第24話 加減ってもんを知らないのか。
センターシティには難なく入ることが出来た。
本当なら高速移動でコロセウムに向かいたいのだが人が邪魔で高速移動は危なくて使えない。
そう言えば昔、ゼロガーデンに居る1人の王様が同じ事を言っていた。
懐かしさを感じてしまった。
確かに魔女の介入が無ければこんな気分にはならなかった。
「刺激か…」
俺はそう思いながらコロセウムに向かって走る。
走りながら東に状況を確認した。
・20人の初心者は烏合の衆でロクな役に立たない事。
・千歳にツネノリが兄と伝えた後、千歳を庇ってダメージを負った事。
・ツネノリが持ち込んだアーティファクト砲でホルタウロスを怯ませた事。
・斬りこんだ千歳が出血にビビってしまって光の剣をやめて光の拳にしてしまった事。
・ツネノリがようやく立ち上がれた所と言う事。
そう言う状況だった。
「なあ、ツネツギ。これなら2人で勝てるんじゃないのか?君が飛び込む必要は…」
これで終わればな…
「なあ、ゼロガーデンでの魔女の行動をちゃんと見なかったのか?」
「見たさ、だが今は大衆の目がある。ここで魔物を回復なんてしたらどんな批判が飛び交うか、それこそイベント自体が失敗に終わるぞ?
まさかそれがあの女の狙い?」
東は東なりに色々と考えているようだが今一つ考えが甘い。
「違うと思う。
あいつはイベントも盛り上げて、ツネノリに千歳、俺の子供も限界まで追い込んで、更に俺の事もしっかり巻き込むんだ」
「何?それは一体…」
「俺が飛び込むことも考えてて、俺の分も用意しているって事だよ」
「まさか…!?」
東が驚く。
コロセウムの入り口が見えた所で歓声が沸き上がる。
「東!何があった?」
「今、君の子供たちが2人がかりでホルタウロスを倒した所だ。
凄かったぞ。娘さんは出血さえ恐れなければなかなか良い動きでホルタウロスを殴っていた。
そして息子さんの動きは若かりし頃のツネツギによく似ている。見事にとどめを刺した」
じゃあ、急がないと駄目だな。
「あ~、やっと来た。ほら、わかっているんでしょ?急いで!!」
魔女が出入り口でお出迎えをしてくれる。
そしてその後ろでは魔女の声でアナウンスが行われている。
やはり魔女も神なのだ。同時進行が可能と言う事か。
「この勝負、初心者の皆さんの勝利になります!!」
魔女のアナウンスで会場が沸く。
「参加してくださった20名の初心者の皆さんは次のイベントまで自由タイムです。
イベント前になったらまた通知を出しますので参加をお願いします!!
報酬は必ず受け取って帰ってくださいねー」
20名ね、やっぱりそこにツネノリと千歳は含まれていない。
俺の予想はやはり当たった。
「では、これよりスペシャルエキシビジョンマッチ第二弾を執り行います!」
ほら来た。
会場がどよめきとざわめきに包まれる。
「初心者限定特別招待枠のお2人にはもう一戦、魔物と戦っていただきます!
一見満身創痍に見えますが、この2人は将来有望な役者のタマゴなのでご安心ください!」
何が役者のタマゴだバカヤロウ。
俺の息子と娘だよ。
「対戦相手はコチラです!!」
俺は一瞬立ち止まって通路に設置されたモニターを見る。
同時に東からも「ツネツギ!まずいぞ!!」と連絡が入る。
「ああ、見てるさ。
魔女の奴…
加減ってもんを知らないのか?」
モニターに映し出されたのはホルタウロスの上位種、ミノタウロスが2頭だった。
「ツネツギ、ミノタウロスは?」
「ああ、倒したことはある。だが2頭同時は無いな」
やるしかない。
俺はコロセウムの中央に向かって走り出した。




