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1-31 一刻を争う状態でした

 新は武器としてマチェット、何かに使えるかもと照明魔道具を買った。

 時間がなく、照明魔道具にしかマユの改造を受けられなかったが仕方がない。

 レイがどんな状態かわからないため、なるべく急いだほうがよいだろう。


 新は腰にはマチェット、首からはとある改造をされた照明魔道具、両腕にクレスの鎧と剣を抱きかかえた。

 マユも5冊ほどの魔法陣集を抱え、いかにも魔女が被りそうな大きい帽子を着用している。


「アラタ、忘れ物をするなよ。これから戦うのだから」

「お、俺さ、ビビって喧嘩もしたことないんだけど大丈夫かなぁ……」


 今まで余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)だった新も直前となると実感が湧いてきてしまう。

 特に自分が刃物をぶら下げているというプレッシャー。

 刃物が必要になるほど凶悪な相手と戦えるのだろうか。


「大丈夫だよ。君には傷ひとつとしてつけさせない。約束するから」

「おおぅ……。惚れそう……」

「なんだ、軽口をたたけるではないか。アラタ、心の余裕だけはなくさないでくれよ。大切だから」


 マユからのアドバイスを胸に、セーブポイントまで転移をした。


――――――――――――


 寒い、暗い、怖い。

 帰りたい。

 眠たい。

 もう楽になりたい。


 レイは怯えていた。

 このままだと本当に自分が奴隷として売られてしまう。


 奴隷の役目は労働をするだけじゃない。

 そこに人権などなく、道具のように『使われる』のが仕事だ。


 自分を購入した主人の言うことは絶対に聞かないといけない。

 否、言うことを聞かせるために調教をされているのだ。


「よし、床を舐めなさい」

「……はい」


 気持ち悪い。

 吐き気がする。


 しかし、そう思いながらも首輪のせいで従わなければならなかった。

 少しでも反抗すれば首を絞められ、失神する。

 その苦しさは慣れることがないし、体が本能的に受けつけなかった。

 だから、従うしかない。


「はぁ……。お嬢さん、床を舐める時はもっと尻を上げろ。無様に、屈辱的に舐めるんだ」

「もっと、もっと見てください……。ご主人様……」


 苦しさから涙が浮かんできた。

 だが、それがマルクは気に入らないようだ。


「なんだその涙声は。もっと嬉しそうに言えないのか!」

「うぁ!」


 マルクがレイの体を蹴った。

 四つん這いだった体が横に倒れる。


「不愉快だ、実に不愉快だ!」

「ごめんなさい、命だけは……。ごめんなさい、ごめんなさい……」


 もうどうにかなってしまう。

 誰か、誰か助けて……。

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