表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンド ガーデン  作者: さんまぐ
伊加利 千歳の章②初戦。
14/339

第14話 冗談じゃない、私は本当に死ねないのだ。

「緊張されているのかしら?

千歳様…あなたは「初心者限定特別招待枠」だからもう少しここで待っていて。

まずはモニターを一緒に見ましょ」


モニターの向こうではジョマが解説をしている。

その場所は映画などで見たことがあるコロセウムの形をしていた。


「ここにおります20人の初心者は、従来の端末型のプレイヤーが10人、VR端末のプレイヤーが10人おります。

自分以外はどなたがVRでどなたが端末かがわかりません。

御覧の皆様方は動きの差をご確認くださいませ」


なるほど、全員をVRにするのではなくて端末があって、しかも初心者同士ならばデモンストレーションとしての効果は抜群だ。


「そして、通常はゲーム開始時に剣、槍、斧、こん棒、重火器、弓、大砲などから武器を選んでいただくのですが、10月のVRサービス開始から1か月間は超限定レアアイテム「光の腕輪」を差し上げます。

これは光の剣と光の盾を生み出せるアイテムとなっています。

当初は世界観を損なう恐れがあるとして運営側でも慎重になっていた部分ですが、初心者の方に一日でも早くガーデンの楽しさを知ってもらうために1か月だけ配布をしてみようと言う話になりました。

あ、好評なら今後も配布イベントとかやりますし、不評なら没収しますので既存ユーザーの皆さんは怒らないでくださいね。アハハハ」


その瞬間、場内から割れんばかりの声が響いてきた。


「はい、千歳様の分よ」

そう言って横に居るジョマは腕輪を差し出してきた。


「これ…どうするの?」

「手首に嵌めるのよ」


何かさっきの笑顔を見てからとても怖い。

自分が初心者限定特別招待枠と言う謎の枠組みなのも、そして今この腕輪を渡された事も怖い。


「あら、千歳様って用心深いのね。でもね着けないとこのイベントは終わらないのよ」

そう言われた私は仕方なく腕輪を装着する。


モニターの向こうの20人も腕輪を付けていた。


「さて、それでは戦う魔物の紹介に行きまーす」

ジョマの掛け声で


コロセウムに大きな檻が運ばれてきた。

コロセウムの観客席からは「マジかよ」「嘘だろ?」「初心者相手に?」等と驚きの声が聞こえてくる。

檻の中の怪物は色が白に黒の斑。手にこん棒を持ち、頭は牛、身体は大きな人間だ、私はそれを昔神話の本とかで見たことがあった。


「ミノタウロス?」


「惜しい!結構博識なのね千歳様」

さっきからジョマが様付けで呼ぶのも白々しくて恐怖を助長する。


「ミノタウロスはランク6の魔物ね。当然だけどランク1の千歳様や20人の初心者じゃ太刀打ちできないわ。あれはランク3のホルタウロスって言うの。

ミノタウロスよりは弱いけど、通常のゲーム開始だとランク1の初心者が勝つには熟練者が本気にならないとキツいわね。あ、余談だけどランク9に高級なマツザウロスって言うのも居るのよ。アハハハ」


モニターの向こうのジョマも魔物の紹介をしている。

「これはランク3の魔物ホルタウロス!手に持ったこん棒で殴りつけてくる超強力な魔物です。

無事に初心者の皆さんは太刀打ちできるのでしょうか!?」


観客は「やってみろ!」「勝てたらマジ凄いぞ!!」等と声援?を送っている。


「さて、ここで更にスペシャルゲストを紹介いたします」

モニターの向こうのジョマのその声で横に居たジョマが反応をする。


「さあ、千歳様の出番ですわ。」

そう言うと、私の足元がまた光った。


「あ、そうそう言い忘れてたわ。アハハ。

初心者限定特別招待枠ってね、イベント期間中ログアウト出来なくなるの」


「はぁ?」

私は思わず素の自分で反応をしてしまった。


「それにね。アハハハ。ゲーム内での死が現実のものになるの。素敵でしょ?」


「え?」

「あははは、凄い顔。じゃあね~。頑張って生き延びてね~」


その声を最後に私はコロセウムの中に転送されていた。

そしてその私にスポットライトが浴びせられる。


「二人目のスペシャルゲストはこちら!

彼女は都内在住の役者のタマゴさん。

こちらも先ほどの彼と同じくVR端末で特別に長期ログインをしてもらう事になりました。

彼女にも役作りをお願いしておりまして、設定は18歳なのに都内在住の14歳の女子中学生!」


恐らく破綻した設定だと思われて観客が私を見て笑う。

私はそんな事よりもさっき、ジョマが言っていたログアウトが出来ない事とゲーム内の死が現実になると言う言葉がどうしても理解できなかった。

確かめる方法が無い以上、死ねば本当に死んでしまうのかもしれない。

それなのにあんな化け物の前に放り出されてしまった。


「そして、彼女もガーデンでの死が現実の死になると言う設定なのです。

是非とも迫真の演技をご期待ください!!」


観客からは「頑張れ」「演じ切って見せろ」と言う応援が入る。


冗談じゃない、私は本当に死ねないのだ。

そう思っていても周りは何も知らず、ジョマの「バトルスタート!」の声でホルタウロスの檻が破壊されてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ