マユの手記2
アラタが来てくれたおかげで多くのことが進んだ。
出不精な私に代わって表に出向き、謎を紐解いてくれている。
ただ、まだ問題は残されている。
マルクが捕まり、シュベールが今すぐ命の危機に瀕する不安はなくなった。
しかし彼を裏で動かしていた黒幕がいる。
金銭的な利益をマルクが占領していたのならば、その『黒幕』はなにが目的だったのだろう……。
純粋な気持ちで魔王討伐を考えているなら、もっと表立つはずだ。
むしろ『セーブポイント』の存在が王や世間に広まると建物は消えてしまった。
どうやら社会貢献が目的ではなさそうだ。
それに、チート能力やセーブの仕組みもわからない。
一番可能性があるのは高度な魔法陣を駆使したものであるということ。
もしも予想が正しければとんでもない天才が黒幕となるが……。
同時に黒幕と私たちが同じ境遇であることになる。
胸に秘めた野望のために罪を犯した者――。
私は魔王のためだが、黒幕は誰のためだろうか。
自分のためかもしれないな。
こちらは魔王の命を守っているにすぎないが、黒幕は?
マルクは「黒幕の存在を言うと殺される」なんて訴えていた。
私は、彼が上の存在と仲が良いがために嘘をついて庇った、あるいは自分の罪を軽くさせるための発言だと
いう線も捨てていない。
それでも彼の言うことを信じるなら、黒幕は目的のためなら命を奪う人物であるとわかる。
いつかは私たちの命さえ脅かす『ラスボス』になるのかもしれない。
現に、間接的だがシュベールの命は狙われたのだしな。
さて、暗い話はこれくらいにして新しい仲間についても書いておこう。
まずはレイから。
レイは国王が拾った捨て子らしい。
一時期は王城で暮らしていたことから、イデュアとは姉妹のような仲。
まともな子で、変人揃いのチームには助かる存在だ。
私? 私が一番まともだろう。
性格は活発。私とは対称によく笑う。
アラタになついているが、颯爽と命を助けた王子様なのだから無理もない。
もしかしたらそれ以上の気持ちも……?
あぁ、色恋沙汰といえば彼がいたな。
クレスはお金持ちだ。
アラタからクレスの住居は豪邸だとも聞いた。
大金を餌に改めて求婚してきたらどうしようか……。
自分のことを好いてくれるのは嬉しいが、これは本当の私じゃないし。
それより、アラタ曰く、この国は10歳で結婚できる法律のようだ。
金銭的に余裕もあるなら早めに結婚したくなるのもわかるが、私はそんなに魅力的か?
かの武将、前田利家の妻は12歳ほどで出産したそうだが……。
もしや、男性は先天的にロリコンなのか?
10代は若いどころじゃないし……。
うわ、私は襲われないよな。
考えると不安になってきた。
やめやめ、これ以上ピンクなことなんて考えていられるか。
そりゃあ、私だって生物だし、本能として三大欲求は感じる。
あれか、私自身にそういった経験がないからか。
自分が薄っぺらい人生を歩んでいるようでイライラしてきた。
これもノロケ勇者のせいだ。
勇者なら皇女と結婚したまえよ、バカ者め。
ダメだ、書くほど思考が巡ってしまう。
今日はこれくらいにしておこう。
なぜか疲れたな……。
一章をお読みいただきありがとうございます!
シリーズの中にクリスマス番外編があるのでお時間あればぜひ!
番外編の中にヒントがあるかもしれないし、ないかもしれない……




