第13話 私が知り合いに似ているの?
着替えが済んだ私は部屋の時計を見る。
時計は午後9時45分になっていた。日付は12月1日。
え?ガーデンだと今って冬なの?
窓の外に手を出してみる。
寒い。
この服だと風邪ひきそうだ。
あわててメイドさんを呼んで防寒の話をする。
「このくらいの寒さは服についている特殊機能で軽減されるのでちょっと肌寒いくらいで済むと思いますよ。
寒ければ後で長袖と長いパンツを用意しておきますね」
と言ってくれた。
とりあえずベランダに一度出てみると、確かに夏服の様相だがそこまでは寒くない。
そう考えるとガーデンの生活は快適なのかもしれない。
10時まで残り10分と言ったところでジョマが部屋に来た。
「まあ、千歳さん…良くお似合いよ!」
「ちょっと肌寒いけどね」
「あら、そう?でもそう言う意見も貴重なの。どんどん教えてくださいね」
そう言って前の端末式のガーデンはプレイヤーの寒さとかそう言うものが無かったので今回のVR方式も取り入れるにあたって、細かい誤差を埋めていくのが大事らしい。
そう考えるとモニターって大事だなと思った。
「さて、千歳さんが出るイベントまで残り10分を切ったわね。一応言わなきゃいけなかったんだけど、千歳さんは「初心者限定特別招待枠」と言う枠組みでここに居るの」
初心者限定特別招待枠?
仰々しい名前だ。
「「初心者限定特別招待枠」ってのはVRもガーデンも初めてって言う人に向けた枠組みで他のプレイヤーとは仕様とかが違うの。だから存分にガーデンの世界を楽しんでね」
「私、そもそもアンケートに答えてないんだけど…」
「ふふふ、いいのよそんなこと。じゃあ、イベントで会いましょう」
そう言って部屋を出ようとするジョマに私は声をかける。
「え?連れて行ってくれないの?」
「大丈夫、時間になったら自動的に連れていかれるから。ここで待っててね~」
ジョマは「じゃあね~」と言って去って行ってしまった。
…初心者限定特別招待枠?
そう言うの嫌なんだけどなぁ…何をさせられるんだろう?
そう思っていた私の足元が光りだす。
そして「イベント会場まで自動転送をします」声が聞こえた。
直後、私は控室みたいな所に居た。
周りには同じような服装の男女が20人居た。
横に居た男の子が話しかけてきた。
あれ?見覚えのある顔。同じクラスの佐藤だ。
「あれ?伊加利さん?ってそんな訳ないか。伊加利さんはガーデンをやらないだろうし、このイベントは噂だと運営の家族はアンケートで弾かれるって聞いたし」
佐藤は私を私だとは思わずに話しかけてくる。
それにしても運営の家族は参加できない?
それだと私はなんなのだろう?
「え?私が知り合いに似ているの?」
いちいち私が伊加利千歳だと教える必要は無いので話を合わせる事にする。
「うん、凄くよく似ているよ。あれ?君ってもしかしてVR枠の人?僕ってどう見える?」
「どうって…普通の人に見えるよ?」
そう言うと佐藤は大喜びではしゃぐ。
「凄い!!やっぱりガーデンは凄いなー。僕は端末枠の人間だから君ほど世界が詳細に見えないんだ。日本中の人と繋がれるネット上でこういう事を言っちゃいけないんだろうけど、君はクラスメイトによく似てるからいいや。僕はまだ18歳になってないから端末枠でしか応募できなかったんだよね。
あ、VR枠だと18歳以上か…、やっぱり他人の空似なんだね」
佐藤はそう言って笑う。
え?VRって18歳未満ダメなの…?
私…どうなっちゃうの?
佐藤はそれ以降キョロキョロと周りを見ているので私も周りを見る。
モニターに映し出されている画面には先ほどのジョマが司会となって「VR実装記念」イベントの司会をしている。
つい先ほどまでゲーム好きと言っていたキャンペーンガールと社長と呼ばれる男の談話が流されていた。
まあ、社長さんには頑張って貰って我が家の家計を助けて貰わないと授業料とか色々とお金がかかるのだ。
その後はVRが実装されることでリアルな世界を楽しめる。
それは恐ろしい魔物との戦いだけではなく、素晴らしい景色。美味しい食事等楽しみ方が人それぞれと言うガーデン特融の楽しみ方も強化されたと言っていた。
機能紹介が終わるとジョマに映像が切り替わる。
「それでは初心者限定特別バトルイベントを始めます!!」と言って控室の奥にあった扉が開く。
そして顔を出してきた兵士スタイルの人に呼ばれてみんなが部屋から出て行く。
私もそれに合わせて前進をする。
「あ、ダメ。千歳さんはこっち」
後ろからジョマに声をかけられた。
「ジョマ?だってモニターに…え?」
「ふふ、ここはガーデンの中、そして私は運営ですよ」
そう言うジョマが淫靡な笑顔を私に向ける。
…ドクンッ…
その笑顔にたまらず不安になる。




