第110話 これがアーティファクトの可能性なのかもしれない。
リークが滅茶苦茶哀れだったが何とかメリシアの身体は完成をした。
途中でマリオンがペック殿を連れて悪だくみをしていたようだが、まあ、悪だくみと言っても事態を悪化させるものではないだろう。
私も黄色い水の精製と水槽に変わる人工アーティファクトの準備は出来た。
そしてマリオンもしたと言っていたが私も人間化の説明と注意点をした。
注意点はメリシアのイメージが優先されてしまうので髪色が変わってしまったり背が伸びてしまう場合があると言うものだ。
ツネツギの方はどうなったかの?
私は気になって神様に聞く。
「んー、難航しているね。ツネツギも自信が無くて千明を同行させたが、ちょっと分が悪い」
「なんですと?娘の復活を願わない親がいると?」
私の声に手の中のメリシアも困惑をしている。
「いや、そうじゃないよ。両親の愛が深すぎるんだ。復活させる第一号に選ばれたメリシアを実験に使う風に思われてしまった」
そう、確かに第一号となると邪推してしまう人は出てくるだろう…ツネツギめ…説得下手か…
「ああ、千明がうまい感じに説得してくれたね」
私はそれが気になって次元球を出して状況を見る。
今、千明がツネノリの話を出して説明をしている所だった。
「ルル、何それ?」
キヨロスが興味深そうに私の元に来る。
私は簡単にセカンドガーデンと通信するために作った次元球だと説明をする。
「それずっと使えるの?」
「うーん、さすがに次元を越えるから疲れてしまうのが問題なのだ」
「そう、【アーティファクト】!!」
キヨロスが「究極の腕輪」で疲れると言う問題点を打ち消してしまった。
これで次元球はこの場だけは使い放題になるがいかんせん次元球では映像が狭い。
キヨロスにジチ、それにマリオンまで集まってくると見れたものじゃなくなる。
「神様、映像で見せて貰えませんか?」
「ああ、構わないよ」
そう言って目の前にセカンドガーデンの映像が出てくる。
「お父さん、お母さん…」
メリシアが2人を見て涙ぐむ声を出す。
映像の中でメリシアの両親はツネツギに熱心に質問をする。
「…それはメリシアなのか?」
「一度…人形にしてから人間に…」
「成功した人間が居る」
「長引きそうだ、そろそろ僕がメリシアと行って来よう。ルルは途中、いい感じの所で次元球を使って会話に参加してくれないかな?」
「はい」
そう言って私はメリシアを神様に渡す。
「後、伝えておくことは…、ああ私物の件と服を持って帰ってくればいいね」
じゃあ行ってくると言って神様は消えてしまう。
そうすると映像が途切れてしまい、声が次元球から聞こえるだけになってしまう。
「キヨロスくん。お姉さん映像が見たいよ。何とかならない?」
「え?」
ジチがとんでもない事をキヨロスに言い出した。
「ルル?」
「なんだ?」
「それってどんなイメージで作ったの?」
「どんなイメージって…」
簡単にでいいと言うので私は次元球を異なる世界にあるもう一つの次元球の点を見つけて繋げるイメージで力を込めて…と言ったところで…
「「万能の鎧」の付与能力の一つを次元球にして…セカンドガーデン…、違うな…次元球の先にある次元球の点を見つける…これだ!【アーティファクト】!」
そうするとキヨロスの前に大きな映像が出る。
「んな!!?」
そんな馬鹿な…、私が苦労して作った次元球だぞ?
この男は何をやってのけた?
「出来た」
「あははは、相変わらず非常識。ルルが固まっているよ」
そう言ってマリオンが笑う。
「キヨロスくん…流石だね」
ジチが抱き着いて喜ぶ。
「自信持ってよルル。僕一人じゃ何もできないんだから。こうやってルルのアーティファクトがあったから真似できたんだよ」
キヨロスが申し訳なさそうに慰めてくるがこれがまたプライドが傷つく。
その後、私が会話に参加をしてマリオンを紹介する。
千明、私、マリオンの説明。
そしてメリシアの説得、そう言うものでメリシアの両親は納得をしてくれた。
「ねえルル?」
「何だマリオン」
「メリシアの作業ってそんな何日もかかるの?」
「いや、だがああ言っておかないとマリオンの悪だくみの時間が取れないだろ?」
「あははは、バレた?」
「バレバレだ、何をするつもりだ?」
「何が悪だくみだって?」
私の後ろにツネツギが立っていた。
「おお戻ったか。お疲れ様」
「ああ、色々疲れたよ。おお、キヨロス、ジチ、マリオンも久しぶり、元気そうで何よりだよ」
ツネツギが皆に挨拶をする。
皆も口々にツネツギに挨拶をする。
「神様、もう言っていいかな?」
マリオンが戻った神様に声をかける。
「そうだね。メリシアを身体に入れてあげる時じゃないと意味が無いからね」
「マリオン?」
ツネツギが訝しげにマリオンを見る。
「メリシア?考えはまとまった?」
「はい、マリオンさん。私もツネノリ様に守られるだけじゃなくてツネノリ様と一緒に戦いたいです」
「何!!?」
「あはは、ツネツギ凄い顔だよ」
「お前、マリオン…何を考えたんだ?」
「え?人間化の時に強い身体を願えば奇跡は起きるよって話」
「それだけじゃ無かろう?」
「うん、神様に聞いたらお爺ちゃんがやってくれるならいいよって言ってくれたんだー」
「ちょっと待てマリオン…、お前何を考えた?」
そう言ってマリオンは「にひひ」と言ってブローチを出してきた。
「あれ?それってマリオンのブローチ…「記憶の証」だよね?」
キヨロスが口を挟む。
「ふふん、新しくお爺ちゃんに作って貰ったの、お爺ちゃん名前は何にする?」
「生きた証、「経験の証」かな」
…ペック殿が怖い顔…ツネツギの言葉で言う「やべぇ」顔で笑う。
「「経験の証」?そう言えばマリオンのは蒼だったけどこれは緑だね」
「うん、マリオンの「記憶の証」はマリーの所作や記憶を人形のマリーに送ったよね。でもお嬢さんの身体にはお嬢さんの魂がルルさんの作った「魂の部屋」で入るから必要ないよね。
だからこの「経験の証」は経験が身体に入るんだ」
「マリオン…まさか…」
私はマリオンを見る。
「そうだよ、私達女だって守られるだけじゃ嫌でしょ?メリシアだって戦いたいじゃない?でもメリシアは戦闘経験なんてないんだからさ、いくら身体が強くなってもどうやって短期間でツネノリの横に立つくらいに戦えるようになるの?
だから、メリシアには私の経験を渡すの!」
「はぁぁぁぁ…、そう来たか」
「マリオンの戦い方って…」
ツネツギが青い顔でマリオンを見る。
「ふふん、私はこの20年出産以外は修行をサボらなかったよ」
「毎日お父さんとイチャイチャと修行していたよね」
「うん、走り込みって言ってしょっちゅう四の村のお爺ちゃんの家まで走ったよね」
「私達、何回も付き合わされて死にそうになったよね」
「うん、お母さんって容赦ないんだよね」
マリオンの娘たちがしみじみと辛そうな顔をして話す。
目にうっすら涙が浮かんでいるぞ。
「あー、お姉さんも「千里の眼鏡」でそれを見てたよ。マリオンって小さな子でも遠慮なく鍛えていたよね」
「光の剣だけじゃなくて生身で剣の特訓もしたし、師匠のお爺ちゃんにも何年も二の村に住んでもらって拳での戦い方も仕込んでもらったしね」
「ああ、15年くらい前だっけ?既にマリオンはアーイにも勝ったしガクにも引き分けたな」
ツネツギが思い出してゲッソリしている。
だが、その経験がそのままメリシアに贈られると言うのは素晴らしい。
これがアーティファクトの可能性なのかもしれない。
「じゃあ、僕たちの経験も渡す?」
キヨロスがとんでもない事を言う。
「駄目だよ、マリオンでいっぱいいっぱいだよ。それ以上渡すとメリシアの性格とか記憶に障害が出るよ」
神様がキヨロスを止めてくれる。
じゃあ仕方ないとキヨロスが納得した所で私が「メリシア、それでは生き返らせよう」と言って身体を風呂場へ連れて行く。
「男どもは入るな」
私がそう言って中には女性だけで入る。
「あ、神様は…」
「僕も男神だからね。後はルルに任せるよ。メリシア、次に会う時君は人間に戻っている。最後まで元の自分と強くなった自分のイメージを絶やさないようにね」
「はい。神様ありがとうございます」
男どもが口々にメリシアに言葉をかけてメリシアも涙ぐみながら感謝を述べる。
その声を聴きながら風呂場に行く。
30人から入れる神殿の浴槽には私の作った黄色い水の人工アーティファクト、そして浴槽の淵には浴槽を変質させないための人工アーティファクトを取り付けてある。
「メリシア」
「はい、お母様」
毎回思うのだがこのお母様って響きは来るものがあって何度も呼ばれたくなる。
「これからお前は人形の身体に入って貰う。そしてその身体でこの黄色の水に入って貰う。
マリオン」
「うん、メリシア…いい?
人形の身体は音がこもって聞きにくいし、目も不鮮明、触った感じもよくわからないから怖いと思う」
「はい」
「何ていうかなぁ、風邪ひいて熱病になった時みたいな感じだと思って。それで水に入るとすぐに眠くなるんだけど、それまでの間に絶対にイメージを絶やさないで。
メリシアはまだ死んで一日も経っていないよね?生きている時の自分を忘れていないよね?」
「はい」
「そしてツネノリの事を最後まで覚えていて、ツネノリの戦う姿は見た事ある?」
「あります」
「じゃあ、そのツネノリの横でツネノリを支える自分をイメージして、一緒に戦う自分をイメージして。さっき屋上からここまで一気に降りた私をイメージして自分の身体もそうなるって意識してね」
「はい!」
「後はスタイル良くしたいとか背を伸ばしたいとかは…」
「あ、父に止められました」
「そっか…、じゃあいいか。私からそれだけ」
「メリシア、人間に戻ったら何食べたい?お姉さんが作っておいてあげるよ」
「ジチさん…、ツネノリ様のゼロガーデンでの好物が食べたいです」
「かぁー、ここでもツネノリなんだね」
「ツネノリの好物であれば母の私だろう?」
「ルル、ジチの方が料理上手なんだからジチに頼もうよ」
「マリオン!?」
「うふふ、早く私もここで皆さんとお話ししながら食事がしたいです」
「お姉さんも楽しみに待っているよ。ルル、ルルは忙しいんだからお姉さんに頼みなよ」
「むぅ…、ツネノリの好物はビッグベアのステーキだ。あの日は減りが早い」
「お姉さんに任せておいて!メリシアはお肉大丈夫?」
「はい、お肉は食べられます」
「じゃあ、用意しておくね」
「よし、それでは身体に移そう」
私は「魂の部屋」を左胸に、マリオンは「経験の証」を右胸に差し込む。
「メリシア、唱えよ」
「はい。【アーティファクト】」
メリシアの人形は光る。
そして人形が起き上がる。
「わぁ…、凄いです。私生きています」
メリシアが驚きの声を上げる。
「どう?熱病の感じ?」
「はい、マリオンさんに…教えて貰った通りです」
「よし、それでは早い方が良い。水に潜ってくれ」
「はい、お母様。ありがとうございます。
マリオンさん、カリンさん、マリカさん、ジチさん。
ありがとうございます。私人間に戻ってきます。行ってきます」
そう言ってメリシアは水に沈む。
「そう言えばルル、あれって水なのに浮かばないよね」
「そうだな、沈めた石が浮かぶと困るから浮かばないようにしたのだが正解だったな」
「お母さん、メリシアさんってどのくらいで人間になるの?」
「私の時は一晩だったよね」
「そうだな、大体24時間だな」
「じゃあ、それまで休憩?」
「んー、それはご飯を食べながらにしようよ。お姉さんが美味しいご飯作るからさ」
「やったー!!」
「ジチさんのご飯美味しいから好きー!」
「えー、カリンとマリカはお姉さんのご飯食べるの久しぶりなのに美味しいって覚えていてくれているの?」
「「うん」」
「え?カリン…マリカ?私のご飯って美味しくない?」
マリオンが悲し気に聞く。
「ふふふ、マリオンよ私の気持ちがわかったか?」
そう言って私達は風呂場を後にする。
「メリシアよ、戻ってくるのを楽しみに待っている」




