に値する。
「兄さんは下がって。次は俺だ」
そう言ったガリルは手甲をはめる。
それはカムカがガミガミ爺さんに作って貰った物の色違いだ。
今までは手甲を使わずに実力だけで上を目指していたガリルがチトセの為にスタイルを変えたとカムカは言っていた。
「時の力よ!【アーティファクト】」
そして連続で殴り続けるガリル。
ザンネやカーイには今ひとつ及ばないが手数だけなら群を抜いている。
「チトセさんの為にもう一段上に行く!【アーティファクト】!」
そう言うと手甲に氷の塊が纏わり付く。
「なんだアレ!?俺の手甲と違うのかよ!」
カムカが驚いている。
カムカも知らない?
僕は興味が出たのでガミガミ爺さんに声をかける。
「なんだよ小僧、今神殿なんだろ?」
「あれ?何で知っているの?」
「あぁ?フィルの奴が千歳が大変だって言うから呼ばれたんだよ。
ツネツギが迎えにきたんだぜ」
「そうなんだ。今さガリルが氷のアーティファクトを使ったんだ。あれもガミガミ爺さんがやったの?」
「ああ、攻撃にバリエーションが欲しいって言うし体力には自信があるって言うから氷の擬似アーティファクトを乗せたんだよ。いい感じか?」
「うん。ガミガミ爺さんも見においでよ」
「んあ?」
僕はガミガミ爺さんの声が気になったので呼びつけてしまう。
「まったく、やっぱ呼びやがったよ」
「ごめんね。チトセは?」
「あ?さっきまでルル達の胸で泣いてたよ」
そう言うガミガミ爺さんの声は普通を装ってはいるが怒っている。
「今は顔を真っ赤にしながら神殿を見てるよ。
神様とジョマが向こうにも居て千歳を慰めて皆が千歳の為に怒ってるって言ったら照れてたぜ」
ガリルは殴った先から凍る攻撃に切り替えて覗き変態趣味の神を殴る。
「アイツえげつねえな」
「うん、でもまだ足りないね」
「凍って砕けろ!死んでチトセさんに謝れ!!」
そう言って殴ったが深くは凍り付かなかった。
「そこまでね。次が控えているから交代なさい」
ジョマがそう言うと悔しそうにガリルは手甲を外す。
「ガリル、来るんだ!」
「何ですか?あ、ドフお爺さん。手甲ありがとうございます」
「おう、なかなかじゃねえか。後は使い慣れていくしかないな」
「はい!」
ガリルは悔しさを隠しながらガミガミ爺さんにお礼を言う。
「あ、その事なんだけどさ。テツイ!」
僕はテツイを呼ぶ。
「はい。わかっていますよ」
テツイがパルマと一緒に歩いてきてガリルを見る。
「ガリル君はいつから来ますか?」
「え?」
「ガリル、氷の擬似アーティファクトをもっと使いこなすんだ。テツイなら君の力をもっと引き出せる。テツイ、擬似アーティファクトに問題は?」
「何もありません。
ガリル君、擬似アーティファクトが「大地の核」から離れると威力が弱まるのは聞いたね?」
「はい」
「でも上を目指すならその認識ではダメだよ」
「え?」
「弱まるなら君自身が「大地の核」から力を吸い上げるんだ。
離れた土地でも力を使えるように君が強くなるんだ」
「そんな事が…」
「出来ますよ。ペックさんの擬似アーティファクトは凄いんです。
君が僕の所に来たら教えてあげますよ」
「本当ですか!?」
「ええ、カムカ様に許可は取ってくださいね」
ガリルは「わかりました!」と言ってカムカの所に駆けて行く。
「テツイ、パルマの事もありがとう。更にガリルまでごめんね」
「いえ、後進を育てるのも必要な事ですから」
そう言ってテツイが微笑むと横でパルマが「先生…」とウットリしていた。
「なあ!俺始めるぜ?父さんは見ないのかよ!あ、爺ちゃんも居るじゃないか!」
「わかったよビリン」
「小僧、ビリンの奴にも俺とペックでプレゼントしたからな」
「え?」
「まあ見てろよ」




