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2-23 真犯人を推理しました

 とりあえず、活動の拠点として家は貰っておいた。

 今後、レンガの家は魔法学研究所として使っていく予定だ。


「でもな、アラタ。私自身は旧自宅に引きこもりっぱなしになると思うぞ」


 国王と話をした後、特にボロを出した感覚もなく終えることができた。

 結局、王からの褒美として家の所有権とその鍵は貰い、今からその家を見にいく予定だ。


「別々で暮らしても連絡が遅れるし……。魔法で二つの家を合体したりできないの?」

「空間の結合か……。転移魔法を応用すれば、できないこともないはず」


 新が家を貰ったのには複数の理由があった。

 森の中ではなく、人がしっかりと暮らす場所に住むことで世間の流れを知ることができると考えたのもそのひとつ。

 マユが魔法によって実戦をカバー、新が諜報という算段だった。


 しかしチート能力がなくなり、魔王の前に刺客が現れなくなったから緊急でやるべきこともない。

 新が家を貰ったのは、世俗に触れて退屈をなくすという理由も密かに含んでいた。

 

「あの、すいません。言うタイミングがなかったので黙っていたんですが……」


 突然、クレスが恐る恐る話しかけてきた。


「アラタさん。僕が前に言った『クリス』って架空の人物、覚えてますか?」


 まだクレスが自分のことを貴族であると新に打ち明けるのをためらっていた時。

 マルクの悪事を告げ口すべく、クレスは一足先に王と会っていたのだ。


 だが、身分の高い者でないと王城へは入れない。

 自分が貴族であるということがバレるのを恐れたクレスは架空の友人をつくり、新にはその人を経由して王へ伝えると約束していた。


「もちろんクリスなんて人はいなくて、僕が国王様とお話してきたんですが、その時にあることを聞きまして――」

「ちょっと待って。クレスがマルクのことを王に言ってたなら、俺たちが襲撃する必要はなかったんじゃないか?」

「いえ、その時の国王様は心ここにあらずって感じでしたから……。あんまり僕の話は聞いてくれなくて、魔王への愚痴を延々と言ってましたね」

「あのおっさん、本当に大丈夫か……?」


 もしも自分たちがいなければ、レイはどうなっていたことか。

 王はもっとメンタルを鍛えてほしい。


「話、戻しますね。国王様の愚痴の中に気になる話があったんですよ。()()の話なんですけど――」

「手紙?」


 誰から誰宛ての手紙だろうか。

 どんな内容であるのか。


 その答えはすぐにクレスの口から告げられた。


「魔王から国王様へのものらしいです」

「シュベールが!?」

「はい。皇女様がいなくなった日に届いたそうで、『返してほしければ自分を殺してみろ』と挑発する文だったらしいですよ」

「……だってよ、マユ。シュベールはそんな手紙送ってたのか?」

「いいや。彼女も、最初は世間に向けて敵意はないと表明していたはずだ。そんな誤解を生むようなものを

送るはずがない」


 ただ、シュベールの言葉がすべて正しければの話だが――。

 マユがポツリと呟いた。


 マユが異世界に転移してきたのは、イデュアの失踪から少し時間が経過してからだった。

 だから、もっと前のことが事実かはマユも見ていない。


「シュベールの言葉が正しければって……。本当にシュベールがイデュアを誘拐したってこと?」

「だが、あの二人の仲はいいし、イデュア自身が家出だと言っていたしな……」

「おい、ぶつぶつ推理しないでくれよ。俺の理解が追いついてない……」


 今、何が起きているのか。

 まさか、シュベールが敵であるかもしれないというどんでん返しが浮上しているのか?


 新はそんな事実を信じたくなかった。

 自分が今までやってきたことは正しいと思っていたのに――。


「待て、アラタ。まだ確定していることは何もないから、少し落ち着け」


 マユは新をなだめた後、状況を整理してくれた。


「まずノロケ勇者に質問だが、その手紙とやらがイタズラであるという可能性はないかな?」

「それが……。国王様が手紙を確認して、その後に皇女様の寝室へ向かったみたいです」


 手紙を見てからイデュアがいなくなったことを確認した。

 つまりそれは、まだ誰も誘拐について知らないはずなのに手紙があったというわけだ。


「なるほど。誘拐した本人でないと、その手紙は置けないか……」

「でも誘拐なんてしてないんだろ。……だったらイデュアが置いたのかな?」

「それもあるかもしれないな」


 この『手紙』についての真相はいくつか考えられた。


 まず、シュベールが新やマユを騙している線。

 目的はわからないが、イデュアは本当に誘拐されていて手紙もシュベールがやったものである。


「手紙の内容が挑発的であるから、この場合の魔王は愉快犯であるかもしれんな」


 暇つぶしのためにイデュアを誘拐し、バトルを楽しんでいたのかもしれなかった。


 他にはイデュアが手紙を置いたという線。

 自分が家出ではなく誘拐であると、決定的な証拠を残したいがためにあえて偽装した。

 だが、筆跡で王が気づくかもしれない。

 なにせ娘の字だ。見慣れているものだろう。


「それでも、シュベールやイデュアが隠し事をしているだなんて考えられん。もしもその二人以外となると――」


 チート装備を創造した人物。

 いまだ、全貌どころか小さな情報もない人物。

 目的も関係性もわからないが、魔王を殺そうとしていることだけはわかっていた。


「黒幕だ。マルクを駒として利用していた者が最初からシュベールを狙っていたのかもしれない」


 誰も正体を掴めない闇は、すぐ背後に忍び寄っていた。

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